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関口紘一 
[2016.09.20]

ベルギー発の川端康成原作のオペラ『眠れる美女』を踊る伊藤郁女によるパフォーマンス

ベルギーで制作された川端康成の同名の小説を原作とするオペラ『眠れる美女〜House of the Sleeping Beauties』が、東京文化会館開館55周年の記念公演として上演される。この作品はオーケストラ、俳優2人(老人役と館の女主人役)、歌手2人(バリトンとソプラノ)、コーラス4人(眠れる美女たち)とダンサー1人(眠れる美女)が出演する。
この舞台では、3夜にわたって4人の眠れる美女が登場するが、それをすべて踊るのは、ヨーロツパを拠点に活躍する舞踊家、伊藤郁女。振付は今をときめく、シディ・ラルビ・シェルカウイ

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この夏、伊藤は日本滞在中のに公募したダンサーたちと、彼女が『眠れる美女』を踊ることを踏まえたワークショップを行った。その成果として参加した5人(穴山香菜、久保有紗、引間文佳、平間文朗、牟田のどか)ダンサーたちによるスタジオ・パフォーマンスを披露した。参加したダンサーたちには、眠っている自分を探して「自分を踊る」ことを求め、自分のタブーを明らかにしてそれを乗り越えることを試みてもらった、という。5人のダンサーがそれぞれに「戦争はなぜなくならないんだ!」「下半身でぶ!」「なぜ胸がおおきいんだ!」などと叫びながら踊る。コンプレックスを乗り越えるピュアーなエネルギーが放出されるパフォーマンスだった。
終演後は、フロアに座り込んだ伊藤郁女と5人のダンサーが、ジャーナリストたちの質疑応じた。

オペラ『眠れる美女』は、ノーベル賞作家川端康成の同名の中篇小説を原作として、ベルギーで制作され、すでに2009年にベルギー、ブリュッセルの王立モネ劇場で初演された。その後も再演されている。今回は、日本/ベルギー友好150周年を記念して、東京で、日本人俳優を起用して上演する。
ちょっと変わったストーリーで、すでに「男でなくなった」客が、薬で眠る処女と一夜を過ごすことができるが触ることは許されないという秘密の館が舞台。そこを訪れる客と女主人、3夜4人(最後の夜は2人)の「眠れる美女」と過ごす、特別な悦楽の様子が描かれる。
客の老人に扮する俳優は長塚京三、バリトンはオマール・エイブラム、館の女主人は原田美枝子、ソプラノはカトリン・バルツ、眠れる美女はダンサーの伊藤郁女、コーラスは原千裕、林よう子、吉村恵、塩崎めぐみ、というキャスト。
伊藤によると、彼女はその4人の美女を宙づりのような状態で演ずる、という。眠れる美女の微妙な反応、もちろん意識下から現れてくるもので、客の老人の意識とも関わり、眠っている身体に現れてくる表現である。これをオペラで、つまり、身体と楽曲と歌を別々に表現して共振させようという、なかなかチャレンジングな試みで、大いに楽しみである。

若き日の川端康成は、舞踊に深く関わっていて、自らが積極的に援助して世界に通用するダンサーを育てようと試みたり、舞踊家、崔承喜を支援したり、舞踊家の母子を主人公にした小説『舞姫』などを書いたことでも知られる。川端康成が半世紀以上前に、この作品に籠めたイメージが21世紀のベルギーで甦ったということは、誠に興味深いことである。

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オペラ『眠れる美女〜House of the Sleeping Beauties』日本初演

●2016年12月10日(土)・11日(日)15:00開演
●東京文化会館 大ホール
http://www.t-bunka.jp/sponsership/spo_161210_11.html