春一番が吹き荒れた跡には、懐かしい梅の香。自然の鮮やかな色彩とかぐわしい香りを楽しむ季節が到来しました。ダンスの舞台の色と香りも自然を映して輝いていますよ。
ラ・マンチャの騎士、ドン・キホーテ夢の旅
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| オブラスツォーワ、サレンコ |
NBAバレエ団が、セルゲイ・ヴィハレフの演出・再振付による『ドン・キホーテ』全幕を初演した。
ヴィハレフ版『ドン・キホーテ』は、ダンスの主役はキトリとバジルだが、物語の主役はドン・キホーテだ。
ラ・マンチャに住む騎士道マニアのドン・キホーテが、<美しい理想の姫君の危機を救い、熱烈に感謝される>、という妄想に耽って、ついには書斎から旅立つ・・・・。通常は、プロローグとしてお座なりに付け加えられることの多い、ドン・キホーテの旅立ちのシーンは、ヴィハレフ版では本編の1幕1場として念入りに演じられる。
次のバルセロナの広場のシーンでは、キトリとバジルの掛け合いや華やかな踊り、エスパーダとトレアドールたちのマントを使った力強い踊りなどが、舞台からあふれんばかりに繰り広げられる。
キトリはマリインスキー・バレエのソリスト、エフゲニー・オブラスツォーワがゲスト出演し、プリセツカヤやアナニアシヴィリなどロシアの名花が得意だった伸びやかな踊りを、やや小型だが、全身を使って魅力的に踊った。
バジルは、NBAバレエのプリンシパル、ヤロスラフ・サレンコ。ウクライナ出身でそうそうたるコンクール受賞歴を誇る生きのいい若手ダンサーは、マリインスキー・バレエのソリストをパートナーに得て、いっそう張り切った。古風な花模様の刺繍を施した黒いトレアドール・パンツ姿がよく似合う。切れのある踊りで会場を沸かせたが、ちょっとドタバタする感もなきにしもあらず。もう少し柔軟性が加われば完璧なのだが。
そして、ベラルーシ出身のマキシム・グージェレフのドン・キホーテが堂々と舞台を仕切る見事な役者ぶり。負けじと谷桃子バレエ団からゲスト出演した岩上純のサンチョ・パンサも、リズム感のある素敵な演技だった。
2幕は駆け落ちしたキトリとバジルが隠れている酒場のシーン。バジルの狂言自殺騒ぎがあり、ドン・キホーテの気高い騎士精神が、キトリとバジルが無事に結ばれるように作用する。
3幕では、元来妄想癖のあるドン・キホーテが人形劇に興奮して風車に突っ込み気絶。彼の夢のシーンが展開される。最初は、ドン・キホーテが巨大な蜘蛛の巣と戦う悪夢。つぎがキューピッドや森の女王、ドルシネア姫が戯れる良夢。
夢が覚めると場面は、キトリとバジルの祝宴となり、二人はドン・キホーテへの感謝の気持ちを表すために、豪華なグラン・パ・ド・ドゥを踊る。
そして、誇り高い騎士の理念を実現したドン・キホーテは、サンチョを従え、新たな冒険を求めて旅立つ、という物語である。
終始、ドン・キホーテが体験する物語を追いながら、キトリとバジルやスペインの色彩豊かな踊りを見せる。軽い皮肉と明るいユーモア、たっぷりの音楽で彩られた圧巻のダンス、おおらかなスペイン流の人間讃歌が底流に流れる、素敵な楽しい『ドン・キホーテ』だった。
ヴィハレフは『眠れる森の美女』『バヤデルカ』などを、革命以前のマリインスキー劇場で使用されていたプティパ版の舞踊譜に基づいて、一部意図的に改訂した部分を除きほぼ完全に復元したことで知られる。 この復元によってヴィハレフは、プティパのバレエがどれほど細やかに振付けられていたか、を知った。そして、その繊細な振付が旧ソ連の時代にどのように省略または変更されたか、をも理解した。
そしてこのヴィハレフ版は、若き日のスペイン滞在の印象に基づいてプティパが振付けた『ドン・キホーテ』を、プティパのバレエの精髄を知悉している彼が満を持して、演出・再振付を行ったものである。
(2月23日、ゆうぽうとホール)
日本バレエ協会公演、児玉克洋版『くるみ割り人形』と子供たち
2008都民芸術フェスティバル参加の日本バレエ協会公演の『くるみ割り人形』は、児玉克洋の再改訂振付・演出によるもの。
金平糖の精を西田佑子、金平糖の精の小姓を青木崇が踊る二日目を観た。(初日は島田衣子と法村圭緒)
『くるみ割り人形』は、チャイコフスキーの曲調からみれば子供のためのバレエなのは明らか。おばあさんおじいさん、お父さんお母さん、お姉さんお兄さん世代、よき友だちに囲まれて、クララは純粋で優しく、愛を信じ、フリッツは男の子のあきれるほどのエネルギーに満ちて、不自由無く幸せに暮らしている。だからドロッセルマイヤーの魔法に夢中になる子供たちは、活き活きと闊達でなければ『くるみ割り人形』はおもしろくはならない。
児玉版の『くるみ割り人形』は、物語は特別に変えていないが、子供たちが喜びそうな演出や意匠などに様々な工夫を凝らしている。
幕開きで雪だるまが歩き出したり、1幕の人形たちの踊りも凝っていて楽しいし、クララとくるみ割り人形の王子を2頭だてのトナカイのソリが送迎したり、お菓子の国の王様が大きなピエロだったり、シェフたちが次々とおいしそうなお菓子を運んできたり・・・・といった楽しい演出が至る所でなされていた。
また、2幕のディベルティスマンも衣裳や踊りを見やすく工夫していた。そしてこの2幕は、ドロッセルマイヤーがプレゼントしたクララの夢の世界だから、あまりリアルではなく、全体に儚くこしらえてあった。
西田と青木のグラン・パ・ド・ドゥは、なかなか見応えがあった。西田はテクニックも身体も安定感があって魅力的。青木も素晴らしい身体能力を垣間見せ、のびのびと踊っていた。
バレエ協会のダンサーたちが一堂に会して踊るのだから、種々の課題があるかもしれない。しかし、子供たちがじつにたくさん参加しており、にぎやかで楽しい舞台だった。この企画は、次代のバレエを担う才能へのアピールを心がけたもので、良い試みだと思う。
ただやはり、バレエ学校のような一貫した教育機関で鍛えられた、世代別のダンサーが揃っていれば、さらに優れた公演になったとも思えた。
(2月21日、ゆうぽうとホール)
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| 西田佑子、青木崇 |
西田佑子、青木崇 |
『くるみ割り人形』 |
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