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レポート:針山 真実 
[2013.04.23]

ユース・アメリカ・グランプリ 2013 ガラのレポート
"Stars of Today Meet the Stars of Tomorrow"

オープニングを飾ったのはカリフォルニア出身の12歳のヴァイオリニスト、エリ・チョイ。『カルメン ファンタジー』を演奏。これがまさに天才キッズと呼ばれる存在だった。演奏の後半からアレグロになると更にエンジンがかかって目にも留まらぬ速さで弓を動かし、高い音と低い音を混ぜながら圧倒される演奏で客席からは歓声が沸きました。
そしてオープニングのあとは今年の司会者が登場。テレビ番組の司会などもしているマーク・ウェインバーグ。自分の娘が17歳でバレエを一生懸命頑張っていて今年このコンクールにも参加していること、今日のガラが数週間前から完売で今日ここに客として座っているあなたたちはとてもラッキーですよ! と言って会場を沸かせ、舞台の真ん中でアラベスクとピルエットを披露して、「これで満員のリンカーンセンターの舞台で僕はバレエを踊ったと自慢できるよ!」と観客の笑いを誘いました。

yagp2013gala_02.jpg 司会者 © Liza Voll Photography yagp2013gala_06.jpg アドナイ・シルバ
© Liza Voll Photography
yagp2013gala_07.jpg ジゼル・ベセア
© Liza Voll Photography
yagp2013gala_01.jpg エリ・チョイ© Liza Voll Photography yagp2013gala_03.jpg ラダ・サラツコヴァ© Liza Voll Photography
yagp2013gala_04.jpg 五十嵐 大地 © Liza Voll Photography yagp2013gala_05.jpg マリア・クララ・コエホ © Liza Voll Photography

まず、初めはプリコンペティティブ部門で入賞をしたロシア出身で10歳のラダ・サラツコヴァ、が『クラウン・ヴァリエーション』を踊り、三角のとんがりコーンを頭に載せ、可愛らしい衣装を着て、チャイコフスキーの音楽に合わせてとてもチャーミングに踊り、10歳にしてヴァリエーションの途中でフェッテ32回を入れるなど見ごたえも十分。
続いて日本人、プリコンペティティブの最優秀にあたるホープ・アワードを受賞した五十嵐大地(10歳)が『ドン・キホーテ』よりバジルのヴァリエーションで登場すると出ただけで客席からは拍手が。もちろん体格は子どもなのですが、雰囲気と演技はしっかり大人のバジルになりきっていて、10歳のプリンシパル登場にみんなキュンとなりました。技術的にもよく出来ていたし、ただ技を見せるだけではなく、基本の正確さも出来ていたのでとても好感が持て、最後のポーズも音とともに歯切れ良く決まって大歓声になりました。
続いてマリア・クララ・コエホ(14歳)。ブラジル出身でコンテンポラリー部門で踊った『マガレーニャ』を踊りました。サンバ調の曲にあわせて振付もサンバ調。ブラジル出身の彼女だからこそよく似合っていました。上はビキニで短いスカートを履き、ポワントシューズで立ったまま腰を振って、パレードをしているような雰囲気で踊り、とても楽しい作品でした。
次にブラジル出身のアドナイ・シルバ(15歳)が『ラ・フィーユ・マル・ガルデ』のヴァリエーションで登場。元気一杯で若々しい踊り。大きな劇場をいっぱいに使ってジャンプが大きく良く開脚も出来ていてとても良かったです。回転もよく決まっていて、笑顔も良かった。次はどこで彼が見られるのか楽しみ。
ジュニアの部でグランプリに輝いたジゼル・ベセア(13歳)が『エスメラルダ』1幕よりヴァリエーションを踊りました。彼女の踊りは予選、決戦、そしてガラと3回見ましたが、ガラが一番伸び伸びと踊っていて、グランプリに輝いて全てが吹っ切れたのかとても良い踊りでした。アラセゴンドターンの水平に伸びる足としなる甲が目に焼きつきました。

