解説:文葉

盆 

(日/ぼん、英訳/revolving stage)

 舞台機構「回り舞台」の通称。舞台床中央を丸く切り抜いて回転させることで、素早い舞台転換が可能になり、舞台効果の面でも、印象的なシーンの演出に役立てることができます。

  クラシック・バレエやダンスの公演では、あまり舞台が回る演出は見かけないかもしれません。それもそのはず、江戸時代の日本、歌舞伎の劇場で生まれた仕掛けなのです。今となっては海外の名だたるオペラハウスに輸出されていますが、ヨーロッパで初めて舞台が回ったのは1896年ミュンヘンの王立劇場でのことでした。チャイコフスキーの三大バレエ作品ができた時代にニアミス!  バレエとは縁がなかったんですね。それに縦横無尽にダンサーが入り乱れている舞台が回ったら危ないですし、広い舞台空間を必要とするから、舞台を分割して使うなんてありえない…か。

  日本の発案者は、浄瑠璃・歌舞伎狂言作家の並木正三と言われ、1758年、大坂角の芝居という芝居小屋に作ったのが始まり。彼が『三十石よふね始(さんじっこくよふねのはじまり)』の仇討ちの場の演出で、「淀川堤防」と「城内」の二箇所で繰り広げられる仇討ち場面を同時に見せるようと、舞台を前後2つに割って盆を回して素早く舞台を転換してみせたところ、もう大評判。年末の12月に打った芝居が翌年3月までロングランされたのだとか。今でも盆が回るとわくわくするので、江戸時代の人はそりゃ楽しかったでしょうねぇ。ボタン一つで回る今と違って、人力で回していたんです。舞台の奈落で、縁の下の力持ちとはまさにこのこと。