(関口紘一)

『ホライズン』HORIZONTES

『ホライズン』は、20世紀を代表するプリマバレリーナの一人だったアリシア・アロンソを中心に、3世代にわたるキューバのバレリーナを描くドキュメンタリー映画である。

horizontes_alisia_dance.jpg (c)INTERMEZZO FILMS 2015

アロンソは、視力をほとんど失い94歳になったが、今日もキューバ国立バレエ団の芸術監督としての活動を続けている。キューバでは、カストロ兄弟とも親しい英雄である。特にカンパニーの代表的レパートリーである『ジゼル』の名演がよく知られている。21歳の頃から視力が衰え、度々、手術を繰り返しているが、取り戻すことは叶っていない。特に日本には、世界バレエフェスティバルに第一回からたびたび参加しているので、ご記憶の方も多いだろう。この映画の中でもアロンソのサポートとして舞台に上がっていたホセ・エスキヴァルをパートナーとして踊った。

horizontes_viengsay_bswan.jpg
horizontes_viengsay_dswan.jpg (c)INTERMEZZO FILMS 2015

もう一人は、現役のプリマ、ヴィエングセイ・ヴァルデス。キューバのダンサーらしい運動神経が細かくはりめぐらされているかのような、しかしフェミニンなタッチも上手く表す。アロンソから『コッペリア』の指導を受けるシーンが収録されている。そして最も若いアマンダ・デ・ヘスス・ペレス・ドゥアルデは、バレエ・スクールの生徒。アロンソがどこに行く時でも、常にトゥシューズを携帯していた、というエピソードを熱心に聞き入る。何か一つでも将来プリマになるためのヒントを得よう、という必死な様子が伝わってくるシーンが印象的だ。というのもアマンダの両親は田舎の家を引き払って、娘のバレエの才能に一家のすべてを賭け、ハバナに出てきたのだ。もし、彼女がキューバ国立バレエ団に入団できなければ、もしかすると一家は路頭な迷うことになるかもしれない。母親は彼女に付きっきり、父親に彼女のシューズをもっと買いたい、と熱心に説明する。

horizontes_amandashoes.jpg (c)INTERMEZZO FILMS 2015
Eileen_Hofer.jpg アイリーン・ホーファー監督

スイス出身でジュネーブ大学で映画を学んだ女流監督アイリーン・ホーファーは、国はまだあまり豊かではないが、一心にバレエに打ち込むキューバの女性たちの熱い情熱を、オールド・ハバナの美し情景の中に、抒情的な雰囲気も漂わせながら描いている。
社会体制は異なっても、キューバの人たちのバレエのへの情熱は変わらない。キューバには、アロンソを始めとしてフェルナンドとアルベルトのアロンソ兄弟、ホセ・カレーニョ、カルロス・アコスタ、シオラマ・レイエスなど優れたダンサーや舞踊家を輩出していて、独自のバレエの伝統がある。それが、こうしたバレリーナたちの世代を越えた情熱と努力によって継承されてきていることが、よく理解できる映画だった。

2016年11月12日より、東京都写真美術館ホール、角川シネマ新宿でロードショー

horizontes_school.jpg (c)INTERMEZZO FILMS 2015
1610cinemalogo.jpg

『ホライズン』HORIZONTES
監督:アイリーン・ホーファー
出演:アリシア・アロンソ、ヴィエングセイ・バルデス、アマンダ・ペレス他
キューバ国立バレエ団、フェルナンド・アロンソ国立バレエ学校

2016年
11月12日(土)〜 角川シネマ新宿 (東京・新宿)
11月12日(土)〜 東京都写真美術館ホール (東京・恵比寿)
2017年
1月予定 テアトル梅田 (大阪)
ほか全国順次公開
 
(c) INTERMEZZO FILMS 2015
http://www.tk-telefilm.co.jp/horizontes/