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濱田 琴子 
[2015.11. 5]

オニール八菜がプルミエール・ダンスーズに昇級した、パリ・オペラ座昇級コンクール速報

11月3日、10時30分からガルニエ宮にて女性ダンサーの昇級コンクールが開催された。課題曲は、カドリーユが『グラン・パ・クラシック』(ゴールスキー)、コリフェが『ライモンダ』(ヌレエフ)の第1幕より "ピチカート" のヴァリエーション、そしてスジェが『四季』(ロビンズ)より「春」のヴァリエーション。
SNSを活用する新時代の監督ミルピエが率いるオペラ座である。1日の終わりに楽屋口の扉に結果が張り出されるのを待つのは、今や昔。クラスごとに結果をツイッターで速報していった。

2015POB_CONCOURS_01.jpg ロクサーヌ・ストジャノフ Roxane STOJANOV
photo/Sebastien Mathe/Opéra national de Paris

カドリーユからコリフェへ。空きの5席に対して参加者は18名(ルーシー・フェンウィックの棄権により19名から18名へ)。
1位で上がったロクサーヌ・ストジャノフは、ドキュメンタリー『明日のエトワールたち』に出演しているので、学校時代の活きのいい彼女を覚えている人もいるだろう。今シーズンの開幕公演となったトリプルビルの1つ、ミルピエ監督による創作『Clear, Loud, Bright, Forward』で怪我で降板したジェニファー・ヴィゾッキに代わって女性8名のダンサーの一人として舞台に毎晩たてる幸運を得た(ジェニファーのパートはイダ・ヴィキンコスキが踊り、イダのパートをロクサーヌが担当した)。課題曲でのテクニックは正確で、流れるように踊る姿には他のダンサーには見られない華やぎがあった。彼女が自由曲に選んだのは、ジェローム・ロビンズの『四季』から「秋」のヴァリエーション。ここでは、技術面の確かさだけでなく高い音楽性の持ち主であることも証明した。コスチュームの赤いシフォンドレスを震わせながら燃え立つような秋を踊ったロクサーヌは、その存在感もなかなかのものである。
2位であがったのはカトリーヌ・ヒギンズ(オペラ座のサイトでは研修生のままのようだが、10月21日に始まった「アンヌ・テレサ・ドゥ・ケースマイケル ミックスプログラム」の公演最終日からカドリーユ)。自由曲での彼女の技術は、会場にいたダンスのプロたちをうなさせるほどのものだった。ロクサーヌと同じ課題曲を選んだが、なぜかコスチュームが「秋」の赤ではなく淡い黄色で「春」のよう。そのせいもあってかロクサーヌのパフォーマンスより、穏やかさが感じられた。とはいえ、課題曲でも言えることだが、とても大柄なダンサーなのでちょっとした動きもダイナミックに見えるのが彼女の特徴。これからの成長が楽しみなダンサーだが、さて、パ・ド・ドゥとなったら男性ダンサーの誰が彼女と組めるのだろうか・・・。

2015POB_CONCOURS_02.jpg カトリーヌ・ヒギンズ Katherine HIGGINS
photo/Sebastien Mathe/Opéra national de Paris
2015POB_CONCOURS_03.jpg ソフィー・マイユー Sophie MAYOUX
photo/Sebastien Mathe/Opéra national de Paris

3位のソフィー・マイユーと4位のレイラ・ディラックの二人は、9月の開幕公演の『テーマとヴァリエーション』でスジェのエロイーズ・ブルドンとマリーヌ・ガニオと4人組で、舞台に立つチャンスを得ている。もともとは代役だった二人が現実に舞台を務めることができたという自信が、今回のコンクールにも反映されたのではないだろうか。ソフィーは課題曲では切れ味のよいダンスを見せ、レイラは自由曲の『エメラルド/ジュエルズ』できれいな腕の動きが印象的だった。なお、ソフィが自由曲で選んだバランシンの『フー・ケアーズ』はオペラ座のレパートリーには入っていなかったため、これまでコンクールで踊られることがなかったのだが、今シーズン開幕時のボリス・シャルマッツによる『20世紀のための20人のダンサー』の公演に含まれていたので、ミルピエ監督の承認によりオペラ座のレパートリー入りを果たしたそうだ。
5位で上がったアリス・カトネは『明日のエトワールたち』だけでなく、マチュー・ガニオとのレッスンビデオにも出ているので日本のバレエファンには顔なじみだろう。安定した正確なテクニックに定評があり、課題曲でもそれは見事に発揮されていた。自由は『四季』から「春」のヴァリエーションを選び、繊細でフレッシュな自分を上手く投影し、春の到来を告げた。

2015POB_CONCOURS_04.jpg レイラ・ディラック Leïla DHILAC
photo/Sebastien Mathe/Opéra national de Paris
2015POB_CONCOURS_05.jpg アリス・カトネ Alice CATONNET
photo/Sebastien Mathe/Opéra national de Paris

コリフェからスジェへは空きが4席。コンクール参加者12名の中に、ミルピエ監督が自作の『Clear, Loud ,Bright, Forward』に選んだダンサーが3名(マリオン・バルボー、イダ・ヴィキンコスキ、レティツィア・ガロニ)いるため、この3名の昇級はほぼ確実というようにパリのバレエファンたちは予測していたのだが、あいにくとレティツィアは今回5位となり昇級が叶わぬ結果となった。
1位で上がったのは、マリオン・バルボー。入団時当時に「学校から、すごい生徒が入ってきた」と噂された割にはあまり配役に恵まれていなかったのだが、ミルピエ監督の『Clear, Loud, Bright,Forward』で才能とモデルのように美しい肢体を発揮する機会に恵まれた。課題曲も、そして自由曲に選んだ『眠れる森の美女』からのヴァリエーションも無難にこなして、下馬評にこたえたという感がある。
2位で上がったイダがコリフェに上がったのは昨年のコンクールだから、トントン拍子で昇級していることになる。『Clear, Loud, Bright,Forward』でジェニファー・ヴィゾッキの降板の結果、より良いパートに配される幸運に恵まれた彼女。テクニックの確かさを自由曲で審査員たちに確認させ、自由曲の『ディアナとアクテオン』では力強さと圧倒的な存在感を示して見せた。

