(荒部 好)

『パリ・オペラ座のすべて』

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世界で最も美しい劇場、パレ・ガルニエを拠点とするパリ・オペラ座バレエ団の本番のステージからクラス、リハーサル、ミーティング、衣裳室、食事、バッックステージなどあらゆる場所の様々な局面にカメラを入れ、巨大なバレエ製造の現場のヴィヴィッドな息遣いを撮らえた映画『パリ・オペラ座のすべて』が間もなく公開される。

映像は冒頭から、”怪人”が生きていた、奈落のミステリアスな水路を映し出す。そして地上80メートルの屋上でミツバチを飼育して蜂蜜を収穫している様子まで、ドキュメンタリー映画の巨匠、フレデリック・ワイズマンのカメラは、パリの街を見晴るかすてっぺんから奈落に至るまで、ルイ14世の時代に源を発するバレエに関わるものすべて、見逃すものはない。撮影は84日間におよんだという。

現在進行形で撮られる演目は7本。コンテンポラリー・ダンスは英国ロイヤル・バレエの気鋭の振付家ウェイン・マクレガーの『ジェニュス』、アンジュラン・プレルジョカージュの『メディアの夢』、サシャ・ヴァルツの『ロミオとジュリエット』、マッツ・エクの『ベルナルダの家』、ピナ・バウシュの『オルフェオとエウリディーチェ』。クラシック・バレエはヌレエフ版『くるみ割り人形』とピエール・ラコット復元の『パキータ』の2本だけだから、パリ・オペラ座バレエ団でもコンテンポラリー・ダンスの割合が増えていることがよく分かる。
特に印象に残ったのは、エミリー・コゼットを中心に行われていた『メディアの夢』。王女メディアが血まみれになって、自分の二人の子供を殺す凄絶なシーンが鮮烈だった。また、マクレガーの独特のリズムによる細かい動きまでチェックする振付では、マリ=アニエス・ジロのソロが印象に残った。

そのほかにも年金問題をダンサーたちに事務局長が直接説明するシーン、ミーティングでは、大口の寄付を提供した人々をどのように報いるかを話し合うシーンなど興味深かった。
さらに、ルフェーブル監督がベジャールの葬儀の模様を電話で話しているシーンは、歴史的な出来事に遭遇した現場のひとつの光景を鮮やかに映していた。しかし、まだピナ・バウシュの早すぎる死はまったく予期されておらず、マース・カニングハムも健在だったのだと思うと、些かの感慨も湧いてきた。それだけこの映画が、舞踊の歴史の主流に関わていたということでもある。

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パリ・オペラ座のすべて LA DANSE -le ballet de l' Opéra de Paris-

監督/フレデリック・ワイズマン
出演/ローラン・イレール、マニュエル・ルグリ、ニコラ・ル・リッシュ、アニエス・ルテステュ、マチュー・ガニオ、ブリジット・ルフェーブルほか、パリ・オペラ座バレエ団
2009年、フランス、160分

2009年秋 Bunkamuraル・シネマほか、全国順次ロードショー

http://www.paris-opera.jp/