●バスティーユで、『眠れる森の美女』開幕
オペラ座バスティーユでは、オペラ座バレエ団によるチャイコフスキー曲『眠れる森の美女』が11月20日開幕した。古典バレエに飢えていたパリのバレエ・ファンにとって、待望の出し物だったせいか、連日満員の盛況。今シーズン、観客動員が伸び悩んでいたオペラ座に、ようやく本来の活況が戻ってきた印象である。
このヌレエフ版『眠れる森の美女』の上演は、1999ー2000年シーズンの年末年始以来4年ぶり。89年の初演時は、ニコラス・ジョージアディスの美術だったが、97年からエツィオ・フリジェリオの装置、フランカ・スクアルチャピ−ノの衣裳に一新され、その南欧風のまばゆい色彩に包まれた舞台は、絢爛豪華でため息を誘う。
キャストもほとんど一新され、主役のオーロラ姫は、 アニエス・ルテステュとオレリー・デュポンを除いて、レティシア・ピュジョル、マリ=アニエス・ジロー、メラニー・ユレル、ミリアム・ウルド=ブラームの4人が初登場。それにゲストのスヴェトラーナ・ザハーロワが花を添える。
一方、デジーレ王子には、 マニュエル・ルグリ、 ジョゼ・マルティネズ、ジャン=ギヨーム・バール、 バンジャマン・ペッシュに、 今回初めてのマチュー・ガニオ、クリストフ・デュケンヌ、そしてゲストのロベルト・ボッレが加わった7人が日替わりで登場する。どのカップルを見るか、迷ってしまう多彩さだ。(以上は、11月25日現在の予定です。)
私が見た二日目の25日は、初日と同じくピュジョルとバールの顔合わせ。オーロラ姫に初挑戦のピュジョルは、愛らしい容姿を生かして、はつらつとした役づくり。第1幕は、お姫様というより庶民的な雰囲気で、ローズ・アダージオでは、緊張したのか、最初にバランスを崩してから動揺が見られたのが惜しまれた。しかし、第2幕からは、確実なテクニックで、本来の調子を取り戻し、第3幕のグラン・パ・ド・ドゥでは、バールと絵になるカップルぶりで、喝采を浴びた。回を重ねていくうちに、役づくりにも余裕が出てくることだろう。
一方、バールは、前回2000年の上演の際、デジーレ王子を踊って、エトワールに任命されただけに、 超絶技巧もさらりとこなす余裕。王子の甘い雰囲気は十分あるので、踊りにもう少しめりはりが加われば、と思う。
『青い鳥』のパ・ド・ドゥには、ユレルと予定されたペッシュに替わって、人気者のエマニュエル・ティボーが登場。抜群の跳躍力で、舞台を縦横無尽に舞い、エトワールの貫禄さえ漂う至芸に、割れるような拍手が起こった。ユレルも要所を決める心地よい踊りを見せた。
コール・ド・バレエやソリストも大幅に若返ったが、目についたのが、20代の若手たちの間にあって、一回り世代が上のヌレエフ世代の踊り手たちの優雅な立ち居振る舞いである。初日の新聞批評でも、指摘されていたが、若手たちの動きが体操を見るように、メカニックになりがちなのに対して、概して89年の初演から舞台を踏んでいるソリストたちからは、古典バレエらしい香りが漂ってくるので、ほっとする。例えば、プロローグで、第6バリエーション(通常リラの精の踊り)を踊ったカリン・アヴェルティは、少々疲れを感じさせたところもあったが、終始ほほえみを絶やさず、古典の様式美あるソロを披露した。この人は、以前は、オーロラ姫を踊っており、世が世なら、エトワールになっていたかもしれない。そして、なんと言っても、リラの精を演じたナタリ−・リケの魅惑的な美しさは特筆に値する。
ヌレエフ版では、リラの精は、マイムの役だが、 優美な物腰が、見る者をお伽噺の世界へいざなってくれる。カラボスのステファニー・ロンベルグが、メークもきつく、演技も力んで、コンテンポラリー・ダンスを見るようであったから、その対比は歴然としていた。マイムの役では、公爵夫人のミュリエル・アレの貴族的な演技も印象に残る。
その他、3幕の長靴をはいた猫と白猫のパ・ド・ドゥを踊ったロール・ミュレ、ファビアン・ロク、プロローグの妖精たちの踊りの第5バリエーションで、久々に舞台復帰したファニー・フィアットなどの踊りが目を引いた。
最後に、このところ、オペラ座バレエ団に客演の多いポール・コネリーの指揮が、色彩感溢れ、格調高い演奏を引き出していたのを付け加えておきたい。公演は、大晦日まで全22回。 |