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写真・文/アンジェラ加瀬
[2014.09. 1]

日本上陸直前のゴメスが踊る、ザ・スワン/ザ・ストレンジャーを直撃取材!

マシュー・ボーン版『白鳥の湖』、熱のこもるロンドンのリハールを撮影

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1995年、ロンドンでの世界初演以来、世界中の観客を魅了し、様々な賞に輝いた
マシュー・ボーン版『白鳥の湖』。振付家ボーンと主演のアダム・クーパーの名を世界に知らしめた名作が、9月6日、再び日本に戻って来る。今回の日本公演の話題はアメリカン・バレエ・シアター(ABT)のプリンシパル、マルセロ・ゴメスが主役のザ・スワンとザ・ストレンジャーを踊ることだ。
ゴメスといえば、男性的で包容力に富み、舞台で圧倒的な存在感を奮うバレエ界のスーパー・スター。バレエ『白鳥の湖』で3幕の黒鳥、ブラック・スワンに相当するザ・ストレンジャーを踊るゴメスは、たぶんこの作品の世界初演以来、最も熱く悪魔的で危険な魅力をたたえたダンサーに違いない。日本の観客だけが目撃できるマルセロ・ゴメスのザ・スワンとザ・ストレンジャー、希有の幸運だ。

Dance Cubeは、カンパニーの来日直前にロンドンのスタジオを訪ね、リハーサル風景を見学・撮影させていただくとともに、10年来の念願がかなってこの作品にデビューするマルセロ・ゴメスと相手役のクリストファー・マーニーをインタビューし、この舞台への熱い想いや、役の解釈、日本公演への抱負について語っていただいた。
長くロンドンに住み、バレエやダンス作品の舞台評を書いたり、舞台写真を撮っている私は、1995年に世界初演されたボーンの『白鳥の湖』を初めて日本に紹介した。主演はアダム・クーパー。95年と翌96年にロンドンで爆発的なヒットとなり、その後世界中の観客を魅了した。
世界初演と翌年のリバイバル上演で舞台撮影し、舞台評を日本に送った私は、個人的にもこの作品が好きで、仕事以外にも良く舞台を見に通った。1・2・4幕と退廃的で怜悧な白鳥を踊り、3幕では妖しく危険な魅力をふりまいたアダム・クーパー。96年のリバイバルでは繊細なウィル・ケンプのザ・スワンとザ・ストレンジャーもたいへん人気を博した。その後、様々なダンサーが白鳥とブラック・スワンに相当する主役を踊り継いできた。今回の日本公演に特別出演するマルセロ・ゴメスは、男性的な魅力と包容力、華やかなダンス技術でバレエ界に君臨する。ゴメスが主役を踊るとはもはや事件であり、マシュー・ボーン版『白鳥の湖』は世界初演以来最強のザ・スワンとザ・ストレンジャーを迎え、日本で鮮やかに蘇るのだ。

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リハーサル・スタジオ訪問レポート

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2012年にロンドン・オリンピックが行われた五輪会場やオリンピック村から車で15分ほどの場所にあるリハーサル・スタジオでは、8月18日からマルセロ・ゴメスを迎えて2週間にわたって、『白鳥の湖』のリハーサルが行われていた。
私が訪ねたリハーサル第2週目は、朝10時から11時15分までのカンパニー・クラス、その後11時45分から1・2幕のリハーサル、ランチ休憩をはさんで午後に3・4幕をリハーサル。その後は夕方6時までグループ別、個別のセッションが行われた。
11時半にスタジオに入ると団員クラスが終わって、充分ウォームアップされた40人ほどのダンサーがリハーサル開始を待っている。今日は1・2幕の主役をゴメスが、3幕をジョナサン・オリヴィエ、4幕をクリス・トレンフィールドがリハーサルする予定。王子役のクリストファー・マーニーは1・2・4幕をリハーサルするスケジュールだ。ところが3幕で王子のリハーサルする予定だったモナハンの体調が悪いとのことで、マーニーが1〜4幕まで通しで踊った。
ゴメスは共に日本公演で主役を踊るベテラン・ダンサー、ジョナサン・オリヴィエの隣に座って素足にテーピングを施していた。急なスケジュール変更のため、1日中通しでリハーサルするよう言い渡されたマーニーは、静かに頷いた後、作品冒頭の場面で、彼の定位置である王子の寝室のベッドに横たわった。

