渡辺真弓 text by Mayumi Watanabe
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パリ・オペラ座ヌレエフ版『ラ・バヤデール』が連日の盛況

 既報の通り、3月3日の初日の舞台終了後、エルヴェ・モローがエトワールに任命され、冒頭から活気づいた『ラ・バヤデール』。その後、7日と28日の2公演がストライキで中止になってしまったが、4月8日まで14公演が行われた。このヌレエフ版は、92年に初演されて以来、すでに上演160回を越えているが、相変わらず根強い人気で、連日満員の盛況だった。

 初日を飾ったオレリー・デュポンとエルヴェ・モローのペアは、絵から抜け出てきたような華やかさでまず目を奪う。『ラ・バヤデール』というと、今でも初演のイザベル・ゲランとローラン・イレールの名演が蘇ってくるので、第1幕は、まだ演技がおとなしいきらいがあるものの、デュポンは凛とした美しさで、数年前初めて踊った時に比べ格段の進歩を遂げている。第2幕の花かごの踊りや第3幕影の王国での踊りには、オペラ座を背負って立つような貫禄さえ感じられた。


デュポン&モロー

デュポン&モロー

デュポン

 モローは、昨年夏の『ロミオとジュリエット』や昨年末の『白鳥の湖』などですでに立派なノーブルぶりを印象づけていたので、いつエトワールに任命されても不思議ではなかった。ソロル役には、もう少し豪放さがほしい面もあったが、終幕まで勢いが衰えることなく次々と難度の高いテクニックをクリアしていく姿は本当にすがすがしい。エトワールお披露目となった11日の公演では、エトワールとしての自覚に目覚め、初日より一回りスケールの大きい演技で、喝采をさらった。

 ガムザッティはドロテ・ジルベール。初役にもかかわらず、ニキヤとの対決シーンも堂々としたもので、婚約式の踊りでは、バランスの絶対的強さを見せ、熱狂的な喝采を浴びた。ほとんど一人でこの場を盛り上げてしまったのは大したもの。近いうちにエトワールになることはまちがいないだろう。

 ソリスト陣のソロにも見応えがあった。金の像を踊ったエマニュエル・ティボーの磨き抜かれた技の素晴らしさ。彼こそ紛れもないエトワールだと思うのだが、今回彼にソロル役が回って来なかったのは全くのミステリー。マヌーのミリアム・ウルド=ブラームも可憐なキャラクターが適役。第3幕影のソリストは、イザベル・シアラヴォラ、メラニー・ユレル、エミリー・コゼットで、特にシアラヴォラの優雅なシルエットは精霊そのものだった。

 なおデュポンは、3月21、23日の2日間、客演のカルロス・アコスタと共演。このペアの共演に立ち会うのは、2年前の『ドン・キホーテ』以来になるが、前回にも増してエキサイティングな競演が繰り広げられ、満足この上なかった。


ティボー

ジルベール&モロー

ジルベール&モロー

パリ・オペラ座現代作品ミックス・プロ、世界初演アブー・ラグラ振付『時の風』ほか

 パリ・オペラ座バレエ団では、バスティーユでの『ラ・バヤデール』と平行して、3月6日から4月1日まで(3月28日はストのため中止)ガルニエで、勅使川原三郎振付『AIR』、アブー・ラグラー振付『時の風(Le Souffle du Temps )』世界初演、イリ・キリアン振付『ベラ・フィギュラ』の3作品によるミックス・プロが上演された。

 冒頭の勅使川原作品は、ジョン・ケージの音楽で、2003年にオペラ座バレエ団で世界初演されたもの。今回は、カデール・ベラルビが加わり、彼の存在だけで舞台が遥かに引き締まり、別の作品のように見えた。欲を言えばベラルビには、ラグラーの新作にも出てほしかった。実際、舞台構成にかなり手が加えられたようで、前回より動きの変化に富んだ改訂版がお目見えした。女性ソリストでは繊細なミテキ・クドー、透けるようなシャルロット・ランソン、男性ではジェレミー・ベランガールとジル・イゾアールのインパクトのある踊りが光った。


<時の風>

<時の風>

<時の風>
 世界初演の『時の風』は、エトワールのマリ=アニエス・ジロー、マニュエル・ルグリ、ウィルフリード・ロモリの3人をソリストに、コール・ド・バレエを交えた新作。これだけの顔ぶれを揃えたので、アルジェリア出身のラグラーには期待するものがあったが、意外に平板で肩すかしを食ってしまった。冒頭、黒の衣裳をまとったジローのソロは、迫力があったが、プレルジョカージュ振付『メディアの夢』を想起してしまったし、全体に流れるような動きを追求した振付や、音楽にピアノの響きが混じった点など、『AIR』に作風が似通っていて、発想の行き詰まりが感られてしまった。

 最後のキリアン作品は、何回か見ているにもかかわらず、初めて見るように新鮮で、各シーンに引きこまれた。デュポン、ベラルビ、ロモリ、シアラヴォラ、モローなどなど、贅沢な顔ぶれで、その集中度の高い踊りの一つ一つに目が離せず、時の立つのを忘れるほどだった。幕が降りた瞬間、もっと見ていたいと名残惜しい気持ちになったのは私だけではなかっただろう。



<AIR>

<AIR>

<ベラ・フィギュラ>
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