荒部 好

『ラ・ピエトラ 愛を踊る女』

 マリ=クロード・ピエトラガラ。コルシカ人を父に、強靭な身体とクールな美貌をあわせ持つパリ・オペラ座のエトワールだった。黒髪と黒い瞳、彫りの深いシェイプ・アップされたエキゾティックな風貌。個性派の多いオペラ座のエトワールの中でも一際、鮮やかな印象を刻印した。
 パトリック・デュポンによって27歳の遅咲きエトワールに昇格したピエトラガラが、日本の舞台でデュポンと踊った力感漲る『ドン・キホーテ』のグラン・パ・ド・ドゥ、黒ずくめの衣装で踊ったカールソン振付の『ドント・ルック・バック』の肢体などが、すぐさま脳裡に甦ってくる。

 そのピエトラガラが主演した映画『ラ・ピエトラ 愛を踊る女』が10月にロードショー公開される。

 ピエトラガラ扮する超一流のバレエ・ダンサー、マルゴは、コミック・アーティストの夫ラファエルと幼い娘ロクサーヌと3人で幸せに暮らしていた。ところが、友人の医師ピエールの診断の結果が、夫のラファエルに告げられる。
 ラファエルは何も言わなかったが、長年鍛え上げてきた自分の身体のことはマルゴ自身がよく分かっていた。医師ピエールの勧める手術を拒否し、死の恐怖に苛まれながら、マルゴはただ「踊る」ことを選ぶ。
 死の影に立ち向かい克服するかのような、マルゴの情熱的で美しいダンス。マルゴはある決意を胸に秘めていた・・・。

 実話に基づいた「死」と「ダンス」をテーマにしたドラマティックなラヴ・ストーリーだが、ピエトラガラの存在感が閃光のようなマルゴのスピリットを浮かび上がらせている。
 ピエトラガラはマルセーユ国立バレエの芸術監督を辞したが、出産のために芸術活動はしばらくお休みになるだろう。世界のバレエ・ダンサーの中で、風貌も活動もユニークだったピエトラガラ、母なるピエトラの次の一歩にも大いに注目が集まるに違いない。
 

 
「ラ・ピエトラ 愛を踊る女」
●出演/マリ=クロード・ピエトラガラ、フロラン・バニー、フランソワ・クリュゼ
●監督/ジャック・コルタル
●2003年、フランス映画
●カラー、113分

10月新宿武蔵野館ほか全国ロードショー
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