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[2008.09.10]

本島美和、小野絢子のサイン会&トークショー

本島美和、小野絢子のサイン会&トークショーが開催された

チャコット渋谷本店で、8月8日と9日の両日、新国立劇場バレエ団のダンサー、本島美和と小野絢子をそれぞれ迎えて、サイン会とトークショーが行わ れた。二人とも、11月に同劇場で世界初演されるデヴィッド・ビントレー振付けによる『アラジン』でプリンセス役を踊るので、トークの話題はこれが中心。 最初に『アラジン』の物語についてお話しいただいたが、『アラビアン・ナイト』の中の『アラジンと魔法のランプ』に基づいているということで、ここでは割 愛しました。

■本島 美和(新国立劇場バレエ団シーズン契約ソリスト)の会(8日)

本島美和さん――ビントレーさんの新作バレエとしての『アラジン』の魅力や見どころは?
マジックやトリックがたくさん詰まったファンタジーです。踊りでは、アラジンが洞窟で見る宝石たちの踊りが見どころの一つです。金、銀、サファイア、ル ビー、エメラルド、オニキス、パールといった宝石の踊りがたくさん含まれています。ビントレーのイメージで、サファイアは海のイメージだったり、金と銀は 王室のようなというか、とても貴族的な踊りだったり、エメラルドは挑発的なヘビのようなイメージだったり。音楽もそういう曲なので、それに合わせて振付け られています。そういう面でも面白いと思います。

――本島さんが演じられるプリンセスの踊りは、いかがですか。
最初に登場するのは、アラジンが見る幻影としてなんです。プリンセスの名前は、バドル・アルブダル姫。あんまり可愛らしくないけれど、〈満月の中の満月〉 という意味だそうです。それで、ポーズも月をイメージしたような振りが多く、また東洋のお話なので、二人でお祈りをするようなポーズもあって、ちょっとし たキャラクターも含まれています。

――もちろん、アラジンとのパ・ド・ドゥもありますよね。
いくつかありますが、出会うのは湯浴みのシーン。プリンセスなので、豪華な雰囲気で、色々な香料をかけてもらったりして、お風呂でおめかしをしているとこ ろです。結婚する前のパ・ド・ドゥでは、アジアの宗教的なところを採っているのか、まだキスをしてはいけないというような振りがあったりして、面白い。こ れが一番盛り上がって、きれいなパ・ド・ドゥになると思います。結婚した後で、ふたりがチェスをするシーンもあります。私が勝つんですが、それでアラジン がぐれてしまったりする(笑)。

――プリンセスやアラジンの役の解釈については、どのようにお考えですか。
本島美和さん普 通、プリンセスと聞くと、従順で美しいというイメージですが、このプリンセスは、何にでも興味を持つような、普通の女の子の一面もあると思います。どこの ものとも知れないアラジンと恋に落ちてしまうわけですから、彼の心を感じ、心を見て判断できる、そういう女性だと思います。ただきれいなだけではなく、冒 険心も普通にあるような女の子ではないでしょうか。アラジンは……この物語自体がアラジンの成長過程のようにも思えます。最初は本当に遊んでばかり。冒険 心や勇気はもとから持っていますが、恋をして、責任感であるとか、だんだん大人の感情も持っていくようになります。

――プリンセスに影響されて変わっていくという部分もあるわけですね。
はい、もちろん。

――ビントレーさんは、どのように振付けをなさるのですか。
ある程度イメージをお持ちで、音楽も覚えていて、リハーサルに来られる。私たちに指示なさるが、あまり多くを語らない。私たちから何かが出てくるのを待っ ているような感じです。穏やかにニコニコなさるけれど、あまり〈イエス〉とは言わないので、私たちが、ああかな、こうかなとやっていると、やっと〈うん〉 と言ってくれるような方です。

――ということは、ダンサー自身も、自分の中に何か持っていないとできないわけですね。
はい。だから、自分の中になるべく多くの引き出しを持つようにしています。今回は、夏休み中に『アラジン』の本を読んでみたり、ディズニーの映画を見たり しました。遊びのようですが、実際に映画を見てみると再発見することもあるし、何かしら得るものがあります。自分の中のイメージも膨らんでいきます。もし かしたら、そのイメージはビントレーさんと合わないかもしれないので、なるたけ自分の中の引き出しを多くして、柔軟にして、ビントレーさんのイメージに対 応できるようにしたいなと思っています。

――カール・デイヴィスの音楽は、どのような感じですか。
とてもわかりやすいですね。ミュージカルのようで、聞きやすいし、音も取りやすいです。だから私たちも、とても楽しくお稽古しています。ビントレーさんも、この音楽を聴いてバレエを創りたいと思われたそうなので、音楽も楽しんでいただけると思います。

――ビントレーさんのほかの作品については、どのような印象をお持ちですか。  
本島美和さん3 年前に新国立劇場の『カルミナ・ブラーナ』に出演させていただきましたし、この間、英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団が来日した時に『美女と野獣』を 観ました。ビントレーさんの作品には独特の世界観がありますね。作品の中に、小宇宙というか、ある完結した世界があるように感じます。そして、その中に、 いつも何かメッセージが込められている。それも、決して押しつけがましくなく、私たちがすんなり受け入れられるような形で込められていると思います。

――ビントレーさんは気むずかしい方ですか。どんな感じの方ですか。
ちょっと面白い話があります。廊下でイスに座って休憩していたら、ビントレーさんが笑いながら近づいてくるので、何かなあと思っていました。いつも使う楽 屋の鍵を持っていましたが、鍵ってたいていMIWAの印があるではないですか。鍵を見せながら嬉しそうに私に近づいてきて、〈ミワ〉と私の名前をささやく ように言って、そのまま去っていかれた。あれ、なんだったのかなって(笑)。そのような、チャーミングな方でもあります。

