荒部 好

『ヴィタール』

 牧阿佐美バレヱ団の柄本奈美が、塚本晋也が監督し浅野忠信が主演した映画『ヴィタール』に出演、ダンス・シーンはH・アール・カオスの大島早紀子が振付けた。

 物語は、医学生の高木(浅野忠信)が、激しい交通事故に遭い記憶を失って、父(串田和美)や母(りりィ)も分からなくなる。その上、自分さえも誰なのかどこにいるのかも理解できないのだが、なぜか医学書にだけは強い関心を覚える。医学部で解剖実習の日、若い女性の遺体が割り当てられ、高木は解剖にのめり込んでいく。そして解剖を続けるうちに、彼は不思議な幻想に陥るようになる。幻想世界では、いつも涼子(柄本奈美)という美しい女性と甘く切ない時を過ごすのである。
 現実の大学では、同じ解剖実習の生徒の吉本(KIKI)が高木に近づいてくる。しかし彼はますます幻想世界にはまり込み、浜辺で涼子とダンスを踊った鮮明な映像に強いインパクトを受ける。さらに、解剖がすすむうちに高木は、涼子の腕に印されたある「印」に気がつき、肉体に込められた強烈な思いを知ることになる‥‥。
 人体に深い興味を抱き解剖に熱中する高木には、レオナルド・ダ・ヴィンチのイメージが投影され、涼子には、明治時代に日本で初めて検体を申し出た遊女、美幾の面影が映されているという。

 涼子役は、塚本監督がいくつかのバレエ団を回り、ダンスと容姿と雰囲気から牧阿佐美バレヱ団の柄本奈美に決まったという。クラシック・バレエを踊ってきた柄本は、大島が振付けたコンテンポラリー・ダンスに挑戦し、見事に、この映画の重要なポイントとなるダンス・シーンを美しく踊った。
 リアルな解剖シーンも描かれ、ロマンティックな世界を描いた映画ではないが、身体と魂あるいは意識の関係を正面からとりあげた意欲的な作品である。
 

 

12月11日(土)より、アミューズCQN(渋谷)、K's cinema(新宿)でお正月ロードショー
H.P.=
www.vital-movie.com