(荒部 好)

『今日と明日の間で』

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ダンサー首藤康之の現在を描いた映画『今日と明日の間で』が間もなく公開される。
シディ・ラルビ・シェルカウイとの『アポクリフ』小野寺修二との『空白に落ちた男』中村恩恵との『時の庭』などのコラボレーション作品、そして首藤が初めて振付けた『くるみ割り人形』の舞台を映像で追ったドキュメンタリー映画だ。
オープニングでは、この映画のために中村恩恵が首藤康之に振付けた映像用のソロ『Between Today and Tomorrow』が踊られる。テーマ音楽は首藤の希望による椎名林檎による新曲だ。むろん、間もなく40歳を迎える首藤のダンサーとしての日常の訓練の姿も捉えている。カメラは冒頭から冬の朝、人体の骨格標本が立つ彼のスタジオで細心の注意を払いながら、入念に身体のメンテナンスに集中する首藤に密着する。完璧にシェイプアップされた身体をゆっくりと時間をかけてほぐしていくのだが、そこには極めて厳格で高度な身体性への希求があって、毛一筋ほどの狂いを許さないという決意があると思われる。特に骨を意識するという自身の身体への厳しい認識には、思わず知らず痛ましさまで感じさせられてしまう。
 

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今回の映画に登場するそれぞれのダンス作品と首藤の関わりについては、シェルカウイ、小野寺修二、中村恩恵が本番の一部の映像ともに語り、東京バレエ団時代にパートナーを組んだ斎藤友佳理が「首藤論」を語って、”不屈”のダンサー首藤康之の実像が次第にくっきりと浮かび上がってくる。
さらに故郷に戻って、彼が初めてバレエと出会った笠木バレエ団に『くるみ割り人形』を、天真爛漫、無心にバレエを没頭する生徒たちに振付ける首藤の姿を見ることができる。そして彼は、初めて劇場という魔法の空間に足を踏み入れた幼い日に想いを馳せる。すると『くるみ割り人形』のおもちゃの兵隊や子ネズミを熱心にリハーサルする子どもたちの瞳の輝きと同じ光りが、インターナショナルの舞台で活躍するダンサー首藤のそれにも宿っているのが分かった。

『今日と明日の間で』
監督/小林潤子
出演/中村恩恵、斎藤友佳理、小野寺修二、シディ・ラルビ・シェルカウイ
©2011スタイルジャム
2012年1月7日〜1月29日 東京写真美術館ホール
2012年1月7日〜2月3日 銀座テアトル ほか全国にてプレミアムロードショー