(荒部 好)

『フラメンコ・フラメンコ』

カルロス・サウラ監督

アントニオ・ガデスを主役として創った『カルメン』『血の婚礼』『恋は魔術師』のフラメンコ3部作で知られるカルロス・サウラ監督。フラメンコの精髄を描くことにかけては世界一の定評があるサウラ監督の最新作『フラメンコ・フラメンコ』がロードショー公開される。
やはりサウラ監督が1995年に創った畢生のドキュメンタリー映画『フラメンコ』に続く作品だ。『フラメンコ』に登場したホアキン・コルテスはブレークして世界ツアーが組まれ来日公演でも大いに評判を呼んだ。マリア・パペスもまた何回か来日して日本で世界初演作品を披露するなど大いに人気を博した。

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カルロス・サウラ監督

2010年に制作された『フラメンコ・フラメンコ』では、フラメンコの生きの良い新しい世代が続々登場している。サウラ監督の『イベリア 魂のフラメンコ』で踊って日本でも人気の高いサラ・バラスと、来日公演の鮮烈な舞台で人気を博したエバ・ジェルバブエナ、やはり来日公演で観客を沸かせ、フラメンコの血が脈打つファルキートを始め、エストレージャ・モンテ、ミゲル・ポペダ、イスラエル・ガルバン、ニーニャ・パストーリなどの新世代がサウラ演出による見事な舞台を披露。そして彼らを支えるようにパコ・デ・ルシア、マロノ・サンルーカ、ホセ・メルセーといったマエストロが出演して、フラメンコ芸術の粋をみせる。
意欲溢れる清新な舞台から爛熟した香しい美を輝かす舞台、そして心の琴線に触れる枯淡の境地を表す舞台など、フラメンコの様々の峰を巡る素晴らしい全21景だ。この美しいスペインの旅を、ベルトリッチ監督とのコンビで『暗殺のオペラ』『暗殺の森』『1900年』を撮り、コッポラ監督の『地獄の黙示録』、ウォーレン・ベイティ監督『レッズ』、ベルトリッチ監督の『ラスト・エンペラー』でアカデミー撮影賞を3回受賞しているヴィットリオ・ストラーロが撮影監督として、重厚でめくるめく光と色彩の饗宴ともいうべき映像に収めている。
とりわけ印象深い舞台といえば、真紅の深い色のスカートを大きな波のように操ってサラ・バラスが踊った「我が娘 サリータに」。研ぎ澄まされた身体が鋭く切り裂くようなサパテアードの響きとともに、情感が全身を嵐のように駆けめぐっているバイレだった。
2011年のプレミオ・ナシオナル受賞者で小島章司にも作品を提供したことのある名振付家、ハビエル・ラトーレが振付けた「時」。スペインの赤の衣裳を纏って、絵画が林立する立体的な背景に群舞を踊っているバイラオーラは、ラトーレの門下生だそうだ。さすがに鋭い切れ味を感じさせる迫力だ。
そしてミゲル・ポベダのカンテにエバ・ジェルバブエナがバイレで応える「子守歌とコーヒー」。子守歌だが、「さっきの目はカミナリそのもの・・・」といった歌詞にただならぬ恋の情念が絡みついているようだ。サウラ監督はこの一景を土砂降りの雨に中に展開している。ポベダの影から姿を現して踊り、再びポベダの後ろに姿を消すまで、エバの黒髪を滴る水滴に心の深い叫びが込められていて観客の胸に激しく迫ってくる。フラメンコの神髄を浮かび上がらせるかのような見事な演出だった。

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『フラメンコ・フラメンコ』
 監督・脚本:カルロス・サウラ
撮影監督:ヴィットリオ・ストラーロ
音楽:イシドロ・ムニョス
出演:サラ・バラス、パコ・デ・ルシア、マノロ・サンルーカル、ホセ・メルセー、ミゲル・ポベダ、エストレージャ・モレンテ、イスラエル・ガルバン、エバ・ジェルバブエナ、ファルキート、ニーニャ・パストーリ ほか
配給:ショウゲート                   
(2010年/スペイン映画/カラー/1:1.85/ドルビー・デジタル5.1ch/101分)
 オフィシャルサイト:www.flamenco-flamenco.com
 2012年2月11日(土)より、Bunkamura ル・シネマほか全国順次ロードショー