(荒部 好)

ボリショイ・バレエ団『眠れる森の美女』全2幕

2013 - 2014シーズン ボリショイ劇場のライブ映像を映画館で上映

ボリショイ劇場のヒストリカルステージで上演された、ボリショイ・バレエの『眠れる森の美女』のライブ録画が映画館で上映された。オーロラ姫はボリショイの押しも押されもせぬプリマ、スヴェトラーナ・ザハーロワ、デジレ王子はABTのプリンシパルであり、2011年にはアメリカ人として最初にボリショイ・バレエ団のプリンシパルとなったデヴィッド・ホールバーグ。
開幕からカタラピュート(ヴィタリーヒ・ビクティミノフ)が軽快に踊り、王女の誕生パーティの招待客のリストに目を通している。しかし彼は、念願かなってやっと国王フロレスタン14世夫妻(アンドレイ・シトニコフ、クリスティーナ・カラショーワ)が賜った王女の誕生の祝典を目前にして、いささかはしゃぎ過ぎているのではないか、という雰囲気まで良く伝わってくるシーンだ。
プロローグは王女の誕生の式典で妖精たちがお祝いの踊りを披露するシーン。場面は宮廷の中だが、この儀式が行われている宮殿の建物全体が背景に浮かび上がっている。100年の時を経て、デジレ王子のキスによってオーロラ姫が目覚める頃は、その宮殿は鄙びて茨に囲まれた背景となる。そして善が悪を制して、オーロラ姫とデジレ王子が結ばれる結婚式では、朦朧として幻想の中に浮かぶ宮殿となる。こうして背景の宮殿が物語の時の流れを表し、その経緯の中で変転する人間たちの営みじっと見守っている。
また第2幕冒頭は、完璧と思われるプティパの創作の中でも、物語的には確かに必要だが舞踊的には弱い、と後世の研究者から指摘されてきた、デジレ王子とオーロラ姫が100年の後に縁を結ぶきっかけとなるジーン。この場面をグリゴローヴィチは、じつに見事に優雅な舞踊シーンとして振付けている。つまり、100年の眠りに落ちているオーロラ姫はその眠りの夢の中で、自分を目覚めさせてくれるデジレ王子をリラの精の力を借りて呼び寄せる。夢の中でオーロラ姫自身がデジレ王子と出会って踊る。ゴール・ド・バレエは、一緒に眠りに就いている宮廷の人々だ。100年の時を、夢の中という幻想の中で結びつけたアイディアは見事だ。

幕間には、カラボス役で芸達者ぶりを見せたアレクセイ・ロバレーヴィチと、今日を代表するダンスールノーブル、デヴィッド・ホールバーグのインタビューが収録されている。
やはり、大画面で観ると、生の舞台では気付かないディテールも見えてくるので、いっそうの迫力や豪華さを感じることが多い。これからまだ『ジュエルズ』『ロスト・イリュージョン』『黄金時代』などの上映予定があるので楽しみだ。
今後の上映予定の詳細はhttp://www.theatus-culture.com/

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ボリショイ・バレエ団『眠れる森の美女』全2幕
音 楽/ピョトール・チャイコフスキー
原振付/マリウス・プティパ
新版振付/ユーリ・グリゴローヴィチ
オーロラ姫/スヴェトラーナ・ザハーロワ
デジレ王子/デヴィッド・ホールバーグ
国王フロレスタン14世/アンドレイ・シトニコフ
王妃/クリスティーナ・カラショーワ
カラピュート/ヴィターリ・ビクティミノフ
悪の精カラボス/アレクセイ・ロバレーヴィチ
ボリショイ・バレエ団