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関口 紘一 
[2015.02.19]

東京バレエ団芸術監督に斎藤友佳理が今年8月より就任する

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東京バレエ団はプリンシパルダンサーの斎藤友佳理が、2015年8月から新しい芸術監督に就任する、と発表。高輪のザ・プリンス さくらタワー東京で、斎藤友佳理次期芸術監督、飯田宗孝芸術監督、高橋典夫事務局長が出席して記者会見を開いた。
この日に記者会見を開いたのは、マラーホフ振付の『眠れる森の美女』公演も終わり創立50周年記念公演が最終章を迎えたこと、そして2月13日が創立者の佐々木忠次総監督の誕生日に当たるからだという。2004年の創立40周年から10年間にわたって芸術監督の任にあった飯田宗孝は東京バレエ団団長となり、佐々木忠次総監督を補佐することになる。
斎藤友佳理次期芸術監督は、東京バレエ団のプリマバレリーナとして、モーリス・ベジャールの『ザ・カブキ』の顔世御前に抜擢されたのを始め、ジョン・クランコ振付の『オネーギン』に至るまで多くの作品に主演した。そればかりでなく、佐々木総監督から「ロシアでしっかりバレエの勉強をしてきなさい」と言う言葉にも励まされ、モスクワ舞踊大学院でバレエマスターと教師科を首席で卒業。ロシア・バレエの舞台はもちろん、その伝統と文化に深い絆を築いた。そしてボリショイ・バレエ団の20世紀を代表するダンサー、指導者であるウラジーミル・ワシーリエフ、故人となってしまったがワシーリエフと一世を風靡するパートナーシップを築いたエカテリーナ・マクシーモアなどから特に篤く信頼を得た。また、パリ・オペラ座などへロマンティック・バレエの名作を復元したことで知られるピエール・ラコットともしばしばともに仕事をしている。それらの経験に基づいて、ボリショイ・バレエ団やモスクワ音楽劇場バレエ団に指導者として迎え入れられた。

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斎藤が芸術監督として目指すものはいろいろあるがレパートリーで言えば、2016年2月にはブルメイスティル版の『白鳥の湖』を上演することが決まったという。ウラジーミル・ブルメイスティルがチャイコフスキーのオリジナル・スコアの還ってカットされていた曲も復元して『白鳥の湖』の改訂を行ったことは、よく知られている(1953年ミネロヴィッチ=ダンチェンコ記念モスクワ音楽劇場)。これはまた「ダンサーはただ踊るだけではなく、登場人物の人生を演じなければならない」と言うブルメイスティルの主張にも共感して、ダンサーの演劇的面を確立しようという意欲の現れでもある。この作品は東京バレエ団のレパートリーになるだろうから、日本のバレエにとっても有意義なことだ。かつてはパリ・オペラ座はブルメイスティル版をレパートリーにしていたが、近年はヌレエフ版となっており、上演機会の少ない貴重なヴァージョンが日本でも観られることになる。
そのほかにも、11月にはシルヴィ・ギエムのファイナル・ツアーとしてフォーサイスの『イン・ザ・ミドル・サムワット・エレヴェイテッド』が上演される。この上演は「東京バレエ団はフォーサイスを踊るべきだ」と言うギエムのアドヴァイスもその契機となっているそうだ。さらにこのツアーではキリアンの『ドリームタイム』(音楽/武満徹)も上演が予定されている。
8月には好評の子どものためのバレエ『ねむれる森の美女』に続いて『ドン・キホーテ』を制作する。これは東京バレエ団のレパートリーになっているワシーリエフ版に基づいて上演する。その『ドン・キホーテ』は10月に斎藤次期芸術監督の地元でもある神奈川県民ホールで上演される。・・・・と就任決定早々から意欲的に組まれたプログラムが発表された。

また斎藤次期芸術監督は監督の仕事として重視していることとして、指導体制の確立を挙げた。
東京バレエ団は名作クラシック・バレエの全幕から、ベジャール、キリアン、ノイマイヤーに加えフォーサイス作品も予定されるなど、多様なスタイルで踊られる幅広いレパートリーを持っている。公演にあたっては必要に応じて指導者を招きリハーサルを行って仕上げることになるが、公演が終わるとダンサーたちは、日々のクラスレッスンを中心とした日常に戻る。その時にはカンパニーとして基本となるメソッドに戻り、また次の公演のためにベジャール作品かキリアンの作品かそれぞれの指導者の指示の下にリハーサルに励むことになる。斎藤次期芸術監督は、その戻った時のカンパニーとして基本となるメソッドを強化したい、という。その基本となるメソッドは、斎藤が知り抜いているロシアのメソッドとなる。そしておそらくメソッドに限らず、ロシアのバレエを支えているもののすべてを日本の文化と融合させ、カンパニーの母体を強固なものとし、新しい発展へと導びいていくということだろう。
斎藤は現在は、モスクワを起点として生活しているが、芸術監督としてはおそらく、3カ月東京で仕事をして2週間モスクワに戻るといったサイクルで仕事をすることになる、という。「あれこれ同時にできるほうではないので」他の職務は出来るだけ身を引いて芸術監督の仕事に集中したい、そうだ。
佐々木忠次総監督が設立し築き上げてきた東京バレエ団に、しっかりとロシア・バレエに根を下ろし、日本のバレエの将来を見据えた新しい芸術監督が誕生することになった。大いに期待したい。