荒部 好

『リュミエール』

 モーリス・ベジャールが新作『リュミエール(光)』を創るまでの過程を描いた映画が公開される。この映画では、2001年2月から6月まで、新しい作品を創るために迷路に迷い込んだようなベジャールの姿を、スイスの映画監督マルセル・シューバッハが丹念に追っている。
 
75歳のベジャールは、驚くほどの若々しさでバレエ団の指揮をとる。彼は、自分の人生に大きな影響を与えたバッハ、ブレル、バーバラなどの音楽を使って、生命への情熱を作品に投影させるのである。

ベジャールは言う。
「偉大なドイツの詩人ゲーテは、死に瀕して、”もっと光を。どうかもっと光を”と言った。私は死ぬ時には、すべての若者にこう言い残したいものだ。”もっとダンスを。どうかもっとダンスを”と」さらにインタビューに答えて
「聖書の創成記の最初の章に、第一の日、神が最初の言葉を発した。”光あれ”と。すると光があった。それが世界の初日だった。第二の日には別のもの、第三の日にはまた別のものを創造され、6日の行程のうち、四日目に太陽、月、そして星を創った。その時にはすでに、海と大地、草木が存在していた。その事実に、私は完全に魅了された。神が太陽の前に光を創ったとは、実に驚くべき事ではないだろうか。なんと素晴らしい発想だろう。それが、この作品の出発点となった」と語る。
 
新しい作品を創るにあたって、常に本質的なイメージを深慮するベジャールらしい発言である。
  映画の中でベジャールは、ダンサーたちに優しく語りかけるが、舞台で使う映像の選択や事務的な手続きなどには苛立ちを見せる。老いてもう残された時間が少ない、とも感じているのであろう。
  最後の野外ステージの初日、猛烈な嵐に襲われるシーンには思わず固唾を呑む。 随所に現れるベジャール・ダンサーたちのまばゆいばかりの姿体が素晴らしい。


 

 
●2004年6月19日より恵比寿ガーデンシネマにてロードショー
●監督:マルセル・シューバッハ
●出演:モーリス・ベジャール、ジル・ロマン、エリザベット・ロス、小林十市、
  クリスティーヌ・ブラン、オクタヴィオ・スタンリー、モーリス・ベジャール・バレエ団
●後援:スイス大使館

●お問い合わせ/
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●全国順次ロード・ショー