解説:文葉

タニマチ

 現在ではあまり聞くことのない言葉かもしれません。バレエもタニマチ文化で育った芸術です。もともと相撲用語で力士の後援者・ひいき筋を指したものでしたが、転じて、大相撲以外の分野の文化活動・表現者の後援者・ひいき筋についても使われるようになりました。実際の土地名に由来し、大阪市中央区の谷町。この土地に、相撲が好きで、力士の金銭や食事の面倒を見たり無料で治療をしたりしていた医者がいたことから、ひいき筋に散財し、彼らの活動を援助する人をタニマチと呼ぶようになったそう。タニマチになったことがないので想像の域を超えませんが、パトロンはマイナスイメージではないと私は思います。「仕事のパートナー」、違いますかね。パトロネージュの方法にも種類があるでしょう。同じパトロンでも、ひいき筋との密接な関係をステータスに感じる、もしくは“かこう”といった言葉を連想させる関係を求めるようでは、真の文化を育てる力になりえるのか…。現実はちがう? でも、芸の道を行く人をアクセサリー感覚でとらえるなんて変でしょう。芸を愛すればこその援助じゃないですか。王室・帝室の庇護、ディアギレフのプロデュースによる「春の祭典」、アメリカで新しいバレエの流れを作ったバランシンの生涯の友、財閥リンカーン・カースティン。バレエの歴史だけでなく、そして、芸術・スポーツ・学問などすべての文化・精神活動を支えるのは、財力だけでなく「心」も豊かな人々なのではないでしょうか。よく来日するダンサーからのコメントで、日本人はバレエを愛してくれる人が多くて踊りやすいといった趣旨のものを目にします。鑑賞者は甘やかすわけでもなく理解を示して、見返りを求めず、演者に刺激を与える。活性化させる一番の原動力は、こういったタニマチ精神なんでしょうね。