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From Osaka -大阪-
桜井 多佳子 text by Takako Sakurai
●大阪バレエカンパニー公演『パキータ』『アルレキナーダ』
今年6月に逝去した、同カンパニー代表者、安積由高のプロデュース。特に『アルレキナーダ』は、故人が日本初演を切望していたという。
パ・ド・ドゥ部分は知られているが、その全幕は、現在、世界でもあまり上演されていない『アルレキナーダ』は、プティパの台本・演出・振付作品。1900年2月10日にペテルブルグのエルミタージュ劇場で初演され、その3日後の13日にはマリインスキー劇場で上演されている。金持ちのカサンドル役はエンリコ・チェケッティ(バレエ教師としても著名なイタリア人)、コロンビーナ役はクシェンスカヤ、ピオレッタ役はプレオブラジェンスカヤら、バレエ史上に残る舞踊家たちが初演した。
イタリアのコメディア・デラルテ(16-18世紀にイタリアで流行した仮面の即興喜劇)風の楽しい作品。主要人物はみな人形のようでもあるし、アルレキンやピエロは道化役者。ストーリーはシンプルだ。〜カサンドルの娘コロンビーナとアルレキンは恋人同士だが、カサンドルは娘を金持ちのレアンドルに嫁がそうとしている。だがコロンビーナの友人ピエレッタの助けも借り、妖精の祝福も受け、最後に恋人同士は結ばれる〜。
今回はサンクトペテルブルグからデスニツキーら指導者を招き、ロシア版を直伝。コロンビーナ役の堀端三由季は、華やかさもあり表情も豊かでこの役にぴったり。ただ、身体のラインに以前のシャープさがあれば、さらにファンタジックな魅力が加わったのではないか。ピエレッタ役の山下摩耶は、正確なポジションやステップで人形のようにも見せる。ピエロ役の青山崇は高いジャンプで、役柄にも作品全体にもアクセントをつけた。カサンドル役のアンドレイ・クードリャは独特の存在感を見せた。なるほどと思わせるキャスティングだ。アルレキンは新国立劇場バレエの奥田慎也が演じた。
音楽はリッカルド・ドリゴ。有名な「ドリゴのセレナード」(劇中、アルレキンが歌うという設定)も、この作品から生まれ、前述したようにパ・ド・ドゥ部分は、コンサートやコンクールでもよく踊られている。その原典の全幕は、カラフルな衣裳も鮮やかな、陽気で洒落た作品だった。大変意義深い日本初演だといえるだろう。またひとつ、同カンパニーは貴重な財産を増やした。
第1部に上演した『パキータ』は、子供たちのポロネーズとマズルカで幕を開けた。続く、安積瑠璃子、ユリア・レペット、アンドレイ・クードリャのパ・ド・トロワも見ごたえがあった。安積はスタイルが美しく、清潔感がある。今後が楽しみな舞踊手だ。
ソリストはもちろん、コール・ドに至るまでもワガノワ・スタイルが徹底しているので、統一性がとれている。全体的に水準の高い『パキータ』に仕上がっていた。
特記しておきたいのは、リシュアン役、青木崇の(おそらく)主役デビュー。青木はワガノワ・バレエ学校留学を経て、リトワニア国立バレエ団でソリストとして活躍、今年5月に帰国した。彼は2000年に行われた第一回大阪Prixのジュニア一部で第一位に輝いている。そのときのゲスト審査員、ファルフ・ルジマートフが、特に印象に残ったダンサーとして青木の名を真っ先に挙げていた記憶がある。ちょうど、ワガノワ留学の直前で、「留学すれば、もっとよくなるんじゃないかな」とも語っていた。それから4年を経て青木は、一回りも二回りも大きくなった。身体全体に筋肉がつき、堂々とした演技が舞台で映えた。ジャンプは高く、回転力もある。[白いタイツ]が似合うノーブルな雰囲気も持つ。関西のバレエ、いや日本のバレエ界待望の大型新人男性ダンサーといえるだろう。これからの活躍に注目したい。
河崎聡指揮、エウフォニカ管弦楽団演奏。(10月2日、八尾市文化会館)
●ふれあいの祭典 洋舞フェスティバル『ドン・キホーテ』
