佐々木 三重子 text by Mieko Sasaki
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珍しいキノコ舞踊団『また、家まで歩いてく。』

「珍しいキノコ舞踊団」は、日常を切り取ったようなステージ展開でダンス界に新風を吹き込んでいる女性だけによるユニークなグループ。『また、家まで歩いてく。』は、昨年、彩の国さいたま芸術劇場で上演して好評を得た『家まで歩いてく。』の改訂版である。構成・振付・演出は、舞踊団の代表を務める伊藤千枝。前回は、平土間の舞台をすり鉢状の客席が三方から見下ろすように囲む形だったが、今回は舞台と客席が向き合う通常の形。天井からは羽根を羽ばたかせて飛ぶ鳥の群が吊るされ、両サイドの壁には植物の茂みを暗示するようなセットが付けられ、また、鳥のさえずりが冒頭と最後のほうに流されるなど、自然に包まれた環境が強調されていた。だが、基本的なコンセプトは同じである。

仕切りを兼ねた衝立の向きが変わると、ソファーや棚などが現われ、戸外から瞬時に室内の光景に転換するのも同じ。小さな丘がくるりと回ると、雪室のかまくらのように、中にダンサーが座っていたりもする。カジュアルな服装の七人のダンサーたちは、ゆっくりと動き始め、床をころげ、互いに絡み合い、ソファーでくつろいでビールを飲んだり、マットレスに寝そべったり、イスに座って本を読んだりと、いろいろな日常のシーンが同時に提示された。また、幼稚園でのスイカ割り大会や兄弟喧嘩、厳しかった父の思い出を語るダンサーもいた。「こんな思い出、あなたにもあるでしょう」とでもいうふうに。英語の語りや歌も流されたが、「I have nothing at all」という言葉の繰り返しが耳に残った。

ダンサーたちは、自己を解放し、互いの呼吸を聞き合いながら踊っているように見え、そのせいか全般にゆったり感を増したようで、今回は時間の流れもゆるやかに感じられた。
(3月24日、スパイラルホール)


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NBAバレエ団がサムソヴァ版『白鳥の湖』を日本初演

NBAバレエ団が、ガリーナ・サムソヴァがイワーノフ版に基づいて振付・演出した『白鳥の湖』を日本初演した。キエフでバレエを始めたサムソヴァは、カナダ国立バレエ団やサドラーズウエルズ・ロイヤル・バレエ団で舞踊手として活躍しながら演出に進出した。『白鳥の湖』は、自身の蓄積を生かし、様々な版を取り入れながら独自色を出したもの。

プロローグで、娘の姿のオデットがロットバルトにより白鳥に変えられるシーンを見せたが、終幕は、オデットが娘の姿に戻ってジークフリート王子と結ばれるのではなく、王子と永遠の愛の世界に旅立つ形にした。また、ピルエットなどで見せ場を築く道化の代わりに王子の友人ベンノを登場させた。工夫が際立ったのは第三幕。花嫁候補はハンガリー、ロシア、ポーランドの王女三人にし、それぞれにソロを与え、各国の民族舞踊をうまくつなげた。ロットバルトとオディールはスペインの舞踊手を従えて現われ、スペインの踊りは王子を惑わすのに効果的に用いられた。物語の自然な流れを尊重した演出だったが、細部での配慮が欲しい気もする。例えば、第二幕で白鳥に戻ったオデットが去った後、ロットバルトを残して退場する王子に心の内を示す仕草が何かあれば、感銘は深まったと思う。

ダンサーでは、オデット/オディールに客演したモスクワ音楽劇場バレエ団のナタリア・レドフスカヤが光っていた。見栄えのするプロポーションで、バネの利く脚を巧みに操り、しなやかさも強靭さも自在に表現する。オデットでは内に秘めた芯の強さ、オディールでは艶然とした態度を示した。王子役のセルゲイ・サボチェンコは、優雅な回転やジャンプを見せてベンノ役の李成洛の力強い技と好対照を成し、また惑いや驚きを素直に表現してレドフスカヤを包み込んだ。ロットバルトのマクシム・グージェレフもスケールの大きなジャンプで舞台にアクセントを付け、花嫁候補の清水彩妃、尾藤朋子、田熊弓子も安定した演技を見せるなど、皆、健闘していた。それに比べて、ミスも目立ったオーケストラには奮起を促したいと思う。
(3月25日、ゆうぽうと簡易保険ホール)

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