yagp2013gala_08.jpg ジンチャン・グ© Liza Voll Photography
そして中国の15歳、ジンチャン・グがコンテンポラリー『マイ・ファースト・モダン・ピース』(振付:ディシャ・ザング)を踊りましたが、これが衝撃的でした。
近年の中国や韓国のコンテンポラリー・ダンスはとくに斬新なものが多く、振付や音楽が印象に残るものが多いのですが、この作品の振付家のアイデアと想像力が素晴らしかったし、彼の身体能力も素晴らしい。クラシック・バレエには絶対にない動きや姿勢、関節や筋肉を完全に放出したような動き、床技、そしてヒップホップの技のような動き、とても感心しました。この作品の間、ヴァリエーションの時にはざわついていた上階で観覧していた出場者たちも、静まり返って見入っていました。
そして今年のコンクールで私のお気に入りダンサーの一人である、スイス出身の15歳ルー・シュピヒティヒが『ジゼル』のヴァリエーションを踊りました。彼女は少しバランスを崩してしまったり、決戦では問題なかったところでグラついたりしてしまったが、ジゼルの雰囲気は健在。彼女の柔らかな踊りには見とれてしまいました。
韓国の19歳、ジョー・ウォン・アが『白鳥の湖』の王子のヴァリエーションで登場。相変わらず基本が美しく、ジャンプの着地も柔らかい。長身で顔が小さくスタイルがよくて王子の風格がある。きっとバレエ団のオファーがすぐ入るでしょう。
yagp2013gala_11.jpg マリア・コチェトコバとジョージ・バラニの
© Liza Voll Photography
次はユース・アメリカ・グランプリ初めての試み。プロとコンクールに参加した生徒が組んでパ・ド・ドゥを踊りました。演目は『パリの炎』。このパ・ド・ドゥは実際に男女が手を組んで踊る部分や、リフトが少ないので選ばれたのだと思いますが、プロとして踊ったのがサンフランシスコ・バレエ団のマリア・コチェトコバ。相手役はフロリダから参加したキューバ人のジョージ・バラニ。彼にとってこのガラでマリア コチェトコバとパ・ド・ドゥを踊ったなんて本当に栄誉なこと、一生心に残る経験だったでしょう。
ただやはり前半は緊張もしていただろうし、動揺しながら踊っている感じがしてマリアに引っ張られていましたが、ソロ・ヴァリエーションになると踊りなれているのでしょうか、のびのびと踊っていました。コーダでは二人ともハツラツとしていて技を競い合うかのよう。マリアは32カウント連続回転のフェッテにジャンプを入り混ぜて、見たこともないフェッテの連続技を見せました。
1部の最後は「グランド・デフィレ」。ユース・アメリカ・グランプリの風物となっていて、舞台上で最も多くの人数が一緒に踊ったパフォーマンスとしてギネスにも認定されています。世界から集まった子どもたちが、みんなでリハーサルをして一度に舞台に出るという素晴らしい企画。
ニューヨークシティ・ファイナルが開催されているこの数日間で、参加者はそれぞれのリハーサルやワークショップ、そしてコンクール出場という忙しい時間の中で「グランド・デフィレ」のリハーサルに参加。黒いレオタードに巻きスカートを着た女の子たちと白いシャツに黒いタイツを着た男の子たちが、部門ごとに分かれて次々と出てきては踊って去っていきます。人数は正確にはわかりませんでしたが200人以上で250人くらいいたかもしれません。しかしこの数日間で振付を覚えてリハーサルも数回のみで踊っているとはとても思えないパフォーマンスで、さすがニューヨークシティ・ファイナルに残ったダンサーたちだと思いました。

yagp2013gala_09.jpg ルー・シュピヒティヒ © Liza Voll Photography yagp2013gala_10.jpg ジョー・ウォン・ア  © Liza Voll Photography
yagp2013gala_12.jpg  『グランド・デフィレ』 © Liza Voll Photography yagp2013gala_13.jpg 『グランド・デフィレ』 © Liza Voll Photography
yagp2013gala_14.jpg コンクール参加者による 『グランド・デフィレ』 © Liza Voll Photography

