●『ドン・キホーテ』を中心に、大阪バレエカンパニー安積由高追悼公演
安積氏追悼公演によせて、許されるならひと言。私が初めてバレエ教室というものに足を踏み入れたのは、この安積先生率いる当時安積バレエ研究所(現大阪バレエカンパニー)だった。小学校高学年で、あまりにも運動神経が鈍い私を心配した母が、身体を動かすものの中でバレエだけには憧れているようなので、習わせてくれることになったのだ。そんな事情を聞いた故安積由高先生は、初めて来た私を抱きしめて歓迎してくださった。田舎の子で、親からも抱きしめられた経験がなかったので、子供心に「西洋の踊りをやっている人は、普段から西洋的なんだ」と、とても驚いたのを覚えている。そうして、この教室の多くの先生によって、私はバレエを少しづつ知るようになっていったのだった。
さて、今回の追悼公演、第1部では安積由高氏が1960年代に創作・振付した作品が2つ上演された。最初の『抜け穴』は、苦悩する男とタイプの違う2人の女による踊りで、青木崇、堀端三由季、山下摩耶が踊った。3人共、安定して良く踊っていた。次の『カラー・ラプソディ』は、8人のダンサーが、それぞれの色のタイツ姿で、踊りそのものを観せるという感じの作品。2つ共、60年代という時代の雰囲気を感じさせるものだった。
第2部は『ドン・キホーテ』全幕。キトリは山下摩耶、明るくチャーミングなキトリが彼女にはよくあっており、高いテクニックも生かされていてよかった。ただ、夢の場でドルシネアを踊る場面では、もう少し押さえたしっとりとした雰囲気が出せるともっとよかったように思う。バジルは青木崇、品もあって、すごく高いテクニックもあるスケールの大きなダンサー、全体にとても良かった。3幕のバジルのヴァリエーションは、ダイナミックでシャープで美しく、魅力を堪能させてくれた。
他に特に印象に残ったのは、町の踊り子を踊った安積瑠璃子、スタイルも美しく、まだ若いのに色っぽい睨みも堂々と表情の変化もなかなか良い。色々なタイプの踊りがこなせるダンサーのようで、将来が楽しみ。また、キューピッドを踊った藤田美和子もチャーミングで技術も安定していて、目を引いた。良いダンサーたちが踊る中、若干気になったのは衣裳。原色のものが多く、可能ならもう少し押さえた色調を入れた方が舞台全体のグレード感が増すのではないかと思えた。
幕が下りて、再びカーテンコールの幕が上がると、そこには大きなスクリーンに映し出された、カーテンコールに手を叩きながら舞台に現れる安積由高氏。生前の舞台ではいつもそうだった・・・と、その演出にしみじみと感慨深かった。
(10月16日、八尾プリズムホール)
●足の甲の美しさに魅了された『ラ・シルフィード』と『グランドホテル』、法村友井バレエ団公演
| ブルノンヴィル版で上演された『ラ・シルフィード』、シルフィードは高田万里、ジェームズを法村圭緒。もっとも印象に残ったのは高田の足の甲の美しさ。シルフィードのロマンティック・チュチュからのぞく足首の美しさ、ブルノンヴィル特有の複雑な足裁きの美しさ、彼女の美点がとても生かされていたと感じる。1幕、暖炉が燃える部屋の、空と緑の木々が見える窓枠にたたずむシルフィードの姿は一枚の絵のようだった。法村のジェームズも、細かいリアルな演技がよく組み立てられてスムーズにこなされていてよかった。それにさわやかな青年の雰囲気、ブルノンヴィルのパの鮮やかさ、軽さはさすが。マジェは法村牧緒。元来、端正な顔立ちなので正統な怖さがある。ホラー映画でもそうだが、男性でも女性でも整った顔で凄みが出ると本当に怖い。 |
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2幕、シルフィード達のコルフェ、1番初めに出てソロで踊る堤本麻起子は、長身で顔が小さく美しい。その後登場する3人のコルフェ山森トヨミ、奥田展子、杉岡麻魅の踊りのレベルも高かった。
ラスト、シルフィードが死んでしまってから、ジェームズとマジェの口論シーン(といっても声を出すわけではないが)は迫力があり、その末に絶望に倒れてしまうジェームズ、舞台中央で高笑いするマジェ・・・そして幕、というのはインパクトがあった。 |
続いて上演された『グランドホテル』は気軽に楽しめるショーダンスという感じ。チャーリー・チャップリンの曲に合わせた1920年代のレトロな雰囲気がおしゃれで素敵。ホテルを通してさまざまな人間模様が描かれており、登場人物がそれぞれに魅力的だ。そんな中で特に印象に残ったのはジャッキー・クーガン役の東文昭。コメディを担う役柄、動きにキレがあって、観客の注目を集めていた。
(10月22日、フェスティバルホール)
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