皆様、お元気ですか?今年のニューヨークは異常気象で、10月下旬でも昼間はまだ暖かい、おかしな気候です。普通ならニューヨークでは、この時期はもう寒くなっているはずですので、ちょっと心配です。日本はいかがですか?秋も深まってきたでしょうか。
ア・カンボジアン・マジック・フルートの公演
10月9日から14日まで、ジョイスシアターにて、Pamina Devi(パミナ・デヴィ)の、ア・カンボジアン・マジック・フルートの公演がありました。手の甲と指を全部反らせて踊る、カンボジア独特のダンスです。ダンサーは全員女性たちばかりで、女性役、男性役をしていました。宝塚みたいですね。物語がずっと続いて、ダンスで表現した演劇のような感じで面白かったです。
物語は「私の運命的なツインソウルの結婚相手はどこにいるの?」と探していくと、結局は自分が飼っていた小鳥が人間の女性に姿を変えて、ツインソウルだったと分かるお話でした。「運命的な結婚相手は、あなたの身近にいるものですよ。遠くまで探しに行くのではなく、身近な周りをよく見回してごらんなさい」というメッセージなのだと思います。
衣装はすべてシルクの布で作られた、とても豪華な伝統的な衣装でした。鮮やかな色とゴールドで、すごくきれいでした。頭の上には、ゴールドの塔のような、細長く高い被り物をしていました。独特な濃い目のメイクも美しかったです。
後ろに一列に座った、10人のミュージシャンが生演奏していました。舞台上でお香が焚かれ、客席にまで香りが充満していました。
カンボジアの伝統的なダンスで、全体的に上半身は反らせて、お尻をうんと後ろに突き出して、ヒザを曲げたまま踊っていました。バレエでいうルルベやアティチュードのようなこともしていました。
私は初めてカンボジアの伝統的なダンスを鑑賞しましたが、衣装もメイクも豪華絢爛、キンキラキンで、全員が手や指を外に反らせたまましずしずと踊るので、その独特な、不思議な世界に引き込まれていくようでした。スピリチュアルな要素がとても強いと思います。観ていると、霊的な要素があまりにも強いせいか、両肩がものすごく重くなってきて、息をしにくくなり、息苦しくてたまりませんでした。きっと、意味の深い、スピリチュアルな踊りなのでしょうね。
ナチョ・ドゥアトのスペイン国立ダンスカンパニーの3作品
10月16日から20日まで、BAMで、スペインのコンパニーア・ナシオナル・デ・ダンサの公演がありました。3つの作品の、小品集でした。芸術監督と振付は、すべてナチョ・ドゥアトです。
この振付家の作品は以前からぜひ観てみたいと思っていたので、今回の公演を楽しみにしていました。ヨーロッパでは評価が高いですが、アメリカには滅多にやってこないダンスカンパニーです。BAMはとても良いダンスカンパニーをたくさん招聘しているので、ブルックリンは遠いのですができるだけ観劇しています。
ナチョの振付はあまりにも素晴らしくて感動しました。鳥肌ものです。今までに観たコンテンポラリー・ダンスの振付の中でも特に素晴らしいと思います。天才的です。こんな振付家がスペインにいたなんて、と、とても驚きました。
この日は感動と興奮でいっぱいで、夜もなかなか眠れませんでした。
彼の振付は、驚くほど音楽にピッタリ合っていて、音の一音一音を細かく拾って、振りを入れていました。繰り返しの振付はほとんど皆無で、次から次へと流れるように違う振りが続いて、難しいテクニックを要するものが多いので、踊るダンサーは大変だと思いました。なめらかに、流れるように振付が変化し続け、リフトも多用されていました。
「プレイビル」誌の経歴によると、ヴァレンシア生まれ、18歳でロンドンに渡りダンスを学び始め、その後ブリュッセル、ニューヨークでも学んでいます。イリ・キリアンに抜擢されてそこで踊っていたそうです。リフトなどは特に、キリアンの影響を受けているのでしょうか。それでも、彼の振付には独特の個性がでていて、他の振付家にはないものがあると思います。
ダンサーのレベルもすごく高くて、いつも見ているコンテンポラリー・ダンスのプロのダンサーが及びもつかないくらい、ハイレベルでした。クラシック・バレエのトレーニングをすさまじく積んできているダンサーたちなのだと思います。プリンシパルには、日本人女性ダンサーの、秋山珠子さんもいました。彼女もすばらしいダンサーでした。
上演した3つの作品は、『ポル・ボス・ムエロ』、『カストラティ』、『ホワイト・ダークネス』です。『ポル・ボス・ムエロ』は、15世紀と16世紀の古い音楽にのって、古い詩がナレーションのように朗読されていました。手の平、手先の使い方が面白い振付でした。セットデザインと衣装も、ナチョによるもので、美術的にも美しい作品でした。
『カストラティ』もナチョによるセットデザインでした。自由で、伸び伸びした振付でした。途中、速い曲の時は、すごくスピード感があって迫力があり、めまぐるしく振付が変わっていき、楽しめました。1シーンも見逃せなくて、観ているこちらも真剣に注意して見つめていました。明暗のとてもはっきりした照明も美しかったです。
『ホワイト・ダークネス』は、天井から時々、砂のようなものが降ってきていました。ダンサーたちは、そこにできた砂の小山をすくって、手で握りこぶしからサーッと下に落としたりもしていました。メリハリのある振付で、リフトが多用されており、キリアンの振付を思い起こさせます。最後は、一人の女性ダンサーの上に、大量に砂が落ち続けて、そのまま幕が降りました。印象に残るシーンで、とても美しかったです。
|