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レポート:針山 真実 
[2014.04.21]

YAGP15周年記念ガラ 'Stars of Today Meet the Stars of Tomorrow' が華やかに開催された

4月10日リンカーンセンターのデービット・コック・シアターでユース・アメリカ・グランプリ2014の入賞者たち「将来のスター」と、現在活躍しているスターたち「今日のスター」のガラ公演が開催された。
YAGPは今年15周年を向かえ、年々参加者が増えて、スカラーシップ授与も多くなり、世界を代表するバレエコンクールに成長している。ガラ公演ではコンクールの発展の歴史を振り返るフィルム、このコンクールを経て現在プロとして活躍しているバレエダンサーたちのインタビュー、そして有名バレエ団のディレクターたちからこのコンクールに対しての祝辞コメントなどが大画面に流された。

1404yagp_gala05.jpg 『パ・ド・デューク』(C) Siggul / Visual Arts Masters

ガラ公演は、まず今回のコンクールの受賞者の踊りから始まった。ポルトガルから出場して、最初に『フェアリードール』を踊った10歳の3人のパ・ド・トロアが可愛い。出てきただけで観客がみな笑顔になっていたが、演技がとても上手く、3人ともバレエの基本のポジションや手の動きもきっちり丁寧にしっかりとした踊り。さらにピルエットはそれぞれ3回から4回転を綺麗に回った。
印象に残ったのはメキシコのEscuela Superior Musica y Danza de Monterreyから参加した、13歳から23歳の男性23人が踊ったアンサンブル。コンクールではアンサンブル部門で2位を受賞。振付はジェイミー・シエラで、ダンサーは力強く身体能力が非常に高い。それぞれ空高く舞い、地面を転がり、互いにリフトし、数人のダンサーがダンサーを高く投げて数人のダンサーがキャッチ、背中向けに並んだ十数人のダンサーの背中をダンサーが走って駆け抜けたり、大技の連続を躊躇する間もなく見せ、素晴らしい動きでレベルの高さにも感心しきりだった。
『ラ・バヤデール』のヴァリエーションでシニアの部1位を受賞した二山治雄の踊りは決戦同様にとても落ち着いた踊りで、不安要素がまったく無い。ジャンプの高さ、回転のバランス、ポジションの美しさなど完成度は文句なし。
『ドン・キホーテ』のヴァリエーションを踊ってグランプリを受賞したシーザー・カレラスの踊りは、本人が存分に楽しんでいる踊り。ファイナルに比べると回転の軸がずれてしまっていたが、少しの失敗にもまったく動揺を見せず、彼は余裕の演技で観客を自分のものにした。
今年のガラはフィルムが長かったこともあるのか、受賞者の踊りは少なかった。
ガラ1部の最後はこのコンクールのガラ恒例となっているグランド・デフィレ。コンクールに参加した生徒たちがニューヨーク滞在中に数回のリハーサルで振りを覚え、チャイコフスキーの『オネーギン』よりポロネーズの音楽にのせて披露する。
今年のデフィレ参加者は過去最高の350人。世界中から集まった言語も齢も違う初めて出会ったダンサー同士が、コンクール出場という大きなイベントの間、たった数回のリハーサルでこれだけのパフォーマンスが出来るのには感心した。生徒たちだけでなく振付家、そしてリハーサルを担当した教師たちに大きな拍手を送りたい。
 
2部はプロフェッショナルダンサーたちのガラ。
毎年このガラで面白いのは、バレエ団の違う珍しいダンサーの組み合わせのパ・ド・ドゥが見られること、このコンクールのために新しく振付けられた作品も見ることが出来ること。
 アメリカン・バレエ・シアターのダニール・シムキンはアルヴィン・エイリー振付の『パ・ド・デューク』をエイリーのカンパニーで18年踊っている大ベテラン、アリシア・グラフ・マックと共に踊った。音楽はデューク・エリントンで聴くだけでも楽しめる。踊りの前にアルヴィン・エイリー独特の身体の動きや腕のフォームを、ダニールとアリシアがリハーサルしているフィルムが流され、ダニール本人が「今回は初めて踊るエイリー作品なので大目に見てね!」とチャーミングにコメントをしていた。アリシアの動きはさすが18年間踊っているだけあってフォルムが決まっていてかっこいい。ダニールもバレエダンサー風な動きではあるが、身体能力の高さと身体の軽さは相変わらず素晴らしく、ジャズに合わせて軽快に楽しそうに踊った。

