reporter:ペンネーム/ 若葉まこ
[2004.04.10]

No.1 フラメンコ編

私がフラメンコを選んだ理由。それは、単刀直入に言えば、自分を発散させたい!この一言につきます。 フラメンコは自分の身体使って歌うダンス。情熱的な曲に身を任せてひたすら足を打ちならし踊る。 バレエほど制約もなく自由に踊れそう?ひらひらスカートに憧れて…いざ!門をたたきます。

3月某日。

 いきなり体験は不安よ、やっぱり。一度見学をしなくちゃね。雨の降る中、チャコット本店に向かい、カルチャーのフロアへ到着。 ドアの小窓からこっそり見学するのかと思いきや、レッスンフロアと受付側はガラスで仕切られ、見学者も踊る生徒さんもレッスン風景そのものが丸見えですぅ…。 人に見られてる状態というのは、自分を磨く、ダンス上達の上で大切なことだけど、ここで踊るのはちと気恥ずかしいぞ。 しかしそんな私のことなんて気にも留めずに(当たり前か)、レッスンに集中する生徒さんのお顔は真剣そのもの。 冷やかすつもりは全然ないの、ごめんなさい。とにかく明るく開放的で楽しそう!これなら私も怖くない。
 チャコットのカルチャー講座は、オープンクラスと3ヶ月が1クールのコースと2パターンある。 今日は後者の方を見学。見学はいつでもできるそうだが、体験は予約制だ。
「コースには定員があり、空いてる席に入れるように調節しています」と、カルチャー事業部の佐藤さん。 気になる受講料は、入学金5,000円(お安めじゃない?)に、各コースのお値段。私が体験するコースは、3ヶ月(12回)で30,000円です。
佐藤さんは「フラメンコは、楽曲が1000種類(!)もありますが、その中でもセビジャーナスという曲を踊れるようになるまでを入門編として選んでいます。 セビジャーナスはフラメンコの舞踊コンクールでもおおかたの出場者が選ぶ曲。スペインのお祭りでも必ず出てくるし、踊れるようになっているといいですよ。 3クール、だいたい1年間同じクラスを続けていただくとしっかり身に付きます」と教えて下さいました。
佐藤さんの解説を聞きながらも、私はスカートのひらひらに釘付け。最初は足でリズムを踏むだけのステップだったのが、 スカートさばきと腕と指の動きが加わってます。セビジャーナスの完成も間近の模様で、私もあんなふうにひらひら踊りたい!

「見学する表情は真剣!」

「まずは見学。鏡越しに真剣です」」
 始める前に、必要なものをそろえましょう。靴、スカート、そしてカスタネット。フラメンコ用品売り場のフロアに移動して、まずは靴を試着させていただきます。

スペイン製の「ガジャルド」と、チャコット・オリジナルの2種類。牛革とスウェードで作られたものとあります。 正直、18,900円や21,000円といった値段に驚きました。一生ものだ。靴選び、真剣度が増します。 選び方のポイントは?「ちょっときゅっとする感じ」とのことで、普段履く革靴とあまり変わらないみたい。 足を入れたあとはかかとのずれ落ち具合をチェック。「後ろを向いて、片足ずつつま先立ちにしてみて下さい」。 言われたままにつま先で曲げます。足に合っていない靴だとすぽんと後ろへ脱げてしまったり、ひっぱたられたら簡単に脱げてしまったり。 私の足は右がちょっと大きく、左が小さい。しかも親指が長いために、ころんとかわいいシルエットをしたまんまるの靴先になかなか合わない…。 「調節用に中敷きを敷いてもらってもいいんですが、それだと指先が靴の上側に当たってしまってオススメしません。 ストッキングだけだと滑りやすいので前に詰まる原因にもなります。指先が別れている靴下もありますよ」。 革が柔らかく足にすぐになじみやすい設計の初心者向けシューズや、革が広がりやすいスウェード製など試着に試着を重ねて、ようやく一足選びました!

