フラメンコのの魅力を様々な角度からお伝えするフラメンコエッセイ「アマポーラの一撃」と、フラメンコのステージに咲き競う花々をレポートする「巷に咲き競う、フラメンコの花々の評判記」。フラメンコに関する話題をご紹介いたします。





関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi
佐藤桂子・山崎泰スペイン舞踊団公演『告白』

 尖鋭な舞踊劇を創ることで知られる、佐藤桂子・山崎泰スペイン舞踊団のアヴァンギャルド・シリーズも、ファイナル公演を迎えることになったという。
 今回の公演は『告白』というタイトルに<ドストエフスキー 次元を踊る>と、サブタイトルが付記されている。
 ドストエフスキーの小説『悪霊』の<スタヴローギンの告白>の中の「私は神を殺してしまった」という言葉と、9.11事件などテロリズムが横行する時代をリンクさせて、この『告白』は創られている。
「生と死を共有している彼らの方が、ややもすれば人間関係が希薄になっている私たちよりも、より濃密なる時間を過ごしているように思う。敵対する人間関係でありながら、互いを理解し、畏敬の念にかられてゆく。一線を心ならずも越えてしまい、本来あるべき姿に立ち戻ろうとした時、悲劇が生じる。」と、台本・演出・共同振付の山崎は、プログラムに記している。
 舞台では、目出し帽と赤いスカーフ、黒い衣裳のテロリストと、白いロングドレスの人質のドラマが進行していく。白いドレスの女性は、平和あるいは人類が信ずべきものの象徴だろうか。
 生と死が切迫した過酷な状況の中で、テロリストたちは自問自答を繰り返すかのように絡み合う。
 何回か訪れるそれぞれの厳しい局面では、背中に大きな羽を着けた天使が、テロリストと人質の間を横切る。一度は、テロリストたちは天使に救われたかに見える。しかし、主犯はテロを敢行せざるを得ない。それが、今日のテロリズムの本質、ということになるのだろうか・・・。
 人類の未来の象徴であった白いドレスの人質は、首を吊られ、主犯は首にロープをかけられてもがき苦しみながら生きる、という罰を受ける。
 情け容赦なく自爆テロリズムが横行する、という今日の世界に正面から立ち向かった舞踊劇だった。簡素な装置で凄絶な状況を上手く表し、スペイン舞踊によって人類の深遠なテーマを描いた。イメージもなかなか鮮烈で、強いインパクトを感じた舞台だった。ただ、非日常的な世界を題材としているから、全編に渡っていささか息苦しく、どこかに日常的なシーンが欲しいような気もしないではなかった。
(12月20日、メルパルクホール)


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