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関口 紘一 
[2013.02. 6]

ビントレー、新国立劇場バレエ監督として最後のシーズンのプログラムを発表

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デヴィッド・ビントレーは新国立劇場バレエ団の芸術監督として最後の4年目を迎え、新シーズンのプログラムを発表した。
英国バーミンガムと東京のビッグ・カンパニーの芸術監督を兼任して、地球の表とその裏を頻繁に行き来するのもこれが最後シーズンとなる、と記者発表ではいささかセンチメンタルな感情を込めた第一声だった。
英国にはロイヤル・バレエ団があるとはいえ、ふたつの国を代表するカンパニーの芸術面の全責任を一人で担う、ということはどれほどのプレッシャーか、われわれには簡単には理解できないだろう。
しかもビントレーが監督に就任してからは、世界経済がリーマン・ショックから立直れないうちに、東日本大震災が大津波と原発事故をもたらし、ヨーロッパにも信用不安が広がり一時はユーロ危機にまで至ったし、米国では「財政の崖」問題に揺れた。彼は超多忙であるにもかかわらず、そうした経済、政治不安の中で、グランド・バレエの新作を2作も世界初演したことは、特筆に値する。

プログラムとして全幕バレエは、牧阿佐美演出・改訂振付の『くるみ割り人形』と『白鳥の湖』、ビントレーの2011年新国立劇場バレエ団初演の『パゴダの王子』、小品集は「バレエ・リュス ストラヴィンスキー・イブニング」として『火の鳥』(フォーキン)『アポロ』(バランシン)『結婚』(ニジンスカ)、そして『シンフォニー・イン・3ムーヴメンツ』(バランシン)『大フーガ』(ハンス・ファン・マーネン)ジェシカ・ラングの新作のトリプルビル、さらにビントレーの日本初演『ファスター』と『カルミナ・ブラーナ』。
ダンスのプログラムは、中村恩恵×首藤康之の新作と『Shakespeare THE SONNETS(再演)』。DANCE to the Future〜Second Steps〜は新国立劇場バレエ団の中から選ばれたダンサーの振付作品が上演される予定。小野寺修二率いるカンパニーデラシネラの『ある女の家』(2008年)。また「ダンス・アーカイヴ in Japan」として、江口隆哉、伊藤道郎、石井漠、高田せい子、檜健次、小森敏、宮操子などの作品の復元と平山素子振付『春の祭典』が上演される。
ビントレーは20世紀バレエの核となるバレエ・リュス作品をとりあげること、チャイコフスキーが戻ってくること、などをこのプログラムの特徴としてあげていた。

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そしてビントレー監督は記者発表後に行れたバレエのジャーナリストたちとの懇談会で、新国立劇場バレエ団の芸術監督として「やるべきことをやり尽くしたかというと、そうは言えない」と語る。また「残念ながら、世界中が経済的に恵まれなかったし震災もあった」といってから、「それにしてはお金を使いすぎたかもしれません」と配慮する姿勢も見せた。
しかし、トリプルビルを上演できたこと、ダンサーに振付を試みさせることができたこと、音楽にもっと日を当てることができたこと、少しだけ19世紀的作品を減らせたこと、などを実績として自身で評価していた。
さらにダンサーについては、ここ40年、50年くらいの間に、世界中のダンサーが大きく変わった。物として扱われ、ただ振付家の指示を待っているだけのダンサーから、人間として頭脳を使い、音楽も良く聴き、心を込めて踊る、アーティストとしてのダンサー。心と芸術を自分たちのものとして考えていくダンサーへと変わっていかなければならない。
「私がダンサーに振付をすることを求めたのは、振付家になるかどうかではなく、本来、バレエの仕組みはどうなっているのか、を振付けることによって学ぶことでもあるから。どうしたら上手くいくかを考え、音楽とダンスとの関係、そうしたことを学ぶことによってダンサーは大きく成長していく」とも語った。また「日本のバレエ団は公演回数が少ない。たとえば、まもなく小野絢子と福岡雄大がバーミンガム・ロイヤル・バレエ団の『アラジン』にゲスト出演するが、この公演は7組のキャストを組んで全部で38公演行われる。これだけとってみても日本の約6倍の公演数があることになる。ダンサーは公演回数を重ねることによって成長していくものだから日本の現実は厳しい。しかし、AYAKO(小野)やYUI(米沢)のように、少ない公演でもすぐに成長するダンサーがいることは素晴らしい」と称えた。
日本人のダンサーの特徴については、多くのバレエ教室で教えられてきた、それらしいバレエ・アクティングが身に付いている。バレエと演劇についてもっと深く考えて、バレエのだけの観客ばかりでなくひろく舞台芸術の表現として理解されるように向上しなければならないだろう、という意見も述べられていた。
「次期芸術監督に決まっている大原永子は海外キャリアも豊富だし、新国立劇場バレエ団の進むべき方向を正しく導いてくれるに違いない」と結んだ。