(荒部 好/Photo:(C) López-Li Films 2009)

『ベジャール、そしてバレエはつづく』

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最近、べジャール、ピナ・バウシュ、カニングハムなど20世紀のアートシーンに影響を与えた偉大な振付家が次々とその人生を終えている。それぞれ継承者が決まっていたりまったく突然だったりそのケースはじつに様々なのだが、その芸術的遺産をどのように継承するのか、という問題に関心が集っている。
クラシック・バレエの歴史のあるカンパニーの場合は、ある程度は継承の方法が確立されているのだが、一代で、大きな芸術的成功を収めた多くの創作をなし、そのためのメソッドからシステムまでを確立してカンパニーを運営していた舞踊家の遺産を継承するということは、並大抵の努力で成功させられるものではない。

べジャール・バレエを継承するジル・ロマンも、その運命的な重荷を背負わざるを得なくなった一人である。ジル・ロマンは、そのためには彼自身が必ず創作を行うこと、という約束もべジャールと交わしていた。さらにジル・ロマンは、べジャールの創作により20世紀のダンスに絶大な影響を与えたジョルジュ・ドンという存在をも継承する立場にあった。
 

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『べジャール、そしてバレエはつづく』は、そうした重荷と足かせを負わされたジル・ロマンが、さらに経済的な問題と師を失ったダンサーたちの動揺を抱えながらも、生前のベジャールとの約束を律儀に果たすべく新作の制作に苦闘する姿を追った映画である。
監督はアランチャ・アギーレ。シュルリアリスム映画の巨匠、ルイス・ブニュエルに関心を持ち、ペドロ・アルモドバルやカルロス・サウラ監督のアシスタントを務めたことがあり、若き日にはべジャールのスクール、ルードラ(ムードラだと思うのだけど)に在籍したこともあるという。

むろん、ジル・ロマンの闘いは痛々しい感触を伴って伝わってくるのだが、そのほかの貴重なダンスシーンや生々しいリハーサル、ダンサーの怪我との対応など通常のカンパニーが抱える問題が、より切羽詰って見えてくる。そしてやはり、べジャールという偉大な存在を失ったダンサーたちが、その事実をどのように受け止め、どのように立ち上がろうとするのか、が多くのダンサーたちの口から直接語られていることが、この映画をじつに貴重なものものとしている、といえるだろう。

『ベジャール、そしてバレエはつづく』

  • 監督:アランチャ・アギーレ
  • 出演:ジル・ロマン、モーリス・べジャール・バレエ団
    ジョルジュ・ドン、ショナ・ミルク、ジャン=クリストフ・マイヨー、ブリジット・ルフェーブル、クロード・ベッシー、ミシェル・ガスカール
     
  • 12月下旬 Bunkamura ル・シネマ 他全国順次ロードショー
  • 配給:セテラ・インターナショナル/アルバトロス・フィルム
  • www.cetera.co.jp/bbl