1404yagp_gala03.jpg 『パ・ド・デューク』(C) Siggul / Visual Arts Masters 1404yagp_gala04.jpg 『パ・ド・デューク』(C) Siggul / Visual Arts Masters

パリ・オペラ座のマティアス・エイマンはチャイコフスキー作曲、ルドルフ・ヌレエフ振付の『マンフレッド』を踊った。歩き出しからして、やはりプロフェッショナルとコンクールに参加したダンサーたちは違うことを大いに感じさせた。舞台に歩いて出て来た時から芸術的で美しく、これがプロフェッショナルだと思った。しなやか、美しいポールドブラ、感情的な身体の使い方も素晴らしく、彼の『ロミオとジュリエット』などの全幕を見てみたいと思った。
 アメリカン・バレエ・シアターでソリストのミスティー・コープランドは、アメリカ人気テレビ番組の‘So you think you can dance’でチャンピオンに輝いた人気ダンサーで振付家のデレック・ヒューが振付けた『Ameska』を社交ダンスダンサーの男性3人とともに踊った。この日が世界初演。作曲はAmeska。とても魅力的な作品でミスティーは、金色の光り輝くラテンダンスドレスが良く似合っていて、ポワントシューズでサルサを踊った。タキシードを着た男性3人との絡みがかっこよく、踊りと雰囲気はミスティーにとてもよく似合っていてスピード感のある動き、足さばき、社交ダンス大会で見られるような大技リフト、そしてフェッテなどを見せ、かっこよさに惹かれて思わず身を乗り出して見入ってしまった。
そしてニューヨーク・デビューを飾ったボリショイ・バレエのオルガ・スミルノワとシュツットガルト・バレエのエヴァン・マッキーによる『オネーギン』のパ・ド・ドゥの素晴らしさには鳥肌が立った。チャイコフスキー作曲、ジョン・クランコ振付『オネーギン』の最後の感情的な手紙のシーンだった。オルガのポワントに伸ばした足の甲と膝の伸びの美しさ、そしてどこまでも高く伸びる足、優雅な上半身の動きにはうっとりとため息が出る。なかなかガラでは観客がここまでストーリーに入り込むことは無いと思うが、踊りの素晴らしさ、そしてそれ以上に二人が愛に葛藤する心からの表現に呑まれた。

1404yagp_gala02.jpg 『オネーギン』(C) Siggul / Visual Arts Masters 1404yagp_gala07.jpg 『オネーギン』(C) Siggul / Visual Arts Masters

『白鳥の湖』より白鳥と王子のパ・ド・ドゥはミュンヘン・バレエのルシア・ラカッラとマーロン・ディノが踊った。13年前にサンフランシスコでルシア・ラカッラを初めて見たが、あの時の感動は今でも忘れられない。今回、彼女を見ることを楽しみにしていた。
細く繊細な身体、しなやかな羽の動きをする腕、美しくしなる足、会場にいたコンクール参加者たちは誰もが彼女のように白鳥を踊ってみたいと思ったのではないか。一瞬とも隙が無く、1秒でも人間に戻る瞬間がなく、切なく、守りたくなる美しい白鳥のオデット姫の踊りに会場は静まり返って見入った。踊りが終わると静けさとは反対に拍手と歓声が沸きあがり、カーテンコールは何度も行われた。

1404yagp_gala01.jpg 『白鳥の湖』(C) Siggul / Visual Arts Masters 1404yagp_gala06.jpg 『白鳥の湖』(C) Siggul / Visual Arts Masters

最後はベルリン・バレエ団よりヤナ・サレンコとフリーランスのジョセフ・ガッティの『ドン・キホーテ』のパ・ド・ドゥ。ヤナはエレガントで大人の魅力のあるキトリ。ジョセフは明るくエネルギッシュなバジル。ヤナはパ・ド・ドゥのアダジオでアティチュード・バランスをポワントで立ったまま十秒間ほど見せ、ヴァリエーションでも特にジャンプの着地、高く上げた足を下ろすとき、回転からの降り方が丁寧でとても美しく、これがプロの見せ方だと感心した。更にコーダのフェッテ32回転の連続では前半に2回転を混ぜ、後半からダブルの連続というコントロールの強さを見せ、ジョセフも負けずとヴァリエーションでは軽やかに大きなジャンプや回転技を決め、コーダのアラセゴンドターンでは少しでも気を緩めると吹き飛とんでしまいそうなほど高速回転に4回転を混ぜ、会場を大きく沸かせた。