藤野 暢央 Text by Nobuo Fujino

【第15回】回転のススメ 続編〜しっかり立つ〜

「回転のススメ」続編となりましたが、今回ご紹介する「しっかり立つ」ということがピルエットに限らず、全ての動きに置いて重要な感覚となります。
プレパレーションから高いルルヴェに至るまでの流れをお話しましょう。

「引き上げる?引き下げる?筋肉のゴム」

「良質なプリエ(リンク)」にて、脚の筋肉のバネについてご紹介しました。
今回は筋肉を「ゴム」として、何をどう引っ張ればいいのかを考えてみましょう。

引き上げるように立つ、という感覚で上へ向かおうとすると、地面に繋いだ筋肉のゴムを自然と「下から上に引っ張り上げる」という力が入ります。筋肉ゴムが短くなろうとする力が強く、骨や関節には「曲がろう、短く固めよう」という力が加わります。
結果として「身を沈めてしまう力」を入れていることになります。
(イメージ①)

逆に「天井に繋いだゴムを引っ張り下げる」イメージで立つと、筋肉を下へと搾り、骨格としては「床を押して伸び上がろう」という力を得ます。
(イメージ②)

 
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例えばコート掛けをイメージして「地面から引っ張ったゴムを枝に掛ける」か「枝からゴムを引いて地面に繋ぐ」の違いを想像して、コート掛けの芯に掛かる力を考えてみて下さい。
このようにイメージを少し変えるだけで、体は全く違う動きを出してくるので、新しい発見を楽しみましょう!

「下げるレバーと伸びる腕脚」

スイッチをONかOFFにするかで、力の入れ方が逆転する3つのレバーを紹介します。

・脇下のあばら骨
・大転子
・膝の裏側

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どれも力を込めると、自然と上を向いてしまうものです。腕を伸ばす為の上腕三頭筋(二の腕)、脚を伸ばす為のハムストリングスが上がるのか?下がるのか?大きな影響を与えます。
脇と大転子が上がってしまうと、なんとなんと背骨は沈んでお腹がたるんでしまうのです!イラストと写真で確認して、違いを感じてみてください。どの部位も「目」が付いていると想像して、その目線が上を向いていると力み過ぎ。下を向けるようにしてみましょう。
「腕や脚は長く伸ばすように使う」というのは誰もが願っていること。これは「二の腕」と「裏もも」を伸ばすように使うことで可能になります。しっかり意識しましょう!

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「プレパレーションから立つ!」

まとめとして、4番プリエから立つまでの流れを考えましょう。しっかりプレパレーション(準備)を取ることが、安定したピルエットへと繋がります。
プリエは「地面を押して、立ち上がる」為に、しっかりと踏み込みます。床が平面な場合、両の足裏に同じ体重を掛けて、アキレス腱そのものを土に埋め込むように。
裏ももの「面」を地面に寄せる感じで、「柔らかく深いプリエ」をしてみましょう。踵がグッと締まって浮く、膝がグッと締まってプリエが硬くなる感じは要注意です!その瞬間に床を蹴って固まる力は得ても、表面的な筋肉を締めて使うので、インナー(芯)は弱くなっていき、やがて関節や腱を傷めてしまいます。

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そしてルルヴェアップへと。芯をしっかり立てるにはプリエを踏み込む必要があります。どうしても「ピッと」引っ張り上げるように立つと、プリエは浅く、硬くなって「床を押す」ことが出来なくなります。
土に半分埋まったカブの上に立っていると想像してみて、カブを更に土深くに埋め込むようにプリエをして、更に押し込むようにルルヴェアップしてみましょう。カブは片足ずつの2つ。両足を同じ力で押しましょう。内もも、裏ももは地面を押す力を得て、その上に中心軸が乗ります。

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ピルエットなどの「回転系」は、皆さんたくさん練習されると思います。
僕の経験談ですが、「肩をこうして・・・脚をこうして・・・」と色々と考えていくと、なぜかどんどん崩壊していく、ということもあります。体は意外と不器用で、あまりたくさんの感覚を同時に入れることができません。
前回の「スカートを巻き付ける」や今回の「カブを踏みつける」など、全身が一つの方向に動くようなイメージを持って試すことをお勧めします。

次回は総集編に加えてシェネなどの連続回転系をお話しましょう!


>>> エクササイズ[ 15 ]「Criss Cross(クリスクロス)」

(イラスト:あゆお / 写真:藤野暢央)

藤野 暢央(ふじの のぶお)

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12歳でバレエを始め、17歳でオーストラリア・バレエ学校に入学。
当時の監督スティーブン=ジェフリーズにスカウトされて、香港バレエ団に入団。早期に数々の主役に抜擢され、異例の早さでプリンシパルに昇格する。
オーストラリア・バレエ団に移籍し、シニアソリストとして活躍する。
10年以上のプロ活動の中、右すねに疲労骨折を患い手術。復帰して数年後に左すねにも疲労骨折が発覚し手術。骨折部は完治するも、激しい痛みと戦い続けた。二度目のリハビリ中にピラティスに出会い、根本的な問題を改善するには、体の作り、使い方を変えなくてはならないと自覚する。
現在は痛みを完全に克服し、現役のダンサーとして活動中。またバレエ・ピラティスの講師として、ダンサーの体作りの豆知識を、自身の経験を元に日々更新し続けている。