ここで素朴な疑問。さっきからつま先部分とかかとに付いたきらきら光る金具は何? 「音が出るようにとっても短い釘が打ってあるんです。足の打ち鳴らし方で3種類あるんですよ。」つま先だけ、かかとだけ、そして足裏全面。 うーん、足も楽器なのか。
「レッスンする床によっては、釘が打ってある靴では傷を付けてしまうため禁止されているところもあります。レッスンを始める前には必ず確認された方がいいですね」

 


「ダンスはシューズが大事!」

「裏に打たれた釘で音を出します」


「シューズにも色々な種類があります」
 お次はカスタネット。こちらもいろいろと試着(試打?)させていただきます。「値が張るものほど音色がいい」を実感すべく、6,000円~15,000円、20,000円と音の聞き比べをしました。 

確かに、音色の軽やかさと響き方が違う!綺麗な音に感動し、すっかり私は踊る気満々に。ボルテージが上がってきました。高いものでなくても、お手頃な値 段で音色もいいものもあるそうです。指の入れ方・締め付けの調節の仕方を教わります。「線が入っている方に利き手を」。なんでまた?「一組のカスタネット で音が違うんです」。た、たしかに高低の差がある~!カスタネットも音楽の一部。割れないように合成樹脂だったり繊維だったり。黒いカスタネットはシンプ ルな形なのに、非常に奥が深いようです。

「素材によって様々な音が」

 最後にレッスン着を選びます。レオタードやTシャツなど、トップスは自由のようですが、スカートが なくてはいけません。それは次第にスカートを使った動きが出てくるから。初心者はスカートのひだが控えめな軽いものがいいようです。「基本的には好きなデ ザインで大丈夫ですが、スカートが持ちやすいのはこちらです」と勧めていただいた形は、腰回りはすっきり、足下に一段フリルのついたスカートです。さっそ く試着室へ。丈はくるぶしあたりのものを選ぶこと。長さもOKが出て、最後に、意思表明?記念撮影をしました。


「店内は色とりどり」

「スカートをはいて完成!」



4月某日。


いよいよ。いよいよです。4~6月の1クール、今日が第1日目です。 私も含め、やや緊張している受講生のなかに、講師の谷淑江先生(小松原庸子舞踊団)が黒いスカートをひるがえし、たおやかな物腰でいらっしゃいました。

カスタネットの練習からスタート。先生を囲んで円陣を組み、まずは装着。打ち方、腕は肘を落とさないように…など注意をいただいて、いざ、リズムを刻みます。 「タと言ったら左、ピと言ったら右」という決まり事にのっとり、最初はタ、ピ、タ、ピ、タ、ピ、タ、ピ……。先生の見本を聞き入っている暇はありません。 リズムの組み合わせも、指の動かし方もレベルアップしていきます。
「右手はひっかく、パンと言ったら両手同時に」が加わり、パン・タピタ、パン・タピタ…。 初めて体験するフラメンコのリズムになんとかついて行こうと必死。余裕などありません。 左と右、別な動きをさせるんだもの、頭がパニックになりそう!とはいえ、同時に鳴らすのが簡単かというと、 タイミングがずれたりどちらかがおろそかになったり、意外と「同時」に鳴らせないのです。不器用だなぁ。
次に腕の動きが上下前後と加わって、さらにレベルアップ。焦るな焦るな、自分の手元をしっかりと見て鳴らそう。 何よりギター音楽をきちんと聞いて、タピタピと呪文のように唱える。するとリズムが狂うことも少ないかも…そう自分に言い聞かせつつ、規則正しくリズムを刻む。 とにかく、必死でした。

「まずはカスタネットの練習から」

「では、カスタネットを片付けてください。」
もっとマスターしたいな。名残惜しさを感じる暇もなく、次のセビジャーナスの練習に移ります。時間も限られていますから、 レッスンはテンポ良くスムーズに進んでいきます。

セビリア地方の春祭りで踊られる曲のセビジャーナスは、4番目まであり二人組で踊るものだそう。フラメンコ用語に丁寧な解説が入ります。 片方のつま先を身体の前でフロアに押しつけて「これは、プランタといいます」。ポーズの名前もスペイン語だ。 スペインでは1階、2階にもプランタを使います。そうか~、覚えやすいぞ。冒頭から徐々に振りを覚えていきます。 谷先生のお手本に合わせて、一緒に動いて身体にすり込みます。マーキングはできても、見るとやるとは大違い。 先生は簡単に足を運んでいるだけでなんだか体全体が踊ってるのに、自分はときたら。 動いてみてわかるフラメンコの難しさ!ま、カスタネットのときから感じてたけどさ。 「ゴルペはもっと床を鳴らして!遠慮せずに」「どうぞ、何度も間違えてください」と谷先生の励ましもあり、 なれない靴とも戦い、初めてのステップをぎこちなくもこなし、ひたすら先生のカウント、音楽にあわせて何度も鏡の前を往来します。 どうしたらもっとうまく踊れるの~? 鏡の中の自分と火花を散らす…は大げさかもしれないけど、 先生が醸し出すフラメンコらしさを習得できるように少しでも近づけるように頑張っちゃいます。


  写真2枚とも:「お祭りの踊りセビジャーナス」
 脚を屈伸したりちょっと柔軟をして、いよいよ、フラメンコの真髄、足さばき、サパテアードの練習です!
 
