荒部 好

『ココ・シャネル』COCO CHANEL

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シャネル・ブームが到来した。ファッションや香水だけのブームではなく、ココ・シャネル自身の人生を描いた映画が、今年の夏から2010年にかけて3本(他には『ココ・アヴァン・シャネル』、『シャネル&ストラヴィンスキー』)も公開される。シャネルを描いた舞台も、既に公演が始まっている『COCO』のほかにも上演が予定されているという。女性の生き方としてのシャネルが注目を集めている。

よく知られているようにココ・シャネルは、19世紀風の窮屈なファッションから女性を解放したシャネル・スーツや「黒」のファッション、あるいはマリリン・モンローがベッドで纏った「シャネルNo.5」、イミテーション・ジュエリーやショルダーバッグなど数えきれないほどの「革命」を成功させて、20世紀の女性のモードを一変させた。シャネルは、過去のモードを一挙に忘れさせてしまうために「皆殺しの天使」と、畏敬を込めて語られていたのである。
詩人コクトーは「ファッションにおけるシャネルは、絵画のピカソに等しい」と言っているが、シャネルはディアギレフのバレエ・リュスを支援した。『春の祭典』の初演を助けたのを始め、『青列車』『物を乞う神々』『ミューズを導くアポロ』などに衣裳デザインを提供している。そうした中でピカソ、コクトー、ラディゲなどとの交友を深めている。
 

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フランス南西部オーヴェルニュ地方に生まれたシャネルは、貧しい境遇からシャネル・モードというブティックをオープンし、一大モード帝国を築いた。そして、フランス社交界ではミシア・セール、ロスチャイルド男爵夫人、ロシア貴族ディミトリ・パヴロビッチ、英国貴族ウエストミンスター公爵、ハリウッドのプロデューサー、サミュエル・ゴールドウィンなど多くのセレブと関わったばかりでなく、恋多き女としても大いにその名を馳せた。

映画『ココ・シャネル』は、1954年のパリ。15年の沈黙を破って復帰のコレクションが幕を開ける直前のサロンから始まる。コクトー、ヴィスコンティ、ダリ・・・有名人が次々と到着するサロンの舞台裏で、最後のはさみを使うシャネル。しかし結局、このコレクションは失敗に終わる。
シーンは一気に1895年へ。母を失い、父に見捨てられて妹と孤児院にひきとられるシャネル。孤独な少女時代にお針子として働きながら次第にデザイナーとしての才能を発揮していく。将校エチエンヌとの恋で初めて上流階級の生活を知る。さらに生涯愛し続けた男性、ボーイとの出会い。
そして、一度は別れたボーイと結婚することを決め、クリスマスの再会の時を待つシャネル・・・。
シャネルは、愛する人が次々と亡くなったり破産したりしたことから、悲しい運命を背負った「獅子座の女」とも言われていた。
映画『ココ・シャネル』は、そうした厳しい環境の中で、女性の自立をファッションのみならず、自らの人生でも実践したシャネルの波瀾に富んだ、しかし説得力のある生涯を描いている。
 

コレクションを再開する70歳のシャネルを演じているのは、オスカー女優のシャーリー・マックレーン。バレエ・ファンには、ハーバート・ロス監督の『愛と喝采の日々』で、結婚してバレエを止めた元プリマの役を演じているからお馴染みだろう。マクレーンは、”COCO”の大ファンで全身シャンル・スーツで固めていた時期もあった。
若き日のココ・シャネルに扮しているのはイタリア映画で活躍するバルボラ・ボブローヴァ。また、シャネルのビジネス・パートナー、マルク・ボウシエ役は、ロバート・アルトマン監督の『バレエ・カンパニー』で Mr. A を演じていたマルコム・マクダウエル。こちらはバレエ・ファンには未だ記憶に新しいだろう。

『ココ・シャネル』
出演/シャーリー・マックレーン、バルボラ・ボヴローヴァ、マルコム・マクダウエル
監督/クリスチャン・デュゲイ
脚本/エンリコ・メディオーリ、コスチューム・デザイナー/ピエール・イブ・ゲロー
2008年/アメリカ、イタリア、フランス/135分

夏、Bunkamura ル・シネマ、TOHO シネマズシャンテ、新宿武蔵野館他にて全国ロードショー
配給/ピックス

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