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三光 洋 
[2012.11.15]

速報!パリ・オペラ座バレエ団昇級試験2012 詳細

Concours annuel du Corps de Ballet de l'Opéra
パリ・オペラ座バレエ団 年次昇級試験


1860年4月13日に始めて実施された年次昇級試験は、マリー・タリオーニ(パリ・オペラ座バレエ学校上級クラス教授)とベルナール・シオット(同バレエ学校教授)の助言によって起草された「オペラ座のコール・ド・バレエとバレエ学校の任務規定」に従って実施されてきた。エトワールの除くすべての階級はこの試験によって決定される。
過去一年間の職業意識と精勤さを10点満点、試験当日の結果により1位が20点、2位18点、3位16点、4位14点、5位12点、6位は10点を与えられ、両者の加算した30点満点で、最上位から空席ポストへの昇進が行われる。

2012年の年次昇級試験の審査員は以下のメンバーだった。
審査員委員長 ブリジット・ルフェーブル(パリ・オペラ座バレエ監督)
ローラン・イレール(メートル・ド・バレエ)
クロチルド・ヴァイエ(メートル・ド・バレエ)
カレン・ケイン(カナダ国立バレエ団芸術監督)
クリスチャン・スパック(チューリッヒ・バレエ監督)
ファブリス・ブルジョワ(アシスタン・メートル・ド・バレエ、補欠審査員)
バレエ団員選出の審査員
ドロテ・ジルベール、リュドミラ・パリエロ、ノルウェン・ダニエル、セリーヌ・パラシオ、ジスレーヌ・レシェール、カール・パケット(補欠審査員)
代理の票は正規審査員が棄権した場合だけ考慮される。

今回の空席ポストは
女性 コリフェ3席 スジェ3席 プルミエール・ダンスーズ1席
男性 コリフェ2席 スジェ2席 プルミエール・ダンスール1席

試験の準備は以下のダンサーによって行われた。
女性カドリーユ・クラス デルフィーヌ・ムッサン
女性コリフェ・クラス  ジャン=ギョーム・バール
女性スジェ・クラス   エリザベット・モーラン
男性カドリーユ・クラス ジル・イゾアール
男性コリフェ・クラス  アンドレー・クレム
男性スジェ・クラス   ローラン・ノヴィス
ピアノ伴奏はヴェッセラ・ケロヴスカ、カロリーヌ・ボーグラン、久山亮子、エレナ・ボネ、アンドレア・トゥレ、ミシェル・ディートリン、カティ・エルヌールド
が担当した。

11月8日の午前9時30分過ぎから、女性のカドリーユで始まった。
規定課題は「ラ・バヤデール」第3幕の第1の影のヴァリエーションを16人の候補者が踊り、それが終わってから同じ順番で自由ヴァリエーションの演技が行われた。
(出場者と自由ヴァリエーションの作品は以下の通り、出場順)

  • グヴェナエル・ヴォーチエ 5位 『海賊』ヴァリエーション マリウス・プティパ振付 
  • ジェニファー・ヴィゾッキ 6位 『ロメオとジュリエット』第1幕舞踏会のヴァリエーション ルドルフ・ヌレエフ振付
  • マリオン・バルボー 3位(昇進)『スイット・アン・ブラン』フルートのヴァリエーション セルジュ・リファール振付
  • レオノール・ボーラック 4位 『白鳥の湖』第3幕 黒鳥のヴァリエーション マリウス・プティパ原振付、ルドルフ・ヌレエフ改訂振付
  • ジュリア・コガン 『くるみ割り人形』第2幕マリーのヴァリエーション ジョン・ノイマイヤー振付
  • エマ・デュミエール『四季』秋のヴァリエーション ジェローム・ロビンズ振付
  • リュシー・フェンヴィック 『バクティ III』 モーリス・ベジャール振付
  • 藤井美穂   『ジゼル』第1幕ジゼルのヴァリエーション マリウス・プティパ原振付
  • クレール・ガンドルフィ  『イン・ザ・ミドル・サムワット・エレヴェイテッド』ウイリアム・フォーサイス振付
  • エミリー・アズブーン 2位(昇進)『アレポ』モーリス・ベジャール振付
  • アメリ・ジョアニデス 『シルヴィア』パ・ド・ドゥ ジョージ・バランシン振付
  • リュシー・マテッキ 『スイット・アン・ブラン』煙草のヴァリエーション セルジュ・リファール振付
  • ソフィー・マイユー 『四季』春のヴァリエーション ジェローム・ロビンズ振付
  • カロリーヌ・オスモン 『パキータ』パキータのヴァリエーション マリウス・プティパ原振付
  • セ・ウン・パク 1位(昇進)『パキータ』第2幕グラン・パのヴァリエーション マリウス・プティパ原振付 ピエール・ラコット改訂振付
  • ニノン・ロー  『マノン』第1幕レスコーの愛人のヴァリエーション ケネス・マクミラン振付
1211paris_04.jpg Sae Eun Park
(C)Sébastien Mathé /
Opéra national de Paris
1211paris_05.jpg Sae Eun Park
(C)Sébastien Mathé /
Opéra national de Paris
1211paris_06.jpg Emilie Hasboun
(C)Sébastien Mathé /
Opéra national de Paris
1211paris_07.jpg Marion Barbeau
(C)Sébastien Mathé /
Opéra national de Paris

