藤野 暢央 Text by Nobuo Fujino

【第16回】回転のまとめ 〜体を回す&進む回転〜

前回は「しっかり立つ」という感覚のお話をしましたが、やはり「立つ」だけでは回れない。
最終回となる今回は「回転力のイメージ」と、加えてシェネやピケなどの「回りながら進んでいく」テクニックに触れてみましょう。

「胴体を回す」

腕や脚をどのように振り回そうと、やはり胴体(肋骨と骨盤)が整った流れで「回る意志」を持たなければ、シングルすら回ることは難しい、というピルエットです。
「回転のススメ・初回」でご紹介した「スカートを巻き付ける」感覚を元に、別の分かりやすいイメージでお話します。

「着物の帯を巻き取る」

脇下からお尻まで、バスタオルを巻く位置で、多数のゴム帯を巻いているとします。胴体だけミイラの包帯の状態ですね。それらの帯は部屋の壁に繋いで、プリエで帯の張りをグッと感じたら、回りながら巻き尺のように巻き取っていきます。最初から左右両側を一気に感じるのは難しいので、一つの帯を巻き取るイメージから練習しましょう。
凧糸を巻き取っていくイメージも良いと思います。

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「体の中心を、側で回す」

ピルエットは中心軸に真っ直ぐ立って、芯から回らないといけないのですが、「中心を回す存在」が必要になります。単純に考えると腕や脚を使うと思われますが、腕や脚を振り回すと、中心軸ではなく「体を振り回す」という流れを作ってしまい、ものすごく上手に力を揃えないと、ポジション自体が崩れてしまいます。
肋骨の片側に、水のたっぷり入った壷が入っているとイメージします。これも最終的には両側2つですが、慣れるまで「片方ひとつ」で練習しましょう。
肋骨のど真ん中に中心線。そのすぐ側の壷の重さを意識して、水をこぼさないように、中心軸の周りを回す方向に運んでみましょう。左右交代で意識して「進む方」と「引く方」両方練習して、最後には同時に両方意識できるように目指しましょう。
水の安定感がとても大事。プリエを何度も「せーの」と踏んで、水をバシャバシャさせないように。深いプリエを一度踏んで、水が静かに、平らになるのを感じてから立ちましょう。

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「線上のターン」

ピケターンやシェネなどの「斜めに進むターン」のお話です。正直なところ、途中から「カーブして曲がっていく人」や「進まなくなってその場でキリキリ舞いになる人」の多さに驚かされます。とにかく頑張ってグルグル回る、というのが実は一番危なっかしいので、しっかりとした考えを持って練習しましょう。

先述した「帯を巻き取る」と「壷を運ぶ」のイメージを使います。自分が進んで行くラインに直線を引いて、その真っ直ぐ先の壁に長いゴムを繋ぎます。それを脇下のバスタオルを巻くラインを主に、巻き取っていくように進みます。あくまで脇下からの「胴体で巻く」。肩や腕の力で巻き取ると体は振り回されます。右回転時、シェネやピケアンデダンの時は壷は「左半身」が良いでしょう。壷の水をこぼさず、荒立てずに、しかし強く運んでいきましょう。

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「いなばの白うさぎ」

白うさぎがワニを並べて川を渡るこのお話。ご存じですか?先ほどの「進むライン」の上に、均等にワニの頭を並べ、それをポアントの先で踏みつけながら進む「等間隔に進む感覚」を養います。ワニだと硬そうで、怖くて足が引けそうな人もいるかもしれないので、前回の「カブ」で考えてみましょう。柔らかい土に半分埋まったカブを、更に土深くに押し込むように立ちます。

硬く平らな床の上に「強く立ち、自分を回す」という感覚は、体を固め、自分を遠心力で吹き飛ばす力を生み出します。逆に柔らかい土に「足を深く押し込み、カブを回す」イメージがしなやかな引き上げを生み出し、回りながら軸が整っていく感じになります。

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ピルエットのような「回転もの」は、明らかに「テクニック」であって、そこだけ踊りのなかで「浮き彫り」になってしまい、成功したか失敗したかで判断されてしまうところがあります。クラシックバレエの場合、振りとして入っているから、苦手な人でもやらなくてはならない。そして失敗するところをお客様にご披露する・・・。僕はそこが不思議でならないのですが、今回ご紹介したような「イメージ」によってピルエットだって「時に強くも、優しくもなれる」。そんな「踊りの表現」として使えるようにしましょう。


>>> エクササイズ[ 16 ]「ルルヴェアップ」

(イラスト:あゆお / 写真:藤野暢央)

藤野 暢央(ふじの のぶお)

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12歳でバレエを始め、17歳でオーストラリア・バレエ学校に入学。
当時の監督スティーブン=ジェフリーズにスカウトされて、香港バレエ団に入団。早期に数々の主役に抜擢され、異例の早さでプリンシパルに昇格する。
オーストラリア・バレエ団に移籍し、シニアソリストとして活躍する。
10年以上のプロ活動の中、右すねに疲労骨折を患い手術。復帰して数年後に左すねにも疲労骨折が発覚し手術。骨折部は完治するも、激しい痛みと戦い続けた。二度目のリハビリ中にピラティスに出会い、根本的な問題を改善するには、体の作り、使い方を変えなくてはならないと自覚する。
現在は痛みを完全に克服し、現役のダンサーとして活動中。またバレエ・ピラティスの講師として、ダンサーの体作りの豆知識を、自身の経験を元に日々更新し続けている。