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[2017.10. 7]

熊川哲也 新制作『クレオパトラ』世界初演の幕が開いた

熊川哲也 Kバレエカンパニーの『クレオパトラ』がついに開幕した。
世界初演となる本作は、芸術監督の熊川哲也が演出、振付、台本とすべてを手がけた新作。これまでにも数々のプロダクションを成功させてきた熊川だが、原作も音楽も存在しない全幕作品を手がけるのは初めてのこと。紀元前のエジプトとローマを股にかけた壮大な史実を紐解いてオリジナルの全2幕のグランド・バレエに仕立てた。舞台美術にはメトロポリタン歌劇場やミラノ・スカラ座などで活躍するダニエル・オストリングを起用。音楽はデンマークの大作曲家カール・ニールセン。オリジナル・キャストとしてタイトルロールを踊るのは中村祥子。
初日の前日に「第1幕 第1場-A エジプト〜王宮の居間〜」のシーンが公開され、その後の会見で熊川哲也が記者からの質疑に答えた。

1710cleopatra01.jpg 公開稽古より 中村祥子(中央)
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会見場にやってきた熊川は、「晴れて世界初演となる『クレオパトラ』をご披露することとなりました。まあ大変な作品でした。まず音楽もないところから脚本も考え、紀元前の東洋の美しい歴史的人物を日本人が上演するというのは、大層なことをやってしまったなというのが素直な感想ですが、非常に満足できる作品ができました」と満面の笑みを浮かべた。
クレオパトラのヒロイン像については「特別視はしていませんが、今回の『クレオパトラ』は世界初演ということで気負いもありますし、クレオパトラに対する愛情は少し芽生えたかなと思います。今はオデット以上にクレオパトラに魅力を感じています。悪女かどうかは分かりませんが、国家を背負う女王として生まれ、避けられない運命を背負った女性の賢さや美しさ、そういったものをうまく表現できればと思います。ただ最終的には人間ですから、そこには少なくとも情であったり愛であったりが存在しなくてはいけない。愛されるべき、魅了されるべき女性に仕上がったのではないかと思います。
(蛇にかまれて死んだことについては)後世に語り継がれている逸話のひとつでもありますから念頭には置いています。実際に蛇にかまれる場面は使っていませんが、彼女はエジプトの神である蛇の化身で、彼女自身が毒を持っている女性であればどういう形で死んでも毒で死んだといえる、そういった解釈にしました」と語った。
本作を創作した理由については「カンパニーを立ち上げて18年。財産となる作品やレパートリーは蓄えていかなくてはいけない、作っていかなくてはいけないと、古典芸術を背負う人間は常に念頭にあります。オペラや音楽と違ってバレエは古典と言えるものは数少ないですから、継承していく上では新しいものにチャレンジしなくてはいけないと、世界各国の芸術監督たちはこぞってやっています。国立バレエ団が多くの予算の元にやっているところもあれば、小さなバレエ団がやっているところもありますから、Kバレエ カンパニーとして世界に発信できるレベルのものを、この日本からできるということは誇りに思います」と説明した。

1710cleopatra06.jpg クレオパトラ/中村祥子、プトレマイオス/山本雅也
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世界観については「エジプトの豪華絢爛さを表現するのにどういう手法を使えばいいのか、というのはよく考えました。『カルメン』の時にコラボレートさせてもらったダニエル・オストリング、彼の作り出す世界観というのはもしかしたらエジプトはこういう世界だったんじゃないかと思わせるような、ひとつの本当の芸術が舞台で作られていると思います。今日観ていただいたのは一片ですけれども、これから更にナイル川を渡る船に乗ったり、オクタヴィアヌスがアントニウスを討つ鬼気迫るバトルフィールドなど、これはちょっと興奮せざるをえないですね」、振付については「エジプトの民族舞踊的なものにも目を通しましたが、バレエの舞台とはわけが違うので、そこはやはり培ったセンスと先輩方にお教えいただいたマナーなどをすべて集約して一つのピースにしました」と述べた。

ほぼゼロからのスタートだった今回のプロダクションについて聞かれると、「全部大変!ただ音楽がシンプルに耳に入ってくるものは意外と振付は簡単なんです。メロディラインがしっかりとしているので、あとはクラシックの形式美をまず作った上で、今までにないような手の動きを作ってみたらエジプト化してきた、といった手法でやってきました。ただ(音楽の)ニールセンさんも色々悩んでた部分もあったのではないかと思うのですが、突然カウントが変化したりと、そこがすごく難しかったです。
クレオパトラがシーザーを誘惑する場面は音楽が4つのレイヤーに重なっていて、本当なら4人の指揮者が必要ですが、それぞれのタイミングで入ってきてガッチャガチャになるんです。それってレコーディングだと成立するけど舞台じゃ尺が足りない。それをオーケストラチームがしっかり知恵を絞ってやっています。
衣装に関しては、蛇の化身というところで人間的な豪華絢爛なクレオパトラから蛇の片鱗を見せるにあたり、仕掛けも必要なったり。あとは素材感がエリザベス・テイラーの映画の様なものでは舞台で踊れませんし、かといって軽いものだとチープに見えるかもしれないし・・・、と悩み、もう朝から晩まで常に仕事していました。ほめてください(笑)」と苦労を語り、「幕が開く前から降りた後まで、全てにおいて隅々まで自分の潔癖症なところが反映されていると思う。完璧とは何かというものをお見せしたい」と自信をみせた。

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熊川芸術監督が自信を持って発表する『クレオパトラ』世界初演は、10月29日まで、東京・名古屋・大阪で上演される。

Tetsuya Kumakawa K-BALLET COMPANY Autumn Tour2017『クレオパトラ』

2017年10月6日〜10月29日
東京公演:Bunkamura オーチャードホール/東京文化会館 大ホール
名古屋公演:愛知県芸術劇場 大ホール
大阪公演:フェスティバルホール
▼公演情報
http://www.chacott-jp.com/magazine/information/stageinfo1/2017cleopatra.html