(荒部 好)

『シャネルとストラヴィンスキー』

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シャネルが、ディアギレフに見いだされバレエ・リュスで名を成し世界的音楽家となったストラヴィンスキーを援助したことはよく知られている。
この映画『シャネルとストラヴィンスキー』は、20世紀の香水の代名詞的である<シャネルNo.5>と20世紀を代表する音楽『春の祭典』を創った二人が、どのように魅きよせられて恋に落ちたか、をドラマティックに描いている。

まずは、1913年のパリ。20世紀の芸術的事件となったバレエ・リュスが、 『春の祭典』シャンゼリゼ劇場で初演するシーン。ストラヴィンスキーが作曲した画期的な音楽に、ニジンスキーがこれまた画期的な振付を行った『春の祭典』がパリの人々にどのように受け止められるのか。終始、落ち着かないストラヴィンスキー。幕が開いて舞台が進むに連れて、<春の虐殺>とも呼ばれた一大スキャンダルに発展する。お互いに相手を傷つけ合う、ニジンスキーとストラヴィンスキー・・・・
しかし、その劇場に居合わせたシャネルは、20世紀の新しい芸術の誕生に大きな衝撃を受ける。
このシャンゼリゼ劇場の『春の祭典』初演のダンスは、07年にアヴィニヨン・フェスティバルでニジンスキーの『牧神の午後』を上演した、ドミニク・ブランが本格的に再現している。劇場にも多くのエキストラが投入されて、壮絶な事件をとらえられおり、最初のクライマックスとなっている。

 

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ココ・シャネルに扮するのは、現在、シャネルのミューズとしてファインジュエリーや時計のモデルとして活躍し、映画『NOVO/ノボ』にも出演し女優としても注目を集めるアナ・ムグラリス。冷ややかな美しさに秘められた情熱が、いわくいいがたい魅力を発散している。
そしてこの『シャネルとストラヴィンスキー』には、シャネルのデザイナー、カール・ラガーフェルドとシャネルのメゾンも協力しており、アーカイヴから貴重なコレクションを貸し出している。また、パリのカンボン通り31番地の有名なシャネルのアパルトマンの使用も許された。こうして、シャネルが築いたモードのイメージが忠実に今日の映画に反映されている。
ストラヴィンスキーには『007/カジノ・ロワイヤル』のデンマーク出身のマッツ・ミケルセン。他にディアギレフやニジンスキー、ミシア・セール、ロシアの亡命貴族ディミトリー大公などがそれぞれに扮装を凝らして雰囲気を出し、バレエ・リュスを囲む大物たちが登場しているのも興味深い。

『春の祭典』初演のスキャンダルから7年後、恋人、ボーイ・カペルの事故死で悲しみにくれるシャネルと、祖国の革命のために全財産を失ったストラヴィンスキーが、ミシア・セールとディアギレフを会して出会う。ストラヴィンスキーの才能に惚れ込んだシャネルは、作曲のために彼女が所有するヴィラに移り住むように提案する。喜んだストラヴィンスキーは、肺を病む妻と4人の子供たちとともに、シャネルと同じ屋根の下で暮らす道を選ぶ。
そしてふたりはたちまちのうちに激しい恋に落ちる・・・
その後のシャネルは、世界的に大ヒットした香水、No.5を作るなどの活躍をしながら、結婚という制度に女性の代表として一人で立ち向かうかのように、自身の生き方を確立していくことになる。
シャネルの映画や舞台多く公開されているが、この映画はシャネルとストラヴィンスキーの恋にポイントをしぼって描き、そこからシャネルという女性の魅力と偉大さを浮かび上がらせている。
 

『シャネルとストラヴィンスキー』COCO CHANEL & IGOR STRAVINSKY

  • 出演/マッツ・ミケルセン(ストラヴィンスキー)、アナ・ムグラリス(シャネル)、エレーネ・モロゾヴァ(カトリーヌ・ストラヴィンスキー)、ナターシャ・リンデンガー(ミシア・セール)、グリゴリイ・マヌロフ(ディアギレフ)
  • 監督/ヤン・クーネン
  • 脚本/クリス・グリーンハルジュ
  • 原作/クリス・グリーンハルジュ
  • 2009年/フランス/119分
     
  • 2010年お正月第2弾ロードショー シネスイッチ銀座、Bunkamura ル・シネマ