藤野 暢央 Text by Nobuo Fujino

【第14回】回転のススメ~ピルエット~

バレエのテクニックでみんなが「一番練習するもの」と言えば、やはり「ピルエット」ではないでしょうか?何回も何回も練習することにより、上手にできたときの感覚を養い、確実性を高める。という方向で上達していく人がほとんどだと思います。しかし「感覚」というものは「記憶」と似たようなもので、時と共に曖昧に変化していきます。昨日は回れたのに今日は全然回れない、ということもよくあります。
また、ピルエットは個人的な感覚で精錬されていくもので、Aさんが「こうすれば回れる」と言ってもBさんには全く適応しない、ということも多々あります。

僕は天然グルグルダンサーではないので、何とか3、4回きれいに回ろうというタイプです。そんな僕が考えている「回転の方程式」をいくつか紹介しますので、適応するものがあれば、是非試してみてください。

「まっすぐな軸」

芯が真っ直ぐじゃないコマを回すのは至難の技。やはり軸はできる限り地面に対して垂直に。そしてその垂直線が真っ直ぐであるかを知るには「床と水平のライン」を知る必要があります。意識すべき水平ラインは3つ。肩、腹、お尻です。これらを円盤状に考えて、3つをお互いに、そして床と水平にする感覚を掴むと、軸を真っ直ぐにする術が分かります。

肩の水平線=「肩」を腕の生え口で考えると、どうしても腕っぷしに力が入るので、首の付け根で考えると良いでしょう。昔の西欧の貴族が巻いていたような「襟巻き」をイメージして、横に張ってみましょう。

腹の水平線=こちらも「おへそ」で意識すると、表の腹筋が固まるだけなので、肋骨の下端、胃袋のラインで考えましょう。肋骨の下端が「大皿」で、胃袋はそれに乗せたメロンなどでイメージしてみましょう。大皿は大きく考えてみてください。

お尻の水平線=「アルデンテお尻」をおさらいして、股関節を張る意識を高めてください。低めに腰に着けた「チュチュ」をイメージして、跳ね上がりを作らず、真っ直ぐ張るように考えてみましょう。

これらの円盤を横向きに長く張り、3つを同じスピードで回すと意識してみましょう。

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「遠心力をどうする?」

バレエを知らない人に「クルッと回って」というと、ごく自然に両手足を下げた状態で回ります。しかしピルエットは基本、腕は1番、脚はパッセと、ある意味「邪魔になる枝」を作って回ります。腕は前に、パッセは横に飛び出した突起物なので、これらを振り回すと軸は持っていかれてしまいます。
そこで、回転に掛ける「遠心力」を考えてみましょう。

イラストで確認してみましょう。普通に回転の勢いを付けるとなると渦は広がる方向へ。ムチを持っていれば「振り回す」方へと向かいます。腕を振り回すと背中が、脚を振り回すと腹筋が耐えるのが大変になり、少しでも力の入れ具合が乱れると軸が崩れてしまいます。
そこで渦は広げるより「寄せ集める」方を考えましょう。
分厚くて重たいスカートを履いて回るのは大変だと思いますが、その時の頑張りを「スカートを振り回す」ではなく「スカートを自分に巻き寄せる」感覚で回ってみましょう。

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グランフェッテの場合、どんどん風を起こすより、風を集める感じに脚を回します。この渦を「出す」より「集める」の方向性だと、軸やインナーマッスルはより強く集まり、上昇気流に乗せ易くなります。

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>>> エクササイズ[ 14 ]「Side Lift(サイドリフト)」

(イラスト:あゆお / 写真:藤野暢央)

藤野 暢央(ふじの のぶお)

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12歳でバレエを始め、17歳でオーストラリア・バレエ学校に入学。
当時の監督スティーブン=ジェフリーズにスカウトされて、香港バレエ団に入団。早期に数々の主役に抜擢され、異例の早さでプリンシパルに昇格する。
オーストラリア・バレエ団に移籍し、シニアソリストとして活躍する。
10年以上のプロ活動の中、右すねに疲労骨折を患い手術。復帰して数年後に左すねにも疲労骨折が発覚し手術。骨折部は完治するも、激しい痛みと戦い続けた。二度目のリハビリ中にピラティスに出会い、根本的な問題を改善するには、体の作り、使い方を変えなくてはならないと自覚する。
現在は痛みを完全に克服し、現役のダンサーとして活動中。またバレエ・ピラティスの講師として、ダンサーの体作りの豆知識を、自身の経験を元に日々更新し続けている。