兵庫県洋舞家協会ほかの主催。いくつかの団体の合同公演で、振付も分担(第1幕は貞松正一郎、第2幕第2場は太田由利、第2幕第1場と第3幕は田中俊行)。出演者も多く、なんと主役も2人ずつ。もちろん舞台に統一性は求められないし、ドラマ展開に少々強引なところも見えたが、そんなことが気にならないほどの楽しさがあった。まさしく「祭典」のような公演だった。
一度の公演で、2組の主役を見ることができるというのは、考えてみれば贅沢な話だ。バジル役は、恵谷彰と張縁睿。赤松優に師事する恵谷は、基礎に忠実な動きと清潔感あふれる身のこなしでジュニア時代から高く評価されており、それらに加え最近は表情がとても豊かになった。中国出身の張は、現在、田中俊行バレエアートに所属。今年の、こうべコンクールで優勝し、またシアター・ドラマシティ制作の『草原の風』『盤上の敵』などでファンの層を広げている。いま、さまざまな舞台で熱い注目を浴びている関西期待の2人がバジル役を分けたというわけだ。
第1幕のバジル=恵谷は、登場シーンからさわやか。動きがきびきびしていて気持ちがいい。小柄だがリフトには全く不安がなく、サポートもていねいだった。バジル役の有名ヴァリエーションがこの幕にはないが、パキータの男性ヴァリエーションが挿入されていたのは、観客にとっても嬉しい配慮。胸のすくような高いジャンプが堪能できた。
第2幕、3幕のバジル=張は、若さがそのまま出た演技。芝居は、こなれきってなかったが、堂々として、挑戦的ともいえる踊りは、この人の個性であり魅力だ。キトリ役、岡田明子、廣岡奈美は、まだ経験が浅いのか緊張した様子。夢の場のドルシネア=竹中優花、森の女王=宮澤由紀子が、しっとりした雰囲気を漂わせていた。町の踊り子=平野亜美の美しさも印象深い。バジルの友人=秋定信哉が舞台全体を引き締めていた。(10月3日、神戸国際会館)
●日韓合同バレエ公演『眠れる森の美女』
日本・韓国のバレエ協会の合同公演で、韓国から12人のダンサーが来日した。主役は初日(10月14日)を韓国ペア、2日目(15日)を日本人ペアが演じた。韓流ブームを反映して企画されたわけではないが、時機を得た公演といえるだろう。主催は文化庁舞台芸術国際フェスティバル実行委員会。
所見した初日は、プロローグの妖精や第3幕の宝石の精(ここではパ・ド・カトル)を関西のダンサーが演じていた。リラの精は両日とも田中ルリ。柔らかな上半身が優しさを、ステップの正確さが正義感を伝えるよう。適役だった。
第1幕で登場したオーロラ姫=ファン・へミンは、清楚で愛らしい。ヘルシンキのコンクールなどでこの人の踊りは何度か見ているが、そのころより、かなり痩せたのが気になった。第2幕で、いよいよ王子の登場。王子役オム・チェヨンは長身で甘いマスク、客席からは「バレエ界のヨン様」という声がささやかれるほどだった。動きが少々不安定だったのが残念。
第3幕の、フロリナ王女&青い鳥は、イ・ミンジョン&チョー・ミンヨン。女性(ミンジョン)はスタイルがよく、華やかさももつ。男性(ミンヨン)は技術力のあるダンサーだが緊張のためか実力を発揮できなかった様子。白い猫の内藤夕紀は愛らしく、長靴を履いた猫の脇塚力もチャーミング。楠本理江香らパ・ド・カトルの伸びやかな動きが心地よかった。
リラの精 田中ルリ
韓国ペア主演10月14日公演より
韓国のバレエはあまり日本では知られていないが、韓国国立バレエ団の初代芸術監督の故・林聖男は服部・島田バレエ団の出身だったし、前芸術監督チェ・テイジは在日韓国人で貝谷バレエ団出身。日本とは密接な関係をもつ。変わらない外見の日本人と韓国人なので、合同公演でも違和感はなく、表現力の違いなどで刺激を受けあうことはできる。日韓バレエの交流はさまざまな形で可能性を秘めているのではないだろうか。
なお2日目は、主役ペア=岩田唯起子&法村圭緒、白い猫&長靴を履いた猫=キム・ナウン&ハン・ピルソン、フロリナ王女と青い鳥=江川由華&恵谷彰らのキャストで上演された。
日本人ペア主演10月15日公演より
両日とも堤俊作指揮、ロイヤル・メトロポリタン管弦楽団演奏。(神戸国際会館)
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