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大村真理子(マダム・フィガロ・ジャポン パリ支局長) 
[2015.05.27]

オーレリー・デュポンのアデュー公演が華やかに行われ、二人の子息も正装して登場した

5月18日、オーレリー・デュポンのアデュー公演『マノン』がガルニエ宮にて開催された。この晩はフランス国内の映画館でも公演の生中継があったため、劇場後方にはその中継車、さらに彼女のアデューをニュース番組で伝えるテレビ局の車が複数取り囲み、話題の大きさを物語っていた。雑誌、新聞・・・この半年近く、いったいどれだけのメディアが彼女を取り上げたことだろう。

1505Dupont02-549.jpg バンジャマン・ペッシュと photo Michel Lidvac

このアデュー公演に先立つ4月30日、バスチーユのスタジオでトークショーが開催された。約1時間に渡ってジャーナリストのアニエス・イズリンヌの質問にオーレリーが答えるという有料イヴェント。学校時代、エトワール任命、ピナ・バウシュとの出会いなど内容はさまざまだが、どの質問にもユーモアを交え、かつ絶妙な間の取り方で彼女は淀みなく話し、観客をそらさない。アデュー公演については、『椿姫』を希望したものの、アニエス・ルテステュが2年前に同じ演目を選んだので、『マノン』となったのだと明かした。そのパートナーにはエルヴェ・モローを指名。しかし、2月3日の『Together Alone』の公演前のリハーサルで彼が怪我をしたため、その夢を叶えることができなくなった・・・と語る彼女は、いかにも残念そうだった。演劇面、音楽性、すべての面で最高のパートナーであるエルヴェに替わる相手として、オペラ座のエトワールではなく、ガラ公演で一緒に何度も踊っているロベルト・ボッレという意表を突く選択をし、これもまた彼女のアデュー公演への盛り上がりをかきたてる要素となったのは間違いない。

5月6日、8日、12日、14日とオーレリーはボッレと『マノン』を踊り、このアデュー公演は二人の5回目の晩である。第一幕で彼女が舞台に登場するや、観客から拍手が沸き起こり、特別な晩という興奮が会場には満ちたのだが、この晩舞台に立っていたダンサーたちによると、彼女自身は良い意味で “いつも通り” だったそうだ。童顔というわけでもない彼女が幼女のようなあどけなさをみせたかと思えば、成熟した女性の官能を感じさせ・・・。ごく自然で嫌味のない演技が見事である。第一配役のレティシア・ピュジョルによる愛らしくも哀れなマノンも魅力的だったが、オーレリーによる勝気な小悪魔マノンも多いに見応えがある。ロベルト・ボッレの頼もしいサポートと、それに身を任せる彼女。ジュール・マスネの美しい旋律に乗って流れるようなパ・ド・ドゥは、ひたすら美しい。第一幕の寝室のパ・ド・ドゥの最後、通常より少々長めに舞台上に横たわり抱き合う二人には拍手が鳴り止まず。この後でマノンがベッドに飛びこみをするシーンがあるのだが、一気に枕まで頭を至らせる完璧なダイブはオーレリーならでは。この晩もパーフェクトに決めて、会場の笑いを誘った。彼女のテクニックの素晴らしさは、今更語るまでもないだろう。この晩のレスコー役はステファン・ビュリオン、レスコーの愛人役はアリス・ルナヴァン、金持ち貴族GM役はバンジャマン・ペッシュ、そして牢の看守役はカール・パケット。舞台上にエトワールが5名揃った、なんともゴージャスな配役の公演だった。

1505Dupont01-229.jpg ロベルト・ボッレと photo Michel Lidvac

二幕、三幕と順調に進み、最後の沼地のパ・ド・ドゥの感動が会場を包み込み、公演は終了した。ボッレと共にカーテンコールに現れたオーレリーは早くも涙目で、総立ちとなった観客から大きな拍手が沸き起こった。映画館での中継用かセドリック・クラピッシュ監督によるドキュメンタリー用か、彼女の後ろにはぴったりとカメラマンが張りつき、舞台上から降り注ぐ大小の星型紙吹雪の中で観客に挨拶をするオーレリーの姿を追い続ける。
スニーカーにジャケットというモダーンな正装で舞台に現れた二人の息子(長男7歳、次男4歳)がママと手をつなぎ、一緒にお辞儀をする姿が実に微笑ましい。彼らが床の紙吹雪を集めては、ママにふりかけて・・といったアットホームなシーンには、拍手が盛り上がる。この晩本来ならデ・グリユゥを踊っているはずのエルヴェ・モローが大きな白の花束を抱えて、オーレリーを抱擁。かつてのパートーナーのマニュエル・ルグリもウィーンから駆けつけ・・・。アニエス・ルテステュ、レティシア・ピュジョル、ドロテ・ジルベール、アマンディーヌ・アルビッソン、ローラ・エケなどの姿も舞台上に認められた。

1505Dupont08.jpg photo Michel Lidvac

拍手が延々と続く中、オーレリーは舞台を抱きしめるように大きく腕を広げて舞台後方に引き込み、これを合図に25分のカーテン・コールは終了した。映画館でのライヴとの関係ゆえかもしれないが、延々と長引くことなく、すっきりとした潔い終わり方にはオーレリーらしさが感じられ、アデュー公演をより印象深いものとした感がある。

この後、彼女にはグラン・フォワイエでフルール・ペルラン文化大臣によって芸術文化勲章が授けられた。昨秋に就任したバンジャマン・ミルピエ芸術監督にとって、この晩は初アデュー公演体験となったわけだが、その彼の希望に応えオーレリーは来季よりメートル・ド・バレエとしてオペラ座での新しいキャリアをスタートすることになっている。この日ガルニエ宮内には、ブリジット・ルフェーヴル元芸術監督、エリザベット・プラテル学校長、それに先に引退したクリストフ・デュケンヌ、ステファン・ファヴォランなどのオペラ座関係者、振付家ピエール・ラコット、コメディーフランセーズの俳優ギヨーム・ガリエンヌ、女優サンドリーヌ・キベルラン、デザイナーのイザベル・マランとジェレミー・ドレフュス、TVキャスターのクレール・シャザル、エドゥワール・バラデュール元首相、LVMHグループのデルフィーヌ・アルノーといった著名人の姿が見受けられた。華やかなセレブリティ・エトワールのアデューにふさわしい宵だった。

1505Dupont03-210.jpg エルヴェ・モローと photo Michel Lidvac 1505Dupont06.jpg photo Michel Lidvac
1505Dupont04-45.jpg ボッレと photo Michel Lidvac 1505Dupont05-274.jpg ピエール・ラコットと photo Michel Lidvac
1505Dupont07.jpg photo Michel Lidvac 1505Dupont09.jpg photo Michel Lidvac
1505Dupont10.jpg photo Michel Lidvac 1505Dupont11.jpg photo Michel Lidvac
1505Dupont12.jpg photo Mariko Omura