女性カドリーユでは規定、自由のいずれもセ・ウン・パクが他を圧倒した。のびやかな肢体は高い跳躍でも優雅さを失わない。今すぐソリストとして活躍できる逸材だろう。ほとばしるエネルギーに観客の間から賞賛のささやきが広がった。
休憩を挟んで、11時40分から女性コリフェが登場した。
規定課題は『ドン・キホーテ』第2幕幻影の場面のドルシネ/キトリのヴァリエーションを9人の候補者が踊り、それが終わってから同じ順番で自由ヴァリエーションの演技が行われた。
(出場者と自由ヴァリエーションの作品は以下の通り、出場順)

  • リディー・ヴァレー  『時の過ぎゆくままに』トワイラ・サープ振付
  • ポーリーヌ・ヴェルドゥーゼン 3位(昇進)『ダンシズ・アット・ア・ギャザリング』緑のダンサーのヴァリエーション
  • ロール・アデライド・ブーコー 『ノートル・ダム・ド・パリ』第1幕エスメラルダのヴァリエーション ローラン・プティ振付
  • レティツィア・ガローニ 6位 『ラ・バヤデール』第2幕ガムザッティのヴァリエーション マリウス・プティパ原振付、ルドルフ・ヌレエフ振付
  • マリーヌ・ガニオ 1位(昇進) 『ミラージュ』影のヴァリエーション セルジュ・リファール振付
  • エレオノール・ゲリノー 2位(昇進)『カルメン』居酒屋のヴァリエーション ローラン・プティ振付
  • ロレーヌ・レヴィ 4位  『カルメン』寝室のヴァリエーション ローラン・プティ振付
  • オーバーヌ・フィリベール 『白鳥の湖』第2幕白鳥のヴァリエーション ルドルフ・ヌレエフ改訂振付 マリウス・プティパ原振付
  • シャルロット・ランソン 5位 『四季』秋のヴァリエーション ジェローム・ロビンズ振付
1211paris_01.jpg Marine Ganio
(C)Sébastien Mathé /
Opéra national de Paris
1211paris_02.jpg Eléonore Guerineau
(C)Sébastien Mathé /
Opéra national de Paris
1211paris_03.jpg Pauline Verdusen
(C)Sébastien Mathé /
Opéra national de Paris

コリフェのクラスとは違って、候補者の水準に大きな差はなかった。1位に選ばれたマリーヌ・ガニオは自由のリファール作『ミラージュ』の影のヴァリエーションが高く評価されたようだ。表情の豊かさとテクニックの確かなエレオノール・ゲリノーも2位でスジェの地位を獲得した。 

ここで昼食休憩となり、午後2時から女性スジェが空席がただ一席のプルミエール・ダンスーズを目指した。
規定課題は『白鳥の湖』第2幕の白鳥のヴァリエーションを14人の候補者が踊り、それが終わってから同じ順番で自由ヴァリエーションの演技が行われた。
(出場者と自由ヴァリエーションの作品は以下の通り、出場順)

  • セヴリーヌ・ヴェステルマン 『檻』新米のヴァリエーション ジェローム・ロビンズ振付
  • アマンディーヌ・アルビソン 2位『ミラージュ』影のヴァリエーション セルジュ・リファール振付 
  • カロリーヌ・バンス  『クラヴィーゴ』異邦女のヴァリエーション ローラン・プティ振付
  • オーレリー・ベレ 3位  『バクティIII』 モーリス・ベジャール振付
  • エロイーズ・ブルドン 4位 『エチュード』星のヴァリエーション ハロルド・ランダー振付
  • ヴァランティーヌ・コラサント 1位(昇進)『カルメン』居酒屋のヴァリエーション ローラン・プティ振付
  • サラ・コラ・ダヤノヴァ 6位 『アザー・ダンシズ』第1ヴァリエーション ジェローム・ロビンズ振付
  • マチルド・フルステ  『カルメン』寝室のヴァリエーション ローラン・プティ振付
  • シャルリーヌ・ジザンダネ『バクティIII』 モーリス・ベジャール振付
  • クリステル・グラニエ  『ダンシーズ・アット・ア・ギャザリング』緑のダンサーのヴァリエーション ジェローム・ロビンズ振付
  • ローラ・エケ 5位   『ノートル・ダム・ド・パリ』第1幕エスメラルダのヴァリエーション ローラン・プティ振付
  • サブリナ・マレム 『シルヴィア』パ・ド・ドゥ ジョージ・バランシン振付
  • カロリーヌ・ロベールアザー・ダンシズ』」第1ヴァリエーション ジェローム・ロビンズ振付

