解説:文葉

ロビー/フォワイエ(英/lobby、仏/foyer)

劇場の活気、にぎやかさ、華やいだ空気は気持ちの良いものです。

ロビーとフォワイエ、どちらも、劇場入り口から客席に入るまでの空間で、呼び名が違うだけかと思っていました。が、語源を見てみると、ロビーはラテン語の「柱廊、玄関」、フォワイエは家庭、古くは暖炉という意味でもつかわれているとか…。どちらも開演前や幕間に一息ついたり、親しい人と談笑したり、新たな縁に出会ったりと交流の場、公共の場所に変わりありませんが、ニュアンスが違うようです。

ロビーは玄関と続く人だまりで廊下と近い空間なのに対し、フォワイエは暖炉を中心にして人が集まる空間であって、建物の入り口との関係性が感じられません。どちらも多くの人々に開放されたパブリックスペースですが、ロビーは移動する人もいれば待ち合わせをしている人、ソファーで休む人など過ごし方が多種さまざまで次に何か別な行動が待っている印象で、フォワイエはくつろぐためだとか、一つの目的を持って能動的に集まるイメージ。
パリ・オペラ座ガルニエ宮には、ヴェルサイユ宮殿の鏡の間さながらの大広間「グラン・フォワイエ」がミーティングポイントとして設計され、その他バックステージには、今はエトワールが利用できる開演直前の練習場で、19世紀はパトロンとなる富裕層の定期会員のみが出入りを許されバレリーナたちを値踏みする場だったという「フォワイエ・ドゥ・ラ・ダンス」という空間があります。

日本建築にも控えの間とか前室といった、来訪者を最初におもてなしする場所があります。でも劇場、江戸時代からの芝居小屋の歴史を振り返ってみると、文化が異なれば建物構造も違うものですね。ロビーやフォワイエの機能は建物屋内よりも小屋を中心とした芝居街全体が担っていたのではないでしょうか。