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針山 愛美 
[2015.11.11]

マラーホフが主宰し、キューバで開催された素晴らしいダンス・コンクールをレポートします

2015年9月24日から10月4日にかけて、カルロス・アコスタやホセ・カレーニョなど優れたダンサーを輩出していることで知られるキューバで、第2回「グランプリ ウラジーミル・マラーホフ」が開催されました。このコンクールは、首都ハバナに続くキューバの第2の都市オルギンで昨年の9月に第1回が開催され、今年はその2回目。日本ではあまり知られていないかも知れませんが、取材することができましたので、その一端をご報告しましょう。

2015GrandPrix-VM05.jpg 表彰式
photo/Emi Hariyama(すべて)

「グランプリ ウラジーミル・マラーホフ」は、マラーホフ自身とダンスのマネージメントを手掛けるポール・シークエストが、キューバの政府の許可のもとにオーガナイズしています。「振付家」「ダンサー」「カンパニー」の3部門に分けて審査されます。今回は105人のダンサーが12のカンパニーから出場し、カンパニーは5団体が出場しました。

9月24日の午前中からほぼ毎日夕方まで予選が行われ、25日には開会式が行われました。26日から10月3日にかけては毎晩夜の9時からパフォーマンスが行われ、予選を通過した決勝出場者が踊りました。
期間中はテレビやラジオ、新聞社などがキューバの全地域から来て取材し、全国放送でもキューバ唯一のダンス・コンクールとして大々的に取り上げられました。
ダンサーたちには、期間中の滞在費と交通費が支給され、ワークショップも無償で受けることができます。マラーホフも朝9時から2時間にわたりマスター・クラスを行い、連日たくさんのダンサーがクラスを受けました。クラシック・バレエの他には、インプロビゼーションや、コンテンポラリー・ダンスのマスター・クラスも行われました。全国から集まったダンサーもお互いを励まし合って、素晴らしい雰囲気の中で日々をすごし、参加したダンサーにとってとても良い機会だったと思います。
このコンクールには、分野にこだわりはなく特別の決まりもありませんでしたが、クラッシック・バレエで出場する人は1人もいませんでした。出場者全員がそれぞれ異なったアイデアのもとに、世界初演作品を踊り、その一つ一つが忘れられないインパクトのある振付でした。ダンサーたちは、人生をかけてコンクールのために作品を作り、リハーサルし、身体と精神と感情の全てを出し切って踊っていて、その様子が私にも直接伝わってきました。

2015GrandPrix-VM03.jpg 「グランプリマラーホフカンパニー賞」 Medula

Grand Prix VM for Companies「グランプリ マラーホフ カンパニー賞」を受賞したカンパニー、Medulaのディレクターであり振付家でもあるYoel Suarezは、特に素晴らしい才能を見せてくれました。彼は昨年は「振付家賞」を受賞し、今回もたくさんの作品を発表しましたが、当初から注目を集めていました。この「グランプリ カンパニー賞」を受賞した作品のテーマは〝癌、ウィルスとの戦い” という重いものでしたが、目を離すことのできない緊迫した作品で、観客は熱気と興奮に包まれました。キューバのダンサーの優れた身体能力を見せつける作品でもありました。
また、「グランプリ ウラジーミル・マラーホフ賞」を受賞したカップル「Yamilka Delsalles & Rafael Doymeadios 」(Codanza)もとても魅力的でした。特に黒人であるYamilkaは、動き一つ一つが浮き出るようなメリハリのある、そして余韻が残る素晴らしい踊りで、感情表現にも優れていました。2人が所属するカンパニーCodanzaは、主催地であるオルギン地元のカンパニーです。振付はMedulaのディレクターでもあるYoel Suarez。キューバの歴史をテーマとした作品で、コンテンポラリー・ダンスからサンバも取り入れた見事な動きで魅了し、観客の人気をさらっていました。
もう1人「グランプリ ウラジーミル・マラーホフ賞」を受賞したInés Preval (Medula)は、ダイナミックな動きの中にも繊細さをも感じさせ、まさに溌剌としたキューバの女性と言う印象でした。どこにいても彼女が光って見える舞台にオーラを発するダンサーです。彼女は、グランプリ ウラジーミル・マラーホフ作品賞を受賞した舞台の主役も踊りました。
この様に胸がわくわくする気持ちになって舞台を見たのは本当に久しぶりで、ダンサーたちから溢れ出る感情が胸にしっかり伝わってきて、とても感動しました。
キューバは、未だ馬がタクシー代わりになっていたり、道端で肉や野菜が売っていたりしていましたが、人間のありのままの姿の素晴らしさを気付かせてくれ、心がとても温かくなりました。私が、90年代始めにモスクワのボリショイ・バレエ学校に留学した時にも、こうした感じを味わったことを思い出しました。
2016年も9月の末から10月にかけて、このコンクールは開催される予定ですが、出場者はキューバの国籍を持っているダンサーに限られています。しかし、機会があればぜひまた訪れて取材したいと思いました。

2015GrandPrix-VM01.jpg 「グランプリマラーホフ賞」
Inés Preval (Medula)
2015GrandPrix-VM02.jpg 「グランプリマラーホフ賞」
Yamilka Delsalles and Rafael Doymeadios (Codanza)
2015GrandPrix-VM06.jpg マスタークラス 2015GrandPrix-VM08.jpg 「ポール・シークエスト賞」
Lowell Ellio fro Alvin Ailey (Danza Fragmentada Cuba)
2015GrandPrix-VM04.jpg 表彰式のあとで 2015GrandPrix-VM07.jpg オルギンで

受賞者(カッコ内は所属団体名)
[Grand Prix Vladimir Malakhov グランプリ ウラジーミル・マラーホフ賞]
Yamilka Delsalles & Rafael Doymeadios (Codanza)
Inés Preval (Medula)

[Grand Prix VM for Companies グランプリ ウラジーミル・マラーホフ カンパニー賞]
(Medula)

[Paul Seaquist Prize ポール・シークエスト賞]
Jennifer Ulloa ジョフリー・バレエ研修(Dominican Republic)
Lowell Ellioアルヴィン・エイリー・ダンス・シアター研修 (Danza Fragmentada Cuba)

[Choreography Prize 振付家賞]
Liliam Padrón (Danza Espiral)
Ernesto Alejo (Danza del Alma)

[Audience Prize 観客賞]
Yamilka Delsalles & Rafael Doymeadios

[Special prize 特別賞]
Abrazo Perdurable (Ballet Endedanz)
Titulo Grotesco (Isa Danza)
Ultimo momento (Elio Oreste and Fernando Benet)