関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi
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Dance Cube16号はリニューアルして発信しましたが、いかがでしょうか。アプローズ欄も0号から15号まで書かせていただき、予想外の多くの方々に読んでいただいているのが分かりました。特に最近は、バレエダンサーの方や舞踊関係の方に、「読んでますよ」と声をかけていただくことがあり、ほんとうに喜んでおります。どうぞ、今後もよろしくお願いいたします。
楽しかったマシュー・ボーンの『くるみ割り人形』
ボーン版の『くるみ割り人形』は、公演前からさまざまの情報が入っていたし、DVDも事前に観ていたので、どうかな、と思っていたが、舞台はやっぱりおもしろくてたいへん楽しいものだった。孤児たちがつぎつぎと幕前にでてきて、思い思いの表情を客席に向かって作ってみせるプロローグも良かった。孤児たちの表情は、それぞれバラバラに異なっているのだが、胸の奥にしまっている想いは一緒、と観客は感じた。なかなか見事なつかみだったと思う。
それから忘れてはならないのは、キューピッドのカップル。このクララを導くフェザータッチの優しさが、クララの思い込みの強さやくるみ割り人形の男の子たくましさと微妙なコントラストを描いて、なんともいえない良いムードをこの作品に与えている。
DVDを観た時には気が付かなかったのだけど、雪のワルツのスケートのシーンでは、それぞれのダンサーが衣裳の裾をつまんで揺らせ、氷の上を進んでいるスピード感を表していた。こうしたディテールの表現のさまざまなアイディアが冴えていた。
さすがに、ボーンがずっとあたためていた作品だけあって、レベルの高い表現力でどのシーンも描かれていた。また、前号のメール・インタビューで友谷さんが書いている「カーテンコールは最高の笑顔で」、という考え方は素晴らしいと思う。こういう舞台への謙虚で深い愛を込めるスピリットを失わないかぎり、マシュー・ボーンの創る舞台は、いつもおもしろくて楽しいものになることは疑う余地がない。
(3月3日、東京国際フォーラムC)
シェイクスピアの世界を楽しく、東京シティ・バレエ『真夏の夜の夢』
シェイクスピアの恐るべき言葉の魔術が描く絶妙なファンタジィ、『真夏の夜の夢』。この作品は、アシュトンやバランシンを始め、名だたる振付家たちが言葉のないバレエにしているが、東京シティ・バレエ団の台本を中島伸欣、演出・振付は石井清子、中島伸欣が手掛けた舞台を観た。(3月5日、ゆうぽうと)
この作品は、オベロン、ティターニア、パックなどの森の妖精たち、2組の恋人たちやシーシアス、ヒポリタなどの貴族、ボトムらの職人たちの三つの世界をめぐる恋の大騒動とその収拾を描いている。秘薬の<惚れ薬>や妖精の悪戯心などの小道具も駆使されているが、結局、恋の他愛のない愚かしさ、その恋に翻弄される人間というも存在の性格を際立たせた作品であろう。東京シティ・バレエの『真夏の夜の夢』は、そのツボを手際良くまた嫌みなく舞台に見せてくれた。
振付はもちろん、演出や美術、照明も奇をてらわず、きちんとした効果を上げている。ダンサーもティターニアの安達悦子、オベロンの黄凱を始め、パックの穴吹淳、2組の恋人たちの若手ダンサーなどそれぞれが持ち味をだして、物語の世界に溶け込んでいた。2組の恋人たちのパ・ド・ドゥを同時進行させたり、複雑な人物関係も手堅い演出で分かりやすく踊られていて感心させられた。
ともあれ舞台では、もつれにもつれた恋の混迷が大団円に至って見事に収拾された。それなのにまた、恋をして妖精の森に迷い込みたい、そんな気がしてきのだが‥‥。
『真夏の夜の夢』
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