やってみて思った…。セビジャーナスの練習よりも難しい。足を規則正しくうち鳴らすのがこんなにも困難だったとは。左、右と、単純に踏み鳴らせばOKか と思いきや、つま先がまず床を踏み(プンタ)、次にかかとを下ろす(タコン)パターンや足の裏全面を使うパターンと複雑な動きなのだ。プンタ・タコン、プ ンタ・タコン。まずはこの繰り返し。上半身はすっきりのばして、足元は揃えることも忘れず、1ヶ所にとどまっていなくちゃならない。姿勢は「上半身はまっ すぐに、ひざを緩めるだけ」と先生はあっさりとおっしゃるのですが、頭の隅には姿勢を保たなきゃという意識があるけれど、スピードの速さに置いてきぼりを くわないようにするのが精一杯。リズムが変わって、さらに足元はふらふら。激しい運動をしたわけではないのに、だんだんポカポカしてきて、じんわりと汗が 体全体から出てきます。

最後は、ブラソ。腕の動きです。両腕を挙げ、バレエで言うならアン・オーのポジションから、体の脇を通って下に、おへその前を通ってもとの位置へ。円を 描く動作を左右交互に行います。上から下に動かすときは肘を上に引っ張り、指先を下に。これまたスピードが速い。次は手首を回す運動。両手を前方に差し出 し、内回しと外回しを行います。回すときは指を一本一本折って、回しきったら一本一本開いていきます。指がつりそう!手のひらが痛い。仕事中ってパソコン の前で固まってるもんなぁ。手首は固いし、指も反ろうと思っても反らないし、ずっと続けると腕がだるくなってきます。「指先をきれいに。手首を回すだ け。」シンプルな教えだけど、滑らかに動かすには日ごろから柔らかくしてないとできませんでした。

「ウォーミングアップ」



「いよいよサパティアードの練習です」

 


「レッスンが終わって先生と記念撮影」

ううぅ。足が痛い…。初めてのフラメンコは、自分と戦っている間に終わってしまいました。ハッキリ言って、だれが見学にこようが、周りのことなんて気にしてられません。目に入ってこない。

レッスン後、笑顔がまぶしい谷先生からビギナーへひと言いただきました。
「意外と取っつきにくいかもしれませんね。やってみると、手も足も細かなところまで使うことがわかりです。見た目と違う、できないと落ち込まないで。3ヶ月も続ければ霧が晴れたようにわかるようになりますから」

帰り道、頭の中は、タピピタピピタ、タピピタピピタ。カスタネットのおさらいしたくってしょうがない。手も動かしちゃったりなんかして。すっかり怪しい 人だ。気分はすっきり軽やか、普段は好きじゃない夜の山手線に乗るのも苦に感じない。会社帰り、足裏マッサージやお友達とのお食事も、それはそれで楽しい しリフレッシュできるけれど、一週間に1日、自分のためだけに時間を使うのがこんなに極上のリラクゼーションだったなんて。嬉しい発見でした。続けたい! 心からそう思ったのでした。


■今回教えていただいたのは…

谷 淑江先生
 小松原庸子スペイン舞踊団

幼少よりバレエを習得。
小松原庸子スペイン舞踊団の公演に感動し、1990年研究所入所。バレエで鍛えられたテクニックとスペイン的な容姿で舞台の華を持つ数少ない舞踊手。
入所2年目に舞踊団恒例公演「真夏の夜のフラメンコ」に出演。舞踊団でのマドリッド、バルセロナ、コルドバそしてニューヨーク、シンガポール等の海外公演にも参加。
現在では度々スペインで研鑽を続け、舞踊団公演では重要な役を与えられ、各方面より好評を博し舞踊団の期待に応えている。