■小野絢子(新国立劇場バレエ団契約ダンサー)の会(9日)

――ビントレーさんの新作バレエとしての『アラジン』の面白さ、見どころは?
バレエはそのもの自体、いろいろな楽しみ方ができます。『アラジン』は、お話が子供から大人まで楽しめる、夢にあふれた冒険物語です。そして、お金や権力 では人は幸せになれない、もっと大切なものがあると、教えてもくれます。おとぎ話を再現する舞台装置や衣装にも注目して下さいね。とても大掛かりになりそ うです。ランプのある洞窟はとても幻想的だし、魔法の絨毯も本当に空を飛んでくれる。空を飛べるのは、アラジンとプリンセスだけ。つまり、この役を演じる 3組のキャストの6人だけなんですよ。

――踊りについては、いかがですか。
宝石がたくさん出てきますが、一つ一つの宝石の踊りがとても個性的に作られています。ルビー、金、銀、オニキス、パール、エメラルド、サファイア、ダイヤ モンド。サファイアはヴィーナスのイメージで振り付けられているので、最初のポーズはこんな風に胸を隠している。エメラルドは蛇のイメージだそうで、男性 に二人の女性が絡みついているような感じで、振りも面白い。ダイヤが一番豪華で、宝石の中では一番の見どころです。

――ほかに踊りの見どころは?
小野絢子さんラ ンプの精のジーンのソロも大変です。パはとても複雑で、テクニックも体力も音楽性もどれも高くなくてはできません。ソロが出てくるのは、私が絨毯で空を飛 んで夢見心地の時で、ジーンは一人で一生懸命踊っています。まばたきをすると終わってしまうほど短いので、そこでは絨毯ではなく、ジーンの踊りをまばたき しないで見て下さい(笑)」。

――アラジンとプリンセスは、どのような役柄ですか。
私とアラジン役の八幡顕光さんは、3組のキャストの中では原作に一番近いイメージだと思います。おとぎ話のヒロインとヒーローというよりは、その辺にいる男の子と女の子というふうで、一番身近な感じになるような気がします。

――ふたりの人物像について、もう少し説明していただけますか。
八幡さんはアラジンそのものと思う、と言うと怒られるかもしれないけれど、仕事もせずに怠けています。よく働きはするけれど、寝坊もする。そして、夢中に なったら止まらない、無鉄砲なところもある。プリンセスはアラジンのそういう所に惹かれてしまうのだと思います。なぜなら、プリンセスは王宮で育てられ、 プリンセスという自覚があるから、遊び盛りの年頃で色々なことをしてみたいのに、抑えて我慢している。だからこそ、何でもやってしまうアラジンがうらやま しいし、一緒に冒険してみたいと思うのでしょう。

――3組のペアがアラジンとプリンセスを演じますが、どんな感じになりそうですか。
私の印象では、3組ともすごくタイプが違います。同じ振りをしても、設定すら違うような感じを受けると思います。山本隆之さんと本島美和さんの組は、お兄 さんアラジンが、本当に美しいプリンセスらしいプリンセスを夢の世界へいざなっていく。逆に芳賀望さんと湯川麻美子さんの組は、お姉さんプリンセスが、 しょうがないアラジンを……(笑)。私たちは一番、対等な感じ。お互いキャラがとても近いので、稽古の時も、話し合って演技をしていくよりも、振りの中で 自然にでた反応をみて合わせていくという感じです。

――世界初演のこのプリンセス役が、新国立劇場での主役デビューになりますね。
はい。すごいラッキーガールだなと自分でも驚いています。作品を一から創っていく中にいるのも滅多にないことなので、本当に貴重です。この作品を通じて自分がどれだけ成長できるか楽しみです。

――『アラジン』の振付から、どのような印象を受けましたか。
小野絢子さんビ ントレーさんの振付は音楽そのもの。セリフそのものが動きになったようです。踊っていても見ていても、とても心地よい。パ自体はとても複雑だったり、テク ニックも入ってきたりで難しい部分もあるけれど、でも踊りやすい。アラジンとのパ・ド・ドゥでは、結婚式の時のデュオが一番ロマンチック。音楽も盛り上が るし、印象に残るでしょう」

――ビントレーさんは、どのように振付をなさるのですか。
一番の特徴は、多くを語らないこと。ダンサーは振付家に何かを要求され、それを必死にこなしていくものと思っていましたが、ビントリーさんがあまりにしゃ べらないので、自分から提案するなど、こちらが頭を使わなくてはいけない。振付家がダンサーと一緒になって創りあげていくというスタイルですね。でも、と てもリラックスした状態で、変な緊張感や威圧感もなく、楽しくできます。

――ビントリーさんの他の作品については、どのように思われましたか。
新国立劇場で上演された『カルミナ・ブラーナ』の時はまだ研修生で、観客として見ていただけでしたが、すごくショックでした。ああいうバレエ自体が初めて だったので、あの音楽をこういうふうに振付けるのかと。見た後で、心に残るものも大きかった。今年観た英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団の『美女と野 獣』からは、違う印象を受けました。こちらもおとぎ話で、絵本の世界がそのまま広がったようです。とても可愛らしく感じました。ビントレーさんの作品では 形でなく、動きや流れが大事です。演劇的要素もとても強く、心に何か温かいものを残してくれます。

――ビントレーさんご本人は、どんな方ですか。
『カルミナ』を見ていたので、気性の激しい人なのかと恐れていました。けれど、いざリハーサルが始まってみると、穏やかな人でした。ダンサーの良いとことや新しいところを、どんどん引き出してくれる方です。

(聞き手&Text:佐々木 三重子)