渡辺真弓 text by Mayumi Watanabe
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パリ・オペラ座<モーリス・ベジャールの夕べ>
パリ・オペラ座バレエ団は、シーズン最後に入り、バスティーユで<モーリス・ベジャールの夕べ>、ガルニエでジョン・ノイマイヤー振付『椿姫』と2演目の平行上演となり、真夏の暑さが続く中、連日両劇場で白熱した舞台を繰り広げた。
6月19日に初日の幕を明けた<ベジャールの夕べ>は、バルトーク曲『中国の不思議な役人』、ピエール・アンリ曲『扉とため息のためのヴァリアシオン』、ラヴェル曲『ボレロ』の3本立て。このうち、今回初めてオペラ座のレパートリーに入ったのは『扉とため息のためのヴァリアシオン』。扉の開閉の音や吐息の音などで合成されたピエール・アンリ(当日公演に臨席)の音響で、7人のダンサーが16のテーマをもとに即興で踊るもの。コンサート・ピースでは、26のヴァリアシオンで構成された50分の作品だったのが、ダンスでは35分に縮小されている。毎日、くじで順番が決まるので、当然ながらその都度作品が変わるのが見どころ。音楽も振付も初演当時(音楽は63年、振付は65年)はさぞかし実験的だっただろうと想像はできるものの、今ではそれほど目新しさは感じられない。最近、60年代の実験的ダンスが復活する傾向にあるが、概してレトロな印象を受ける。
カデール・ベラルビ、ウィルフリード・ロモリ、ステファニー・ロンベルグ、ジェレミー・ベランガール、アリス・ルナヴァン、ジル・イゾアール、ジャン=フィリップ・デュリーら出演者は、いずれも個性的で、デュオやトリオでは、即興とは思えないようなタイミングの一致を見せた。
<扉とため息のためのヴァリアシオン>
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本拠地で久々の上演となった名作『ボレロ』は、メロディーが、ニコラ・ル・リッシュ、マリ=アニエス・ジロー、ステファニー・ロンベルグの3交替という新しいキャスティングでお目見え。初日は、ル・リッシュが一つ一つのポーズや動きを端正に決め、『アポロ』を見るような風格を感じさせた。ジョルジュ・ドンのような野性味はあまり感じられないものの、洗練されたフランス的エスプリの濃い『ボレロ』であった。終演後は、客席総立ちとなり、ル・リッシュとロモリに脇を支えられたベジャールが舞台袖から姿を見せると、拍手はひときわ高まった。
しかし今回の発見は、2日目に登場したジローのメロディーの方であったかもしれない。ジローには、月の女神のような強烈な光彩を放ち、周りの男性のみならず観客をも魅惑してしまう魔力がある。
冒頭の『中国の不思議な役人』は、カデール・ベラルビの中国人、ウィルフリード・ロモリのボス、アレッシオ・カルボーネの情婦という顔ぶれで、3年ぶりの再演ということで余裕が見られ、群舞に至るまで、怪奇的な雰囲気をよく醸し出していた。
演奏はヴェロ・パーン指揮パリ・オペラ座管。公演は7月14日まで。
<ボレロ>ニコラ・ル・リッシュ(メロディー)
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パリ・オペラ座でノイマイヤー振付『椿姫』
ガルニエでは、6月20日からノイマイヤーのバレエ『椿姫』が始まった。初日は、当初アニエス・ルテステュとエルヴェ・モローの予定だったが、モローが負傷したため、オレリー・デュポンとマニュエル・ルグリのペアに交替。ルテステュは、終盤の7月13、15日の2日間、ハンブルグ・バレエのイリ・ブベニチェクをパートナーに、マルグリットを踊ることになった。
ノイマイヤー版『椿姫』は、今から28年も前の1978年の初演。日本では全幕版がすでにハンブルグ・バレエ団の来日公演で紹介されている。
音楽は、すべてショパンのピアノ曲でまとめられ、『ピアノ協奏曲第2番』をはじめ『ソナタ作品58』よりラルゴ、『バラード作品23』などを集めて構成されているが、ショパンの曲がこの作品のために書かれたかと思えるほど、音楽と主人公たちの心情とが見事に一致している。振付は、主役のマルグリットとアルマンの恋人たちのパ・ド・ドゥを各幕の芯とし、特にリフティングのテクニックなどで、ノイマイヤーは、師のクランコやマクミランの手法をさらに高度に昇華させ、きめ細かいドラマティック・バレエを創ることに成功している。
全3幕を通して、ユルゲン・ローゼの落ち着いた色彩の舞台美術が、品のよい効果を上げている。
デュポンのマルグリットは、華やかで、どこにいても目を引く。1幕はもう少し表情が和らげばと思ったところもあったが、2幕の田舎の場面では、白い衣裳と流し髪がよく似合い、妖精的な美しさ。これから舞台を重ねるうちに、役作りが一層深まっていくに違いない。
アルマンのルグリは、全身全霊をかけた体当たりの演技で感動を誘った。とりわけ、男性にとってはかなりハードなリフティングをよどみなくこなし、マルグリットとの愛のパ・ド・ドゥでは、随所で山場を築いた。
マルグリットが常にその運命の影に取り憑かれるマノン・レスコーを演じたイザベル・シャラヴォラ、デ・グリューのジョゼ・マルティネズが好演。ガストンのカール・パケット、プリュダンスのノルウェン・ダニエル、オランピアのミリアム・ウルド=ブラームらも要所要所で存在感を出し、アルマンの父親には、ミカエル・ドナールが客演し、舞台に厚みを加えていたのがうれしい。
指揮は、1998年から、ハンブルグでノイマイヤーのバレエを振っているミヒャエル・シュミンツドルフ、ピアノは、エマニュエル・ストロッセルとフレデリック・ヴァイセ=クニッテル。
続いて現在、新たにアルマン役として登場したマチュー・ガニオの名優ぶりに話題が集中しつつあるところである。
<椿姫>デュポン&ルグリ
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