13人が目指したプルミエール・ダンスーズはヴァランティーヌ・コラサントが射止めた。今まで実際の公演では目立たなかったダンサーだが、これから重責を負うことになった。舞台でソリストをすでに何度も務めているマチルド・フルステは選外だったが、コンクールで実力が発揮できないタイプのダンサーなのかもしれない。この階級になると、すでに舞台でよく見る顔ぶれが多いだけに、終了後には見学者たちが廊下で熱の入った議論を続けていた。別の見方をするならば、突出したダンサーがいなかったということになるのだろう。

二日目の11月9日は9時30分に男性のカドリーユで始まった。
規定課題は『ラ・シルフィード』第2幕のジェームスの第1ヴァリエーション(フィリップ・タリオーニ原振付、ピエール・ラコット改訂振付)を12人の候補者が踊り、それが終わってから同じ順番で自由ヴァリエーションの演技が行われた。
(出場者と自由ヴァリエーションの作品は以下の通り、出場順)

  • アレクサンドル・カルニアト『ジェニュス』ウエイン・マクレガー振付
  • ジャン・バチスト・シャヴィニエ『ライモンダ』第2幕アブデラフマンのヴァリエーション ルドルフ・ヌレエフ振付
  • シリル・ショクルン  『マルコ・スパダ』第1幕、第1ヴァリエーション ピエール・ラコット振付
  • マチュー・コンタ 2位(昇進)『白鳥の湖』第3幕ジークフリート王子のヴァリエーション ルドルフ・ヌレエフ振付
  • タケル・コスト   『アプロクシメート・ソナタ』 ウイリアム・フォーサイス振付
  • アレクサンドル・ラブロ 5位 『ジゼル』第1幕ペザントのパ・ド・ドゥのヴァリエーション ジョン・コラリ原振付
  • ジェルマン・ルーヴェ 3位 『ラ・フィーユ・マル・ガルデ』(リーズの結婚)第1幕 コラのヴァリエーション ハインツ・スポエルリ振付
  • ユゴー・マルシャン 4位  『スイット・アン・ブラン』マズルカ セルジュ・リファール振付
  • フローラン・メラック 6位  『ノートル・ダム・ド・パリ』第1幕フロロのヴァリエーション ローラン・プティ振付
  • アントナン・モニー 『白鳥の湖』第3幕ロットバルトのヴァリエーション
  • ジェレミー・ルー・ケール 1位(昇進)『マルコ・スパダ』第1幕第1ヴァリエーション ピエール・ラコット振付
  • アレクシー・サラミット 『ライモンダ』第2幕アブデラフマンのヴァリエーション ルドルフ・ヌレエフ振付
1211paris_11.jpg Jérémy-Loup Quer
(C)Sébastien Mathé / Opéra national de Paris
1211paris_12.jpg Mathieu Contat
(C)Sébastien Mathé / Opéra national de Paris

12人の候補者にこれといって突出したダンサーがいなかった中で、誰の目にも付いたのはフローラン・メラックだろう。規定で不幸にも転倒したため、『ノートル・ダム・ド・パリ』のフロロのヴァリエーションでの健闘も及ばず、6位に終わった。一回勝負のコンクールではこうした目立つミスはどうしても致命傷になるのだろう。

休憩後、11時15分から男性コリフェの試験となった。
規定課題のハロルド・ランダー振付『エチュード』のマズルカを13人の候補者が踊り、それが終わってから同じ順番で自由ヴァリエーションの演技が行われた。
(出場者と自由ヴァリエーションの作品は以下の通り、出場順)

