渡辺真弓 text by Mayumi Watanabe
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マリ =アニエス・ジローがエトワールに昇格
〜オペラ座バスティーユでカロリン・カールソンの『サイン』が再演

 1997年にオペラ座で初演された、カールソン振付の『サイン』が3月16日から4月3日までオペラ・バスティーユで再演された。 今回は、4年ぶり3回目の上演。この作品は、仏美術界の大御所オリヴィエ・ドゥブレ(1920ー99)の美術に触発され振付けられたもので、 文字どおり現代美術と舞踊のコラボレーションが結実したもの。ルネ・オブリのオリジナル音楽により、 マり=クロード・ピエトラガラとカデール・ベラルビのペアのために創られ、1998年にはブノワ・ダンス賞も受賞している。

 今回は、マリ=アニエス・ジローとベラルビのペアが8公演のうち7公演を踊り(1回だけステファニ−・ロンベルグが踊る)、 2回目の公演にあたった3月18日の公演終了後、ジローがエトワールに任命されるといううれしい発表があった。 コンテンポラリーでエトワールが誕生したのは初めて。ジローは現在28歳。4年前にもピエトラガラと交替でこの作品を踊っているが、 その時から、スケール大きい踊りは、未来のエトワールを予感させるに十分だった。これまでグランド・バレエの主役をさまざま踊り、 いずれも成功を収めてきたので、人気と実力からいって、もっと早く任命されてもよいくらいであった。 今回の任命は、多くのオペラ座ファンたちからずっと待ち望まれていたもので、3月30日に行われたクロード・ベッシーをたたえるガラ公演のデフィレでは、 ジローに最も熱狂的な喝采が送られていた。

 来年、愛知万博での上演が予定されているこの作品は、90分通しで、 1、ほほえみのサイン、2、朝のロワ−ル、3、桂林の山々、4、バルト海の僧侶たち、5、青のエスプリ、6、マドゥライの色、7、サインの勝利の7場から構成される。 バスティーユの大舞台を生かしたダイナミックで鮮やかな色彩の美術に溶け込むようにダンスが展開されるのが特徴だ。主役の二人を中心に創られているので、 精鋭ぞろいのコール・ド・バレエのメンバーに、ソリストとしての見せ場があまり設けられなかったのは残念だが、再々演ながら、 ソリストはじめ群舞の熱演のおかげで、舞台の印象を新たにさせられた。ジローは、ピエトラガラとは異なる個性の、フェミニンな魅力で舞台に堂々と君臨し、 ベラルビの繊細かつ粋なステージ姿には他を寄せつけないものがある。主役を踊ることも期待されたヤン・サイズは、ちょっとしたソロを見せただけだったが、 冴えたセンスを見せた。

 エトワール任命から二日後、テレビのインタビューに応えて、ジローは、コンテンポラリーの舞台で任命されたうれしさを率直に語った。 なお、カールソンの振付には、踊り手の自由に任せてくれる部分があるそうで、毎晩、その日のフィーリングによって即興で踊っているという。 来年の日本公演は、ジローのエトワール任命のお披露目も兼ねて、楽しみな舞台となりそうだ。

<サイン>よりジロー

<サイン>よりジロー

<サイン>よりジローとベラルビ

パリ・オペラ座2004-2005年シーズン・プログラム発表

 来季より、ジェラール・モルティエを総監督に迎えるパリ・オペラ座の新シーズンのプログラムが3月9日発表になった。舞踊監督は、ブリジット・ルフェーヴルが継続するため、従来と大きな変化はないが、コンテンポラリー路線がさらに強まった印象。

 まず、配布されたカランドリエに驚く。かつてないほど大版で、演目の内容とは関係なく、前衛ビデオ・ア−ティストによる写真を並べた装丁とデザインは、まるでヌ−ヴェル・ダンスのメッカ、テアトル・ド・ラ・ヴィルか郊外のボビニー劇場のそれのよう。これは、大きすぎて整理に困るとか、見にくい、説明が分かりにくい、演目が日付け順に並んでいないので不便等々、常連ファンの間では評判は芳しくない。今の総監督のユーグ・ガルが大衆路線を目指し、オペラ座を身近なものとするのに成功したのに対し、新体制は、特にオペラの演目や演出家の選定に、どちらかというと万人向けというよりスノッブな傾向が感じられる。モルティエ新監督は、従来25,000人の定期会員を40,000人に増やそうと意気込んでいるが、どうだろうか。事実、定期会員は指定のセット券の場合、10%割引になっているものの、単発売りのチケットは10%も値上がり。定期会員を対象とした説明会では、ファンから値上げや配役変更などに対する不満の声が挙がっていたという。ファンの関心事は、世界中共通といえるようだ。

 さて、バレエだけに目を向ければ、ヌレエフのグランド・バレエが復活し、ローラン・プティ特集があるのがファンを喜ばせている。反面、バランシンやロビンス、リファールなどのネオ・クラシックが少なくなったのがさびしい。コンテンポラリーの話題は、まずピナ・バウシュの『オルフェオとエウリディーチェ』が初めてオペラ座のレパートリーに入ること。『公園』『カサノヴァ』に次ぐプレルジョカージュの3作目の委嘱新作もある。このところ斜陽気味のフランス・ヌ−ヴェル・ダンスに代わって、年々勢いを増しているベルギー勢の登場も注目される。これは、モルティエ監督がベルギー出身であることとも関係しているだろう。女流のミシェル・ノワレと客演のアラン・プラテルのカンパニーである。後者は、オペラ座を飛び出し、ピナ・バウシュやキリアンの元で踊っていたラファエル・ドゥロネが出演することから、今から話題になっている。
 いずれにしても、バレエ公演は配役次第のところがあるので、キャスティングの発表が待たれる。

 

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