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濱田 琴子 
[2015.11. 9]

ユーゴ・マルシャンがプルミエ・ダンスールに昇級を果たした、パリ・オペラ座男子の昇級コンクール

11月6日、男子コール・ド・バレエの昇級コンクールが開催された。今年女子の部ではコリフェ5席、スジェ4席、プルミエール2席と例年に比べ空席数が多かったので、参加者のモティベーションも上がっていたことだろう。それに比べて男子はコリフェ2席、スジェ1席、プルミエ1席という狭き門だ(プルミエの1席は、昨年のコンクールでの票割れゆえに昇級者なしという結果による持ち越し)。それゆえか参加者の合計人数は女子が38名なのに対し、男子は不参加を決めたダンサー、直前で欠場したダンサーもいたため23名と少なかった。
課題曲はカドリーユが『眠れる森の美女』(ヌレエフ)の第2幕より王子のヴァリエーション、コリフェが『ラ・シルフィード』(ラコット)の第1幕よりジェームズのヴァリエーション、そしてスジェは『シルヴィア・パ・ド・ドゥ』(バランシン)。

カドリーユの今年の課題曲だったヌレエフの『眠れる森の美女』は、かつてはコリフェの課題曲だったこともあるというから難儀である。それを会場で見ていた先輩ダンサーたちに「パーフェクト!」と言わしめる踊りで昇級を決めたのは、昨年入団したポール・マルクだ。彼は自由曲にもヌレエフ作品(『白鳥の湖』第三幕より王子のヴァリエーション)を選び、エレガンス溢れるフレンチ・スタイルの見本を見せた。オペラ座のバレエ学校で6年学んだ彼。プラテル校長もこの結果にはさぞ鼻が高いことだろう。2位で上がったパブロ・ルガサの出来栄えも、課題曲も自由曲(『ラ・シルフィード』第二幕よりジェームズのヴァリエーション)ともに、ポール・マルクに匹敵する素晴らしさだった。なおこの2席に対し、コンクールに参加したカドリーユは9名。その中で3位のタケル・コストと6位のアントニオ・コンフォルティのそれぞれの自由曲でのパフォーマンスを賛賞する声も少なくない。さて、4位のアクセル・マリアーノもポール・マルクと同じく、昨年の入団者である。コンクールに参加しなかった年長カドリーユたち、うかうかしてられないのでは? 最近オペラ座のサイトはカンパニー全員の経歴と写真がのっているので、新人ダンサーたちに興味があったら見てみるといいだろう。
https://www.operadeparis.fr/artistes/ballet/ballet-compagnie

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ポール・マルク photos/Sébastien Mathé/ Opéra national de Paris

 
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パブロ・ルガサ photos/Sébastien Mathé/ Opéra national de Paris

 

2015POB_CONCOURS_18.jpg ジェレミー・ルー・ケール
photo/Sébastien Mathé/ Opéra national de Paris

コリフェ6名が争ったスジェの1席を得たのは、ジェレミー・ルー・ケールだった。昨年のコンクールでは空席2席を得てユーゴ・マルシャン、ジェルマン・ルーヴェが上がり、惜しくも3位だったため昇級できなかったのがジェレミー・ルーである。したがって、今年カドリーユに上がったアントワーヌ・キルシェールとフローラン・メラックも手ごわい相手とはいえ、ジェレミー・ルーの昇級については下馬評も高かった。そしてその通りの結果に。課題曲ではラコット作品だけに繊細な足さばきが要求されるのだが彼の踊りでは余裕さえも感じられ、軸足の強さをみせる美しいパフォーマンス。さらに自由曲の『エスメラルダ』(マリウス・プティパ)のパ・ド・ドゥからのヴァリエーションは、ダンスのプロたちも唸る完璧さ。なお、活躍は他の男性ダンサーに比べて少なかったとはいえ、彼もまたミルピエ監督による『Clear, Loud, Bright, Forward』の創作に参加したダンサーの一人である。2位となったユーゴ・ヴィリオッテォは自由曲の『アパルトマン』(マッツ・エク)で、演劇的な面でも優れたところを見せ、今後のコンテンポラリー作品における彼の重要さを芸術監督にアピールする良い機会を得たのではないだろうか。また、今年の自由曲はクラシック作品の中でも、下肢がしっかりした彼にとっては威力を発揮できる良い演目だった。

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ジェレミー・ルー・ケール photos/Sébastien Mathé/ Opéra national de Paris

 

2015POB_CONCOURS_21.jpg ユーゴ・マルシャン
photo/Sébastien Mathé/ Opéra national de Paris

スジェからプルミエへ。この2年間ジェルマン・ルーヴェとユーゴ・マルシャンが共にコリフェ、スジェへと上がっているため、今回1席を得るのは二人のどちらが? というように見ていたバレエファンもいたようだが、ジェルマンは3位にとどまった。テクニック的に難易度の高い課題曲では、乱れのない美しい回転と着地、指先からつま先まで行きどどいた丁寧さ、そしてエレガンスの極みをみせた彼。さらに自由曲ではロビンズの『アザー・ダンシーズ』で抒情性たっぷりに踊った。次回の健闘を祈ろう。2位のファビアン・レヴィヨンは自由曲(『ラ・シルフィード』第二幕よりジェームズのヴァリエーション)ではテクニック面の素晴らしさはもちろんだが、彼から発せられる踊る喜びが見る者には快適だった。もう少し配役に恵まれるといいのだが・・。
昇級を決めたユーゴ・マルシャン。『くるみ割り人形』『マノン』『感覚の解剖学』『Clear, Loud, Bright, Forward』など舞台での活躍が著しく、先月はカルポー賞の受賞もあり、昨年末からうれしいこと続きといえよう。長身でしっかりした体躯の彼なので、ソー、回転などどれもダイナミックである。このコンクールの自由曲(『ダンシーズ・アット・ア・ギャザリング』のブラウンボーイのヴァリエーション)では、舞台空間を力強さのみならず繊細なポエジーで満たしてダンサーとしての成熟ぶりを証明した。この自由曲を見れば、現芸術監督のお気に入りダンサーの一人とされる彼ではあるが、昇級に異議を唱える人はいないだろう。
コンクールに参加したスジェは9名。プログラムに名はあるもののヤニック・ビタンクールは欠場し、アリステール・マダンは課題曲の途中で右のふくらはぎを痛めて退場するという無念な結果となってしまった。

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ユーゴ・マルシャン photos/Sébastien Mathé/ Opéra national de Paris

コンクールは女子・男子とも今年はアルファベットのKから。今年の審査員はオペラ座から総監督ステファン・リスナー、芸術監督バンジャマン・ミルピエ、エトワール・ダンサー/芸術監督コラボレーターのバンジャマン・ペッシュ、ダンサー5名(ローラ・エケ、リュドミラ・パリエロ、ルーシー・クレマン、サブリナ・マレム、アレクシー・ルノー)、そして外部からマリインスキー・バレエのユーリ・ファテーエフとダンスーズエトワール/ダンス教師のノエラ・ポントワだ。なおミュリエル・ズスペルギーとリヨネル・ドラノエが代理人として審査員に同席した。例年通りコンクールの結果は、各クラス1〜6位までの順位とともに昇級者名が発表された。