斎藤 珠里 text by Julie Saito
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THEATRE DE LA VILLE パリ市立劇場の公演から
EDOUARD LOCK  LA LA LA HUMAN STEPS

エドゥアール・ロック ラ・ラ・ラ・ヒューマン・ステップス
『白鳥の湖』と『眠れる森の美女』を合体させた新作『Amjad』


 カナダを代表する振付家ロックは1954年、モロッコのカサブランカに生まれ、モントリオールで育った。大学では中世英文学を専攻し、ダンスを始めたのは19歳と遅咲きだが、様々なダンス・カンパニーを経て80年、ラ・ラ・ラ・ヒューマン・ステップスの前進ロック・ダンサーを結成した。フランスへは10年前から進出し、パリ・オペラ座に振付けた『アンドレオーリア』などで知名度も高い。今回の市立劇場での公演も連日、満席の人気だった。11月28日の公演を観た。

 今回の作品では、振付家マリウス・プティパ(1818−1910)と作曲家チャイコフスキーの傑作である『白鳥の湖』と『眠れる森の美女』を結びつけることを試みた。
 王子ジーグフリードとオデットを取り巻く悪魔ロットバルトと娘オディールとの関係、オーロラ姫の運命を操る悪の妖精と良き妖精――運命、選択、悪と善など、人生を変える要素にスポットライトを当てて両作品のモチーフを切り取る。パ・ド・ドゥも、男と女、女と女、男と男など組み合わせを変えることで、空気が一変することを舞台で視覚化する。

『Amjad』
シュアン・チェン

 音楽は、チャイコフスキーのオリジナルからモチーフだけを抽出し、調性を変えたり、リズムにヴァリエーションをつけたりすることで、原型からまったく離れた自由な発想で編曲されている。ピアニスト、ヴィオラ奏者2人、チェリストが舞台上で、ダンサーの動きに呼応させながら演奏した。


『Amjad』
シュアン・チェン
 女性ダンサー5人は、黒いレオタードにトウシューズ。男性ダンサー4人は黒いスーツか上半身のみ裸というシンプルな衣装だ。動きも、基本的にはクラシックバレエそのもの。しかし、いわゆる古典バレエにつきものの優雅さや甘さは一切排除され、男性が女性をこまのように超スピードで回転させるピルエットが連続するパ・ド・ドゥには、男女の機微などのぞく余地もない。白鳥の飛翔を表す腕の動き(ポール・ド・ブラ)も目まぐるしい速さで見せられるとバタバタもがいているようで滑稽だ。
 白鳥を真似するマニュアル化された動作、人間の呼吸を無視したようなスピード、「均一化」された女性ダンサーの体型、男性の意のままに操られたような女性ダンサーによる一連の振りは、形骸化した古典バレエへのアンチテーゼとも受け取れた。
 それに対して、男性ダンサーはもっと自由に見える。背格好もばらばら、柔軟性に富むダンサーもいれば、筋骨隆々系もいる。だから一人ひとりの存在感が大きい。男同士のパ・ド・ドゥでは二人の間で両性具有的なエッセンスが飛び交い、理性 を超えた”遊び”の空間が生まれるのだ。
「白鳥」や「妖精」の世界に囚われた女性の不自由さを、むしろ誇張してみせるために男性たちの個性を際立たせた演出だったのかもしれない。
 動きのパターンにはそれほどヴァリエーションが認められなかったが、照明効果が手伝って、薄暗い光を浴びてピルエットやシェネターンをするダンサーたちのなまめかしい肌の質感、シルエットが浮かび上がった。
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