関口 紘一
[2011.01. 7]

厳しい戦場に花開いた恋----大空祐飛、野々すみ花の『誰がために鐘は鳴る』

110101sora01.jpg

東京宝塚劇場のお正月公演『誰がために鐘は鳴る』のゲネプロが、元旦の開幕前に行われた。
お正月の晴れ着姿が行き交う有楽町界隈から、東京宝塚劇場のロビーに入ると、過去10年間の宝塚歌劇団の東京劇場公演のパネルがずらり。さらに真琴つばさ、和央ようか、貴城けい、大和悠河といったこの劇場を彩ったスターたちの写真とプロフィール、手形も展示されて、いっそう華やいだ雰囲気があふれている。今年2011年、東京宝塚劇場はリニューアル10周年を迎えた。
まずは新年の口上で幕が開いた。金屏風を背景に、宙組組長の寿つかさ、主演の大空祐飛、野々すみ花が颯爽とした和服姿で口上。今年、97周年を迎えた宝塚歌劇の抱負を語り、百周年に向けての決意を述べた。

『誰がために鐘は鳴る』は、1936年と39年に戦われた悲惨なスペインの内戦を舞台にしたアーネスト・ヘミングウエイの原作に基づいたもの。
ファシストのフランコ軍と戦う共和国軍に義勇兵として参加したアメリカの青年ロバート・ジョーダンと、両親をファシスト軍に殺されて辱しめを受けた田舎町の町長の娘マリアの恋の悲劇を描いている。
物語は、敵の補給路を断つため橋を爆破するという過酷な任務を遂行するゲリラ部隊で展開する。責任を一身に負うジョーダンは極限状況の中で次第に追い込まれ、厳しい決断に迫られる。しかしそうした中で、マリアとの純粋な愛が美しく育っていく様子が実に感動的だ。全身全霊を賭けて、重要な任務と信じて橋を爆破したことが、最後の最後には戦局の変化により無意味になるという、切実でやりきれないような反戦の訴えも非常に効果的に組み込まれている。
ロバート・ジョーダンをさっそうと演じた大空祐飛の脚の長い雄姿には、ただ惚れ惚れ。ファシストに断髪されたという設定のショートヘアで熱演した野々すみ花も美しく、とても優しかった。橋を爆破するために最も重要な雷管を失って追い詰められ、危うく我を失いかけたジョーダンに、マリアが熱いコーヒーをそっと差し出すシーンは絶妙な演出だった。マリアの深い愛情を表し、その粗末な戦場のカップをゆっくりと玩味して自分を取り戻した大空の演技にも、しばし感心させられた。ありがちなアイディアといえばそれまでだが、ドラマのひとつのクライマックスでじつにタイミング良く演技者と演出のスタッフとの気持が一致して、この舞台全体を成功へ導いた一時だったと思う。

東京宝塚劇場がリニューアルして10周年を迎え、大空は、リニューアルオープンの時は、和装して劇場前で挨拶したことを思い出しながら、「まさかあの時は、10年後に同じ劇場で主演するとは思っても見なかった」、と閉幕後の囲み取材で語った。
また、32年前のこの作品の初演は鳳蘭と遥くららが主演したが、今回は新曲もあるし、宝塚の魅力がぎっしり詰まった作品だと思う。ジョーダンは理想的な男性だし、公演で演じるたびに新しい発見がある。さらにお客様の心を揺さぶるようなものをみせていきたい、と大空はどこまでも意欲的。
野々すみ花は「初演の映像をみて感動した。誰が死ぬのか分からないという厳しい中でマリア演じて、さらに自分を深めていきたい。宙組のみんなに支えられてきたので感謝の気持を忘れずに全力で取り組みたい」と2011年の最初の舞台に迎えて意気込みを語った。

110101sora02.jpg 110101sora03.jpg

写真:(C)宝塚歌劇団
※画像をクリックすると、大きな写真をご覧いただけます。

1213sora-bell.jpg

宝塚歌劇宙組公演
NTT東日本・NTT西日本フレッツシアター
ミュージカル『誰がために鐘は鳴る』

Based on the novel FOR WHOM THE BELL TOLLS by Earnest Hemingway
Copyright © The Hemingway Foreign Rights Trust
Japanese musical performance rights arranged with
The Hemingway Foreign Rights Trust
through Japan UNI Agency, Inc., Tokyo

<東京>
●1/30(日)まで
●東京宝塚劇場
●SS席11,000円/S席8,500円/A席5,500円/B席3,500円

http://kageki.hankyu.co.jp/revue/202/index.shtml