荒部 好

『オーロラ』

『エトワール』でパリ・オペラ座バレエ団の姿をヴィヴィッドに描いて、バレエ映画として空前の大ヒットをとばした、ニルス・タヴェルニエ監督の新作『オーロラ』が公開される。
『オーロラ』もバレエ映画だが、『エトワール』とは変わって完全なフィクション。架空の国のダンスが大好きな、しかしダンスを禁じられた王女オーロラの物語である。

家臣の悪巧みのために国の経済が行き詰り、オーロラは経済大国の王子との結婚を迫られるが、貧しいが芸術を愛する肖像画家にほのかな想いを寄せる。国の破綻を防ぐために娘を犠牲にする王の苦悩。今は封印しているが、かつては素晴らしい踊り手だった王妃はオーロラを救うために力を尽くすのだが……。といったやや深刻なドラマが、お城やアトリエ、雲の上の天国のイメージなどを背景に、CG処理の映像なども使ってファンタスティックに展開する。

王妃に扮する女優のキャロル・ブーケのはっきりと役の心理を捉えた演技が、この映画の中心となって輝いている。
まだオペラ座バレエ学校の生徒だというマルゴ・シャトリエの若々しく伸びやかなダンス(現実には禁じられているので、密かに隠れてあるいは夢の中で踊る)、肖像画家役のル・リッシュの見事な踊りなどが見ものである。
オーロラに財力を誇示して結婚を申し込む、日本を想起させるジパンゴの王子に扮した竹井豊が鮮烈な舞踏を披露している。
全編タブーに支配された世界の物語なので、はなやかな解放感はないが、ロマンティックな心に印象を刻む映画であった。
 
2006年12月16日(土)~ Bunkamura ル・シネマ、シャンテ シネ、ほか全国順次ロードショー

監督/ニルス・ダヴェルニエ
振付/カロリン・カールソン
出演/マルゴ・シャトリエ、ニコラ・ル・リッシュ、キャロル・ブーケ、フランソワ・ベルレアン、カデル・ベラルビ、竹井豊、ヤン・ブリタール