2部はプロフェッショナルによるパフォーマンス。
一つ一つの作品が上演される前に、ダンサーや振付家のリハーサルの様子とコメントフィルムが上映されました。
まずはクリフトン・ブラウンが『TAKE 5』(振付:フレデリック・アール・モスレイ、音楽:ポール・デズモンド)という創作を踊りました。サクソフォン、ドラム、ベース、ピアノが舞台上に登場してジャズの生演奏です。スーツを着たサラリーマンが仕事を終えて夜空の星の下を歩いていて、だんだん踊りだし、おどけて楽しんでいるようでした。クリフトン自身がジャズに合わせて楽しんで踊っていると思いました。

yagp2013gala_17.jpg ヴィエングセイ・バルテスとオシエル・グネオ
© Liza Voll Photography
次にボリショイ・バレエ団のスヴェトラーナ・ルンキナが『ラ・バヤデール』1幕よりニキヤの踊り(振付:マリウス・プティパ、音楽:レオン・ミンクス)を踊りました。フィルムで「この踊りは感情がもっとも大事で、足をあげるとか、きれいな腕の形、ということではなく、見ている人にニキヤの感情が伝わらなければならない」と語っていました。ニキヤの悲しさ、切なさ、悔しさ、苦しさがいっぱいに表現されていて、客席は息をのむような静かさになりました。
そしてアメリカ初演の『ダブル・バウンス』(振付:ピーター・クアンツ、音楽:デーヴィッド・ラング)をキューバ・ナショナル・バレエ団のヴィエングセイ・バルテスとオシエル・グネオが踊りました。女性の衣装が特徴的で、チュチュのような円形のワイヤーに白いサテン生地を1枚貼り付けたような衣装で、動くと上下に跳ねるように動きます。この動きをうまく利用する振付でチュチュのワイヤーを持って踊ったり、持ち上げたりねじったりするおもしろいパ・ド・ドゥでした。
ニューヨーク・シティ・バレエ団のテレサ・レイチェンとテイラー・アングルが、世界初演、『パルティア No.2 Cマイナー』(振付:エメリー・ラクローン、音楽:ヨハン・セバスチャン・バッハ)を世界初演しました。ピアノは生演奏で素晴らしいピアニストでした。振付家のエメリーがフィルムで「踊り手のテレサはとても優秀ですぐに理解してくれるので、振付に欲が出て色々と試すことが出来た」と語っていました。たくさんのリフトの技が入っていて、床をポワントシューズで思いっきりスライディングをしてから、クラッシック・バレエのポーズをパッと決めるところが何度かあり印象的でした。

yagp2013gala_15.jpg クリフトン・ブラウン『TAKE 5』 © Liza Voll Photography
yagp2013gala_16.jpg スヴェトラーナ・ルンキナ© Liza Voll Photography yagp2013gala_18.jpg テレサ・レイチェンとテイラー・アングル
© Liza Voll Photography

ニューヨーク・シティ・バレエ団で2月にプリンシパルに昇格したばかりのチェース・フィンレイは、アメリカン・バレエ・シアターのプリンシパル、マルセロ・ゴメスの振付で『Tous les Jours』を踊りました。こちらも生演奏でピアノによる連弾。「バレエダンサーの苦悩を表現しようと思った」というゴメスのメッセージが映されました。

