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浦野芳子 
[2009.03.18]

プロフェッショナルな身体を問う、Noismの新作〜「ZONE」記者発表会

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 活動開始から6年目を迎えるNoismの新作は、国の劇場と地方の劇場の共同制作となる。
これは日本初の試みであり、同時に第8回朝日舞台芸術賞舞踊賞を受賞した直後でもあることから、各方面から注目されるのは必至。3月5日、りゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館で開催された新作「ZONE」記者発表会には、りゅーとぴあ支配人の鈴木栄子氏と、新国立劇場舞踊プロデューサーの望月辰夫氏、そして金森穣氏の三人が並んでの会見となった。

「ZONE」そのテーマの意味を、金森穣氏はこう話す。
「専門的身体の復権、その領域=ZONE、を追及したい。今日の日本で、レジデンシャルカンパニー(劇場専属の)という環境を持ち、ダンサーとしての専門的活動に集中する機会を与えられているのは、Noismだけだからです」。
専門的身体とは、“舞踊芸術の専門家として様々なことを経験し、どのような動きにも対応できるようになった「便利な」身体のことではなく、もっと狭義な、 決められた動きを、きわめて専門的レベルで(一流のレベルで)行うために必要な訓練を経た、その動きの為の専門的身体のこと”と、氏は記者発表のリリース の中で述べている。

専門的身体を極める。

確かに。現代は誰もが踊り、表現の自由という名のもとに誰もがプロを名乗ることができる。そうした状況に、かねてから苦言を呈していた金森氏だが、それを いよいよ具体的な実行に移そう、というのがどうやら「ZONE」なのだ。「はっきり言って、素人の身体が蔓延しているとも思う。ダンスには400年前に誕生したクラシックバレエという様式がある。もちろんそれがすべてだなどというわけではありませんが、ダンサーの基本トレーニングとして、クラシックのテクニック、そして古典的様式の教養は必要なのではないかと思っています」。そうだ。現代を生きるダンサーは、過去から連綿と続いてきた長い歴史を持つダンスが、未来へ向かう一つの通過点を生きているのである。その事実に対する責任と真摯な気持ちを、金森氏が日ごろからどれだけ意識しているのか、改めて感じな いわけにはいかなかった。「また今の日本では、舞台づくりに使われる時間が短く、したがって作品作りにばかり時間が割かれている。そうした状況ではダン サーが育ちにくい。ですから今回の作品では、踊りに磨きをかけることにたっぷり2ヶ月、時間をかけます。そうすることで踊りを磨き、研ぎ澄ましたいと思っています」。

今が、その「時期」。

同席した新国立劇場の望月氏のお話によると、この共同制作は満を持して、新国立劇場側から提案されたのだそうだ。金森氏は2000年と2002年の二回、 新国立劇場のために作品を提供しているが望月氏はそのときから、彼に高い将来性を感じていたという。「金森氏はNoismの活動を通して他所ではできないことを次々と実現し、また私たちの劇場もコンテンポラリー作品や新作プロジェクトの上演を積極的に重ねてきました。モノの売り買いではなく、製作過程から一緒にかかわる、まさに今が“その時期”であると、2年前に共同制作のオファーをいたしました」(望月氏)。「私たちも作品を創るたびに必ず東京では上演 してきました。ただ、それは箱として劇場を借り、お客さんに観てもらうということになります。(劇場専属の)レジデンシャルカンパニーとしてのNoism が、それをやる意味について、考えることは多々ありました。今回はただ箱を借りるのでなく共同制作です。Noism、ひいては新潟の文化を、誇りを持って国立の劇場に持っていくことになります。舞台芸術の歴史の中で、意義あるものにしたいと思っています」(金森氏)。

金森・井関両氏の踊りを観られるのが嬉しい!!

記者発表のあと、スタジオに場所を移して公開リハーサルが行われた。30分ほどのこの時間の中で、金森氏は作品の大きなふたつの柱を、かいつまんで見せてくれた。
ひとつは“古典の身体”。クラシック・バレエのテクニックをベースにした複雑なムーブメントが、バッハの無伴奏バイオリンに乗せてアカデミックに繰り広げられる。クラシックならではの厳格なポジション、優美なポール・ド・ブラ(腕の動き)、そしてジャンプ、ピルエット(回転)、男女のペアで行うリフトなど、多彩なテクニックがめまぐるしく盛り込まれている。そして、その背後に流れるバッハの音楽がいっそう、ダンサーたちの動きを俗世から離れたものに見せ ているようにも、感じられた。
もうひとつは“原初の身体”。音楽は一転して、土着的なリズムと色彩を帯び、ダンサーたちはさきほど見せた端正かつアカデミックな身体性は脱ぎ捨て、感情 の赴くがごとく、奔放なまでに手足を宙に放り出す。先の“古典の身体”が記号化可能な系譜を持つものであるならば、後者の“原初の身体”は記号化も記述化 も不可能な、この日この瞬間にだけ現われた壊れた身体だと、金森氏。きわめて本能的な“原初の身体”と、知性が作り上げた専門性の高い“古典(=アカデ ミック)の身体”が対比され舞台に上がるのが、どうやら「ZONE」らしい。ちなみに副題にある“陽炎 稲妻 水の月”は、慣用句から見つけ、気に入って 使ったものだそう。「見えるけれど、手にできないもの。それは舞台芸術における副題でもあると思い、使わせていただきました。決して三部構成というわけで はないので、そこんとこよろしくお願いいたします(笑)」(金森氏)。
さらに嬉しいニュース!!身体の専門性、をテーマに掲げた今回は、「Noism全員で臨まなければNoismの専門性を追求できないのではないか。そう思ったから私も、井関も、ダンサーとして踊ります」おかげで今筋肉痛がすごいんですけどね、と金森氏。昨年末の「NINA (ver.black)」で、ダンサーたちの驚くべきレベルアップを見せ付けたNoism。さらに時間をかけ、磨き上げる身体表現に出会うその日が、今から楽しみだ。

*同日行われた金森穣×三原康裕プレトークの模様はこちら

Noism09「ZONE~陽炎 稲妻 水の月」 >>>新潟:4/5(日)前売開始  東京:4/19(日)前売開始

●演出・振付=金森穣、空間=田根剛、衣裳=三原康裕
●出演=Noism09

<新潟>
●6/5(金)~7(日)
●りゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館 劇場
●一般5,000円/学生2,500円(全席指定・税込)
●開演時間=5日19:00、6日17:00、7日17:00
●お問い合わせ=りゅーとぴあチケット専用ダイヤル 025-224-5521
http://www.ryutopia.or.jp

<東京>
●6/17(水)~21(日)
●新国立劇場 小劇場
●A席5,250円/B席3,150円(全席指定・税込)
●開演時間=17・18・19日19:00、20・21日15:00
●お問い合わせ=新国立劇場ボックスオフィス 03-5352-9999
http://www.nntt.jac.go.jp/dance/