2015POB_CONCOURS_06.jpg マリオン・バルボー Marion BARBEAU
photo/Sebastien Mathe/Opéra national de Paris
2015POB_CONCOURS_07.jpg イダ・ヴィキンコスキ Ida VIIKINKOSKI
photo/Sebastien Mathe/Opéra national de Paris

3位で上がったファニー・ゴルス。引退前にオーレリー・デュポンが若手の中で気になるダンサーの一人として彼女の名前を挙げたことがあるが、当時、その名前にピンと来る人はパリでもそう多くなかったのではないだろうか。オーレリーが語るように、腕の動きがとても美しいダンサーである。日本でも放映されたバランシンの『水晶宮』ではローラ・エケと組んで、コリフェながらドゥミソリストとして見事な活躍ぶりだった。年齢に似合わぬ大人びた落ち着きとフェミニティの持ち主。課題に選んだ『チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ』では、テクニックに裏付けられた優雅さと快活さが魅力だった。
4位で上がったリディ・ヴァレイユは、コンクール会場にいた人々の間では、彼女こそが順位づけの1位にふさわしいという声があったほどの出来栄えだった。無駄のない、正確なテクニックによるパーフェクトな踊り。舞台をどう移動しようとも、彼女自身が発光体となっているように光輝いて見えたのが印象的だった。内から発する気のせいか、それほど大柄ではない彼女ながら舞台空間を自分のものにしていた。今後どのように配役されてゆくのかが楽しみなアーチストと言える。

2015POB_CONCOURS_08.jpg ファニー・ゴルス Fanny GORSE
photo/Sebastien Mathe/Opéra national de Paris
2015POB_CONCOURS_09.jpg リディ・ヴァレイユ Lydie VAREILHES
photo/Sebastien Mathe/Opéra national de Paris

プルミエールの2空席を目指したスジェは8名。昇級を果たしたのは、オニール 八菜とレオノール・ボーラックの二人だ。彼女たちはカドリーユからコリフェ、コリフェからスジェのコンクールでも同時に上がっているので、さあ、次はどちらが先にエトワールに任命されるかという話題を提供してくれるにちがいない。レオノールは課題曲も自由曲の『アザー・ダンシーズ』も共にいつもの彼女に比べると、見る者を誘い込むような力が少々弱かったのが惜しかった。とはいえ、昇級に相応しい出来であったことは間違いない。八菜は課題に選んだ『ライモンダ』のヴァリアションを、丁寧かつ確実なテクニックで踊った。舞台映えする自分を知ってるのだろう。宝石で飾られたライモンダの輝くチュチュに身を包んだ姿は、実にゴージャスだった。

2015POB_CONCOURS_10.jpg 2015POB_CONCOURS_11.jpg
オニール八菜 Hannah O'NEILL photos/Sebastien Mathe/Opéra national de Paris

コンクール前、オペラ座での公演の活躍ぶりからエロイーズ・ブルドンの昇級を予測する声も多かったのだが、3位となり昇級は叶わず。過去において、コンクール当日の演技が優れなかったダンサーが昇級することへの疑問に対し、「コンクールの採点だけではなく、日頃の仕事ぶりも評価の対象となるからだ」というのが、その疑問を鎮火する答えであった。たとえエロイーズのこのコンクールの結果が彼女本来の力を出せたものではなかったにしても、出演予定のエトワールが怪我で降板するたびに助っ人として舞台に立って公演を救った彼女の功労は報われてもいいのではないか、という声がパリのバレエファンから上がるのも仕方ないだろう。
セウン・パクの『アザー・ダンシーズ』での静謐でポエティックなダンスは、公演の一部を見ているような錯覚をおこさせる素晴らしい出来栄え。マリーヌ・ガニオは『リーズの結婚』での溌剌とした若い娘役に実にはまっていたが、ノイマイヤーの『ヴァスラフ』において内面的な深みを感じさせる踊りによって、アーチストとしての幅広い可能性を示した。
なお、このコンクールの結果による昇級は、2016年1月1日から実施される。
(2015年11月3日 ガルニエ宮)

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レオノール・ボーラック Leonore BAULAC photos/Sebastien Mathe/Opéra national de Paris

 

スジェ結果
第1位 オニール 八菜(プルミエール・ダンスーズに昇進)
第2位 レオノール・ボーラック(プルミエール・ダンスーズに昇進)
第3位 エロイーズ・ブルドン
第4位 セウン・パク
第5位 シャルリーヌ・ギーゼンダンナー
第6位 エレオノール・ゲリノー

コリフェ結果
第1位 マリオン・バルボー(スジェに昇進)
第2位 イダ・ヴィキンコスキ(スジェに昇進)
第3位 ファニー・ゴルス(スジェに昇進)
第4位 リディ・ヴァレイユ(スジェに昇進)
第5位 レティツィア・ガローニ
第6位 オーバーヌ・フィルベール

カドリーユ結果
第1位 ロクサーヌ・ストジャノフ(コリフェに昇進)
第2位 カトリーヌ・ヒギンズ(コリフェに昇進)
第3位 ソフィー・マイユー(コリフェに昇進)
第4位 レイラ・ディラック(コリフェに昇進)
第5位 アリス・カトネ(コリフェに昇進)
第6位 ジュリア・コーガン