ALVIN AILEY AMERICAN DANCE THEATER
LES ETES DE LA DANSE
エイリー舞踊団による<パリ・ダンスの夏>
<< BEST OF >> 1 超人的な身体機能にパリ市民が熱狂
日中は猛暑に見舞われる今夏のパリも、夜になれば涼風が気持ちいい。夏場はヴァカンスでパリ市民はパリから姿を消すといわれるが、最近は5週間連続して休むサラリーマンが減っているとか。そんな居残り組に配慮してか、フランス各地で行われる夏のフェスティバルさながらに昨年、パリ3区の国立古文書館で<パリ・ダンスの夏>が開催された。第2回目の今年は7月3日〜23日、アルビン・エイリー・アメリカン・ダンスシアターを迎えて4つのプログラム、エイリーの代表作と気鋭振付家による新旧20数作品が連日上演された。
7月10日夜9時半すぎ。9時45分開演に合わせて、国立古文書館の正面玄関前には人だまりが出来ていた。新聞や雑誌でエイリー舞踊団がとりあげられ、一度観た人の口コミでまた反響の輪が広がったらしく、入り口を入ってもなお会場まで長蛇の列。連日、売り切れ公演が相次いだ。中庭に仮設会場が設置され、夜のにわか雨にそなえて天井は透明のビニールで覆われていた。観客は、日焼けした素肌に夏のオシャレを決めたカップルが多く、中心層が30〜50代といったところ。エイリー舞踊団といえば大半がアフリカ系黒人ダンサーだが、客席はほぼ白人で埋め尽くされた。この日のプログラムは新進気鋭の振付家たちの傑作5作品を集めた<ベスト・オブ> 1。
幕開けの1作品目は、昨年に発表されたばかりのロナルド・ブラウン振付の『IFE/MY HEART』だった。作品名は、アフリカ・ナイジェリア連邦共和国の三大民族の言語ヨルバ語で「神が愛してくださるような私の心」の意味だという。アフリカの民謡が歌われ、太鼓が打ち鳴らされる中、真っ白い伝統衣装をまとった男女9人が登場する。のどかな音楽にあわせ、動きもバレエ的な要素と民族舞踊を組み合わせたシンプルなものだが、次第に躍動感が舞台にみなぎってくる。中でもピルエットの使い分けが面白い。時には地に両足をつけたまま、またある時は空気をとらえるように回転をする。腰の位置が高いせいか、両足で地面を踏み固めるような振りであっても、動きが重くならない。女性たちの中に肌の色がかなり白いダンサーが2人混じっていたが、ほかのダンサーと比べて動きがもたつく。肌の色で差別するつもりは毛頭ないが、よりアフリカ系を強く踏襲するダンサーの方が、エイリー的な動きにぴったり、と感じてしまうのはなぜだろうか。
最初に度肝を抜かれたのは、3人の男性によって踊られる『SOLO』だった。バッハの無伴奏バイオリンソナタ第一組曲のストイックな響きをバックに、3人の男性ダンサーたちがダンスの競演を繰り広げる。一人ずつ自分の技を披露したり、互いに挑発しあったり、3人でユニゾンの動きをしたりしながら、バッハの音楽にのせて全編に見せ場をつくっていく。それぞれの個性が際立つが、重心の高いピルエット、アラベスク、ジャンプ・・・3人とも技術には非の打ち所がない。随所にバレエのテクニックが見て取れるが、身体はまるで体操選手。上半身も下半身も筋骨隆々なのだ。すらり、とは言い難い。当初、筋肉のついた太ももが強調されるような白タイツ姿に違和感を覚えたが、彼らの身体能力に圧倒されているうちに、バレエダンサーが命をかけて鍛える細長い脚のラインとはまた違う魅力を感じた。
さらに注目度が高かったのは、昨年の来日公演にも含まれていたデイヴィッド・パーソンズの代表作『CAUGHT』(1982年)だ。看板ダンサーのクリフトン・ブラウンの一人舞台だ。ロックグループ「キング・クリムゾン」のロバート・フリップによるアバンギャルドなロックギターが流れる中、ストロボを焚いたフラッシュライトの点滅による目の錯覚で、ブラウンが空中歩行したり宙に浮いたままスプリットしたりする視覚的映像を観客が楽しむというつくり。超人的な身体機能を最大限にみせる演出で、これひとつ見ても、ダンスはアフリカ系黒人のためにあるのではないか、と思わせるほどだった。
このほか、男女の刺激的でエロティックな世界を描いた『EPISODES』(1989年)、ヒップホップ音楽なども取り入れた実験的な『LOVE STORIES』(2004)が上演された。興奮冷め止まぬ観客たちは、帰りがけにオープンテラスのバーに立ち寄り、いつまでも明るい夏の夜を楽しんでいた。
来年の<パリ・ダンスの夏>は、キューバ国立バレエ団が公演する予定だ。 |