(荒部 好)

『レオニー』

製作・脚本・監督/松井久子
原案/ドウス昌代『イサム・ノグチ』
出演/エミリー・モーティマー、中村獅童、原田美枝子、竹下景子、勅使川原三郎
1011cinema_main.jpg

マーサ・グラハムの『アパラチアの春』『迷宮への使者』『夜の旅』『ジュディス』ほか、多くの作品の舞台装置を創ったイサム・ノグチの母、レオニー・ギルモアの生涯を描いた映画。
20世紀初頭、文学の道に進む希望を持っていたレオニーは、ニュ−ヨークで日本人の詩人、野口米次郎と出会う。二人は愛し合うようになって、レオニーはイサムを妊るが、米次郎は日本に帰国してしまう。シングルマザーとなったレオニーはカリフォルニアの貧しい母の元に身を寄せて糊口を凌ぐ。やがて米次郎からの便りにも心動かされて、ついには幼子を抱えて日本に渡ることを決意する。
これは今からおよそ100年前のこと。米次郎には日本人の妻がいることなど、文化や習慣、考え方の日本とアメリカの彼我の違いはレオニーの想像を絶するものだった・・・。
そしてそこから、国際的にも激動期を迎えて無慈悲な差別も横行する中で、イサム・ノグチを世界的な彫刻家に育てていく、レオニーの波瀾に富んだ人生が展開していく。

レオニーを演ずるエミリー・モーティマーは、シナリオを読んで「どうしても監督に会いたい」と言い、彼女に会った監督は「レオニー役はこの人しかいない」と確信した、という。さすがに見事。全身から発散するオーラが100年の時空を越えて完璧なレオニー・ギルモアを創り上げた。特に歳を重ねてからが素晴らしい。イサムの妹アイリスに「私の父親は誰なの」と詰め寄られ、決して名を明かさずに耐えるモーティマーの入魂の演技には大いに感動し、しばらく落涙が止まらなかった。
勅使川原三郎はイサム・ノグチの心を表す彫刻家として、黙々と鑿をふるう役どころだった。
『ユキエ』や『折り梅』で評価の高い松井久子監督の演出は、端正でゆるぎない。レオニーの生涯の終わるまで、きっちりと納得のゆく演出を行って完成させている。

1011cinema01.jpg 1011cinema02.jpg

『レオニー』
2010年11月20日(土) 角川シネマ新宿他 全国ロードショー
配給:角川映画 ©レオニーパートナーズ合同会社