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1幕、ゴメスは冒頭のシーンと彫刻のような後姿で短時間登場するのみ。冒頭の場面でゴメス=ザ・スワンが、鋭い眼光で大きく腕を振り上げ、白鳥の腕の動きを見せると、たちまち明るいはずのスタジオ内が、夜の闇につつまれたかのような妖しい雰囲気となった。
この日、女王役をリハーサルしたのはミーハ。プロポーションの良さと美貌が光る。
王子役のマーニーは演技が巧みで、瞬時に作品世界を体現できるのが素晴らしい。2幕、王子役のマーニーが群舞の白鳥にとりまかれ、舞台後方からゴメスのザ・スワンが現れ、白鳥の群れを率い王子を見つめ手招きする。
今回の日本公演にゴメスが客演すると聞いた私は、彼が男性的で悪魔的な個性と本領を発揮するであろう第3幕のザ・ストレンジャーに想いを馳せ、「是が非でも公演を観てみたい!」と思った。だが、2幕のザ・スワンもまた素晴らしい。一人舞台に登場し佇むゴメスには静謐な美があふれ、腕の運びも滑らかで芸術性に富んでいる。男性的ながら甘やかさに満ちたゴメスの白鳥が王子と出会い、王子の腕に捕えられる。
その後、マーニーの王子がゴメスのザ・スワンを追い、同じ動きをくり返す場面では、ゴメスに劣らぬダンス技術の持ち主であるマーニーの繊細な魅力が光った。
2幕最後、2人の愛が高まりを見せる場面に出る直前のゴメスは、ダンサーズ・ハイともいえる境地に上りつめ、その身体から発散されるエネルギーには目を見張るものがあった。ザ・スワンと王子が共に踊る2幕のクライマックス。跳躍技の数々。
リハーサルを重ねてきただけあり、ゴメスとマーニーの動きは完全にシンクロしている。男性的なゴメスと繊細で少年の面影を宿すマーニー。2人の優れたパートナーシップに圧倒された。
ロイヤル・バレエのプリンシパルになった直後に24歳でこの役を世界初演したアダム・クーパーも素晴らしかったが、ABTのプリンシパルになって12年、卓越したダンス技術を持ち舞台で圧倒的な存在性を放つバレエ界のスーパースター、マルセロ・ゴメスが、満を持してデビューするザ・スワンとザ・ストレンジャー。この役で彼を凌ぐダンサーは皆無かもしれない。世界初演より約20年の時を経てマシュー・ボーンの『白鳥の湖』に、史上最も甘美なザ・スワンと最も悪魔的で危険な魅力を放つザ・ストレンジャーが生まれようとしている。
その舞台を目撃できるのは、日本のダンス・ファンのみ。何とも贅沢なパフォーマンスである。

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マシュー・ボーンの「白鳥の湖」
●9/6(土)〜21(日)
※9/6(土)・7(日)はプレビュー公演
●東急シアターオーブ
●演出・振付=マシュー・ボーン
●出演=ニュー・アドベンチャーズ
[ザ・スワン/ザ・ストレンジャー役]マルセロ・ゴメス/ジョナサン・オリヴィエ/クリス・トレンフィールド
[王子]サイモン・ウィリアムズ/クリストファー・マーニー
[女王]マドレーヌ・ブレナン
[ガールフレンド]アンジャリ・メーラ/キャリー・ジョンソン