yagp2013gala_19.jpg チェース・フィンレイ© Liza Voll Photography
レッスン用のバーがおかれていて、日々のレッスンが始まるシーンから始まります。途中でバーから逃げ出して踊っては、またバーにもどって来たり、「バーレッスンは必ずしなければならない! だけど自由になりたい!」という感情を踊りで表現、シリアスになったりコミカルになったり、節々に振付けたゴメスらしさが見られました。最後はバーを思い切り押し倒して終わり。
チェースは金髪でハンサムで体格が良くファンも多く、私の隣に座っていた老人夫婦が「バレエ界のジャスティン・ビーバーね」と言っていたのがおもしろかったです。
そしてマルセロ・ゴメスとパリ・オペラ座バレエ団のドロシー・ギルバルトが『ロミオとジュリエット』よりバルコニーシーン(振付:ケニス マクミラン 音楽:セルゲイ・プロコフィエフ)を踊りました。フィルムでは「パートナリングは彼を完全に信用しきっているわ」とドロシー、マルセロは「お客さんを引き込むことが出来たら嬉しいね」と語っていました。マルセロの情熱的なロミオ、演技とテクニックがやはり素晴らしい。二人のパ・ド・ドゥは見ていて不安な要素なんてどこにもありません。ドロシーもとてもエレガントで美しいジュリエットでした。
『ボーダーランド・パ・ド・ドゥ』(振付:ウェイン・マクレガー、音楽:ジョエル・カドバリー、ポール・ストネイ)をサンフランシスコ・バレエ団のマリア・コチェトコバとルニー・ウィークスが踊りました。コンテンポラリー・ダンスのパ・ド・ドゥで、特にマリアの超人的な身体能力が発揮されていて、220度ほどに上がる足、体をねじったリフト、足がどうやったらそこから出てくるのだろうと思うような体の柔らかさ、普通のバレリーナではなかなか踊れそうにない作品でした。
コンクールの参加者たちは、彼女の身体能力に注目が集まり一番人気でした。
yagp2013gala_25.jpg ニーナ・アナニアシヴィリとリル・バック
© Liza Voll Photography
私が一番印象に残ったのはニーナ・アナニアシヴィリとリル・バックが踊った『スワン』(振付:ミハイル・フォーキン&リル・ブック、音楽:サン=サーンス)。ニーナがアメリカン・バレエ・シアターを引退した時の公演は今でも忘れられませんが、まさかまたニーナが見られるとは思っていませんでした。とは言え彼女が踊ったのは、白鳥の腕の動きとポワントシューズの爪先立ちでステージを横移動するだけ。
ただこの二つ動きしかしていないけど素晴らしかったのです。腕の動きは骨や関節が感じられない、水のようにウエーブしていて、細かいパ・ド・ブレは水面を進む本物の白鳥のようでした。そしてリル・バックは軟体動物のようなヒップホップダンサーで、足首や腕がクネクネと自由自在に動き、とても不思議な動きを見せました。それが何故かニーナの白鳥の動きとよく合っていて、ヒップホップとクラッシック・バレエの融合がとても素晴らしかったです。
最後を飾ったのはボストン・バレエの倉永美沙とアレハンドロ・バレレス、そしてアメリカン・バレエ・シアターのエルマン・コルネホによる『海賊』のバ・ド・トロワ(振付:マリウス・プティパ、音楽:アドルフ・アダン)。ボストン・バレエの倉永美沙は芯が強く安定したダンサー。上半身は優雅で、体を大きく使ったエレガントな表現が素晴らしく、さらにテクニックも抜群です。初めのアダジオではアラベスクを高く上げたパンシェのポーズなど美しい踊りを見せ、ヴァリエーションでは余裕タップリ。軽快に難なく踊り、最後まで音にピタリと終わらせると大きな拍手が沸きました。コーダでは32カウント連続ターンの見せ場フェッテで、前半は全て2回転を連続させ、後半のフェッテもスピードを落とすことなく最後まで2回転を混ぜて成功。最後を飾るのには相応しく会場を盛り上げました。
(2013年4月18日、デービット・H・コッチシアター・リンカーンセンター)

yagp2013gala_20.jpg マルセロ・ゴメスとドロシー・ギルバルト
© Liza Voll Photography
yagp2013gala_21.jpg マルセロ・ゴメスとドロシー・ギルバルト
© Liza Voll Photography
yagp2013gala_22.jpg マリア・コチェトコバとルニー・ウィークス
© Liza Voll Photography
yagp2013gala_23.jpg マリア・コチェトコバとルニー・ウィークス
© Liza Voll Photography
yagp2013gala_24.jpg ニーナ・アナニアシヴィリ
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yagp2013gala_27.jpg 倉永美沙、アレハンドロ・バレレス、エルマン・コルネホ
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yagp2013gala_26.jpg 倉永美沙、アレハンドロ・バレレス、エルマン・コルネホ
© Liza Voll Photography
yagp2013gala_28.jpg チェース・フィンレイ
© Liza Voll Photography