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森 瑠依子 
[2017.05.23]

ボリショイ・バレエの来日公演に際して、公開講座が朝日新聞読者ホールで開催された

4月15日に朝日新聞東京本社の読者ホールで、朝日新聞社とジャパン・アーツの主催によるボリショイ・バレエの来日公開講座が開催された。
全体は2部構成で、第1部が早稲田大学講師の川島京子による講義「ボリショイ・バレエの初来日が日本に与えた衝撃」で、第2部が劇場コーディネーターの山本萌生によるボリショイ劇場のバーチャル・バックステージツアー。およそ180名の出席者は60年前のボリショイ・バレエ初来日時の新聞記事やニュース映像、ボリショイ劇場内部の画像など、大型スクリーンに映し出される貴重な資料を見ながら、興味深いエピソードの数々に聞き入った。

第1部では、G.V.ローシー、エレーナ・スミルノワ、エリアナ・パヴロバといった戦前に来日して、日本にバレエを伝えた人々の紹介から、戦後の東京バレエ團の結成と解散、社会的な大イベントとなったボリショイ・バレエの初来日、その結果、日本バレエ協会が結成された流れなどが解説された。
第二次世界大戦後の1950年代には、セルジュ・リファールとパリ・オペラ座のエトワールたちのグループ公演を筆頭に、海外から様々な一流ダンサーが来日していた。ただし、コール・ド・バレエを伴った大人数の公演は1957年のボリショイ・バレエが初めてで、約1か月の滞在で披露された『白鳥の湖』『コッペリア』などの完成された古典バレエ、『春の水』『ワルプルギスの夜』などのエネルギッシュでアクロバティックな超絶技巧、「ポロネーズとクラコヴィアク」のような華麗な民族舞踊に、初めてバレエを見る一般の観客だけでなく、日本のバレエ関係者も大きな衝撃を受けた。そして、それまで複数の団体に分裂して競合していた日本バレエの中枢の人々は、力を合わせて日本のバレエをもり立てていくことの必要性を強く感じ、日本バレエ協会を結成するに至った。日本が現在のような、毎年世界の有名バレエ・コンクールで上位入賞者を出すほどのバレエ大国になる出発点のひとつがボリショイ・バレエの来日公演だったという事実は興味深い。

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第2部では、山本萌生が2011年のボリショイ劇場改修後、日本人観光客にボリショイ劇場の内部を紹介するためにガイドを務めているバックステージツアーの内容が紹介された。
2012年以来、オペラやバレエのファンに限らない様々な層の1500人ものツーリストが参加しているそうだ。見学できるのは、幕間に歓談する場所でもある「白のホワイエ」、舞台衣装やデザイン画などが見られる特別展示室、帝政時代の謁見の間と帝室専用スペースからなる「皇帝の間」、天井に高さ8m、幅6mで2万4000のクリスタルでできた大シャンデリアが吊り下がっている観客席、シャンデリアの真上にあり、舞台と同じ21m×21mの大リハーサル室、そして劇場の改修に伴って新設された300人収容のベートーヴェン・ホール。講演会ではヴァーチャル・ツアーとして、たくさんの画像を使ってボリショイ劇場の巨大さ、豪華さ、音響へのこだわりなどが詳しく説明され、ツアーの雰囲気を味わうことができた。モスクワを訪れる方にはぜひお勧めしたいツアーだ。

今年、ロシア政府は毎年ひとつの国を選んでロシアの文化を紹介する「ロシアの季節 Russian Seasons」というフェスティバルを開催する。その最初の開催国は日本で、ボリショイ・バレエの公演がオープニングを飾る。日本で最初に大掛かりな引っ越し公演を行ったバレエ団にふさわしい役割と言えるだろう。この先も長くボリショイ・バレエの来日公演が続くことを願う。