渡辺真弓 text by Mayumi Watanabe
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●マチュー・ガニオのエトワールお披露目となった『ラ・シルフィード』

 シーズンも終わりに近づいたパリのダンス界は、新エトワール、マチュー・ガニオの話題一色といった感がある。 6月28日からオペラ座バレエ団シーズン最後の『ラ・シルフィード』が始まったが、マチューが初日のジェームス役に登場し、初々しいエトワール・デビューを飾った。

 この公演は、当初、マニュエル・ルグリが初日をはじめ、ビデオ撮りの日も含めて4日間踊る予定だったが、初日の10日ほど前に怪我で降板、マチューに白羽の矢が立ったもの。 バレエ団は、同時期に、マドリッドとバルセロナへ公演旅行(演目は『ジュエルズ』)を行っており、両方をかけ持ちする予定だったジョゼ・マルティネズも、さすがに無理が出て、 『ラ・シルフィード』の方をキャンセルするという残念な事態となり、ファンをがっかりさせている。

 注目の初日は、このラコット版の初演者であるギレーヌ・テスマーとミカエル・ドナールをはじめ、ドミニク・カルフーニとノエラ・ポントワも並んで、客席に姿を見せていた。 特に新エトワールのママであるカルフーニは、大勢の人から祝福を受け、幸せ一杯の表情。

 夢見る青年ジェームスの役は、マチューにぴったりで、一ケ月ほど前に踊ったバジルとは異なるロマンティックなスタイルを見事にマスターしているのに驚かされた。 舞台での上品で優雅な物腰、軽やかなパ、縦横無尽に舞う高い飛翔…。どれをとっても輝きを放って、彼が舞台に入る時は、彼にしか目が行かないのが困りもの。

 シルフィードは、オレリ−・デュポン。 こちらも初役ながら、手先から足先まで神経の行き届いた演技で、しばしば拍手をさらった。 ところどころで、名花エリザベト・プラテルをほうふつとさせ、いずれプラテルを継承するシルフィード役者になることだろう。

 続いて、マチューは、イザベル・シアラヴォラと組んだが、演技の上でも、技術的にも、より一層完成度の高い舞台を見せ、日に日に成長しているのが素晴らしい。 新聞の予告記事に、”新エトワール、マチュー、最愛の人と踊る”と紹介され、二人を表紙にしたダンス雑誌は、あっという間にオペラ座のブティックから売り切れた。 カルラ・フラッチにちょっと似たシアラヴォラは、古風な感じがこの作品によく合い、はかなく繊細なシルエットは、妖精にうってつけ。 マチューとの呼吸もぴったりで、新しいペアの誕生を印象づけた。

 以下、次号で続報の予定。

デュポン&ガニオ

マチュー・ガニオ

デュポン&ガニオ

オレリー・デュポン

●ピナ・バウシュの『NEFES』がテアトル・ド・ラ・ヴィルで上演

 今年も、ピナ・バウシュがテアトル・ド・ラ・ヴィルに招かれ、6月4日から22日まで、2003年初演の『NEFES(風)』を上演した。

 この作品は、ローマ、パレルモ、サンフランシスコ、香港、ブダペスト…、そして日本と続いた世界都市シリーズの一環で、2002年の夏にトルコのイスタンブールに滞在した折に、創られたもの。 イスタンブールと言えば、古くは、大陸と文明の接点であり、現在では、ヨーロッパでも有数の観光地の一つとなっている。 テレビの旅行関係の番組でも、しばしばこの都市が紹介されており、ツーリストの食指を動かしているようだ。

 装置家のペーター・パプストの作り出した舞台は、木張りの床から水が湧き出て、以前『悲劇』で見られたように、天井から水が降り注ぐ効果と、 第2部でビデオの影像が投影されるだけのもので、かつてないほどシンプルで飾り気がないが、それが最大限の効果を挙げていた。

 踊り手は男女各10人。今回の作品には、作品柄か、東洋人のダンサーが増えたような印象で、個々のソロ・ダンスの場面も多い。 第1部は、トルコ式の入浴(ハマン)シーンに始まり、後半、天井から滝のように雨が降り注いで、クライマックスを迎える。 第2部は、恐らくボスポラス海峡と思われる大河の映像や、その雄大な自然を破壊しつつある都市開発を象徴するトラックや車の波の映像を映し出す。 壮大な大河の映像の前に、ダンサーたちが集って、お茶をするひとときが気持ちをなごませる。最後に、ダンサーたちが、男女別に別れて、 鎖のように手をつないで、列をなし、舞台を横切っていくシーンが、かつて海峡に渡された鎖をイメージさせ、ひときわ印象に残る。

 

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