  • ユゴー・ヴィオレッティ 『プッシュ・カムズ・トゥ・ショブ』トワイラ・サープ振付
  • フランソワ・アリュ 1位(昇進) 『ラ・バヤデール』第3幕ソロルのヴァリエーション ルドルフ・ヌレエフ振付
  • セバスチャン・ベルトー 『カルメン』ドン・ホセのヴァリエーション ローラン・プティ振付
  • マチュー・ボット 6位『アルルの女』フレデリの最後のヴァリエーション ローラン・プティ振付
  • ヤン・シャイユ 2位(昇進)『白鳥の湖』第1幕ジークフリート王子のヴァリエーション ルドルフ・ヌレエフ振付
  • アドリアン・クーヴェーズ『アパルトマン』台所のパ・ド・ドゥのヴァリエーション マッツ・エク振付
  • ジュリアン・コゼット 『アルルの女』フレデリの第1バリエーション ローラン・プティ振付
  • イヴォン・ドゥモル  『シルヴィア』第2幕オリオンのヴァリエーション ジョン・ノイマイヤー振付
  • グレゴリー・ドミニアック 『7つのギリシャの踊り』モーリス・ベジャール振付
  • アレクサンドル・ガス 5位 『ノートル・ダム・ド・パリ』第1幕フロロのヴァリエーション ローラン・プティ振付
  • アクセル・イヴォット 4位  『アレポ』モーリス・ベジャール振付
  • ミカエル・ラフォン 『アレポ』モーリス・ベジャール振付
  • マクシム・トマ 3位『新月』アンディ・デグロート振付
1211paris_09.jpg François Alu
(C)Sébastien Mathé / Opéra national de Paris
1211paris_10.jpg Yann Chailloux
(C)Sébastien Mathé / Opéra national de Paris

規定のランダー振付『エチュード』からのマズルカがみな甲乙つけがたい上出来とあって、順位は自由ヴァリエーションで差がついた。
フランソワ・アリュはソロルの第3幕のヴァリエーションで見事な跳躍、ピルエット、ドゥーブル・アサンブレを見せ、堂々たる1位で昇進を勝ち取った。一方、『白鳥の湖』第1幕のジークフリート王子のヴァリエーションで優美さを発揮したヤン・シャイユーが2位で昇進した。
ユゴー・ヴィオレッティは『マノン』の物乞いの頭で見せたような独自の個性をトワイラ・サープ作品で発揮したものの、選外となった。

昼食休憩後の13時50分からは男性スジェが登場した。
規定課題のルドルフ・ヌレエフ振付『眠れる森の美女』第2幕のデジレ王子のヴァリエーションを10人の候補者が踊り、それが終わってから同じ順番で自由ヴァリエーションの演技が行われた。
(出場者と自由ヴァリエーションの作品は以下の通り、出場順)

  • シモン・ヴァラストロ 『ラプソディー』フレデリック・アシュトン振付
  • オードリック・ブザール 1位(昇進)『カルメン』ドン・ホセのヴァリエーション ローラン・プティ振付
  • ヤニック・ビトンクール 5位 『アザー・ダンシズ』ジェローム・ロビンズ振付
  • フロリモン・ロリユー 『白鳥の湖』第3幕ロットバルトのヴァリエーション ルドルフ・ヌレエフ振付
  • アリステール・マダン 4位『アレポ』モーリス・ベジャール振付
  • ジュリアン・メザンディ 『白鳥の湖』第1幕ジークフリート王子のヴァリエーション ルドルフ・ヌレエフ振付
  • マルク・モロー 6位  『四季』春のヴァリエーション ジェローム・ロビンズ振付
  • ピエール=アルチュール・ラヴォー 2位 『火の鳥』火の鳥のヴァリエーション モーリス・ベジャール振付
  • ファビアン・レヴィヨン 3位 『眠れる森の美女』第2幕デジレ王子のヴァリエーション ロゼラ・ハイタワー振付
  • ダニエル・ストークスアザー・ダンシズ』第2バリエーション ジェローム・ロビンズ振付
1211paris_08.jpg Audric Bezard
(C)Sébastien Mathé /
Opéra national de Paris

14時50分に全日程を終了した。
プルミエール・ダンスールには最近ソリストとして継続して抜擢されてきたピエール=アルチュール・ラヴォーではなく、オードリック・ブザールが選ばれた。ブザールの『カルメン』ドン・ホセのヴァリエーションはミスはないものの、これという強い印象を残さなかったのに対し、ラヴォーは『火の鳥』でストラヴィンスキーの音楽が持つ独自のエネルギーにぴったりのはつらつとした踊りを見せた。ブザールに軍配が上がったのは規定の『眠れる森の美女』で、隙のない技術と気品ある舞台姿でデジレ王子を体現したからなのだろう。ファビアン・レヴィヨンはヌレエフとロゼラ・ハイタワーという二つの異なる振付でデジレ王子を二回踊り、表現者としてのダンサーに欠かせない役つくりへの好奇心を感じさせた。
フロリモン・ロリユーは『白鳥の湖』第3幕ロットバルトのヴァリエーションで転倒し、周囲をはらはらさせたが、気を取り直して最後まで踊りきった。

初めて昇級試験を見る機会を与えられたが、どのクラスも規定はクラシック作品なのに対し、候補者が自分で選択したヴァリエーションではコンテンポラリー・ダンスが圧倒的に多い。年間の公演でもクラシックの比重が少なくなってきているのは、多くのダンサーたちがより現在に近い作品にダンサーとしての自己表現の可能性を感じているのを反映しているのかもしれない。